2007年2月6日(火)「しんぶん赤旗」

ミサイル防衛計画

米、配備交渉を開始

両国とも反対過半数

チェコとポーランド


 【ベルリン=中村美弥子】チェコとポーランド両政府は先月下旬、米国のミサイル防衛(MD)システムの配備をめぐり、米国防総省と正式交渉をそれぞれ開始しました。米国はMD配備はイランの弾道ミサイルを迎撃するためだと説明していますが、両国内では反対の声が強く、ロシアからも反発を招いています。


 米国は、地上レーダー施設をチェコに、迎撃ミサイル発射基地をポーランドに建設する計画です。米国防総省によると、二〇一一―一二年の導入を目指しています。両国政府とは今春に正式合意したいとしています。

 MDは、ブッシュ米政権が同盟国を巻き込んで推進している計画です。敵の弾道ミサイルを迎撃し無力化することで、先制攻撃を可能にするのが狙いです。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するチェコとポーランドに先制攻撃戦略への協力を迫るものです。

 チェコのトポラーネク首相は先月二十日、正式交渉を求める米国の要請に応じたと発表。その二日後、ポーランドのカチンスキ首相も米国との正式交渉開始を明らかにしました。

 発表は、自国がテロの標的になるのではないかとの不安を両国国民の中に広げています。現地からの報道によると、チェコの世論調査では回答者の65%が計画に反対、ポーランドでは反対が54%と半数を超えました。

 チェコの野党二党は、米国のレーダー施設建設に反対する立場を明確にしています。

 最大野党の社会民主党は党員調査を行い、党員の70%が反対し、85%が国民投票を求めているとする結果を公表しました。チェコ・モラビア共産党は、この問題で国民投票の実施を求めています。

 トポラーネク首相率いる連立政権の下院での議席数は、野党と同じ百議席。野党から造反者が出ない限り、議会の承認は得られません。同首相は、米国のレーダー施設建設はチェコの安全保障のためだと主張、将来はNATOの施設になると説明しています。

 米国は、経済支援の強化を見返りにMDシステムへの協力を両国に迫っています。さらに、両国国民の米国へのビザ(査証)なし渡航を認めることを検討すると述べ、懐疑的な両国世論の支持を得ようとしています。

 こうした動きに対し、近隣の大国ロシアは強く反発しています。プーチン大統領は一日、年頭恒例の記者会見で、イランは長距離ミサイルを保有しておらず、米国を攻撃できるはずがないと述べ、米国の計画はロシアの安全を脅かすものだと批判。国家の安全を確保するために、断固として対応していくとの姿勢を示しました。

 ロシアのラブロフ外相は三日、ワシントンで米政府から説明を受けましたが、「MDが真の脅威に対する適切な対処法であるとは納得できなかった」と発言。ドイツ週刊誌『シュピーゲル』(二月六日号)のインタビューでも、「新たな軍拡競争を引き起こす恐れがある」と懸念を表明しています。


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