2007年2月5日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

過疎の集落 振興へ


 日本の中山間地域はふるさとの原風景です。そのふるさとの集落維持が困難になっています。65歳以上の高齢者が半数を超す限界集落が増えるなか、過疎から地域の振興をめざし頑張る姿を紹介します。


“村おこし”を市が支援

「水源の里条例」を制定

京都
綾部市

地図

 綾部市は京都府のほぼ中央に位置し、市街地を清流由良川が流れる山紫水明の町です。市域は、東西に三十二キロ、南北に二十五キロで、面積は三百四十七・一一平方キロと広大ですが、77%が山林です。人口は一九五〇年(昭和二十五年)の昭和合併時の五万四千人をピークに、三万七千人と減少が続いています。

 綾部市は、地域の振興と活性化をめざす「水源の里条例」を昨年の十二月議会で制定しました。

ほかの地域への波及、望まれ

 市役所から二十五キロ以上離れ、六十五歳以上の高齢化率が60%以上、世帯数が二十戸未満の水源地域に位置する五集落を対象に、U・Iターン者(地方出身者が都会から戻る。あるいは都会出身者が地方に移る)の定住対策、都市との交流、特産品の開発などへの支援を行います。

 本会議では、「よい制度、今後への期待が大きい。できることから実施する。他の地域にもノウハウが波及できるように」と全会一致で可決されました。

 綾部市役所から三十三キロ、福井県の境まで広がる奥上林地域では、九三年―二〇〇三年の十年間で人口は19ポイント減少し七百四十七人。高齢比率は約20ポイント増えて、59・3%となっています。また、中上林地域でも、人口は16ポイント減少し、高齢化率は16ポイント高くなり47・2%で限界集落となろうとしています。

 このような実態や、地元の人たちの要望を受けた日本共産党議員団(四人、定数十八)は、〇三年、〇四年の三月議会代表質問で、市役所から遠隔地では「人口の減少と高齢化の進行によって、共同作業や隣近所の助け合いなど集落機能の弱体化が現れている」と指摘し、福祉・医療・交通・産業など総合的な「村おこし・町おこし計画の策定と市役所内での窓口の設置」を求めました。

 〇四年、綾部市は企画部に、五つの集落(市茅野、大唐内、栃、古屋、市志)を含む奥上林・中上林地域を対象に地域振興担当参事の配置を行いました。翌年には、信用金庫跡の建物に、拠点施設として上林いきいきセンターを開設しました。

住民が共同し特産品づくりも

 地域の自治会や関係団体が加わる地域振興協議会が組織され、取り組みがはじまりました。

 水源の里条例が制定されたことで、新年度の四月施行に向けて、定住を支援するための住宅や生活支援の検討が行われ、水源の里ならではの「栃もち」「山菜」など地域の特産品づくりが住民のみなさんとの共同ですすめられようとしています。(堀口達也市議)

表

地域守る多様な活動

産直、学校給食や営農も

岩手
遠野市

地図

 「民話の里」として知られる岩手県遠野市。人口減と高齢化の農村で住民から頼りにされているのが日本共産党員の区長と地方議員です。

クマの大量出没 高齢化も背景に

 遠野市では昨年、クマの大量出没がありました。市がまとめたクマ出没件数は百四十四件。前年(二〇〇五年)の約三倍で、農作物食害や人身事故のほか、クマの交通事故もありました。餌のブナの実凶作が要因とされますが、森林の荒廃、集落の過疎と高齢化が出没の背景にあります。

 遠野市は昨年十月、隣の宮守村と合併。人口は三万一千九百人余になりましたが、八年後に二万八千人台に落ち込みそう。現在六十五歳以上の高齢化率は32・1%。一九七五年は三万八千百四十六人(高齢化率10・3%)でしたから、三倍以上の高齢化です。

 五十五歳以上の人口が半数を超す準限界集落も増えています。小友地区もその一つ。同地区で和牛飼育をする小松大成さん(52)は、共産党市議です。

 農業収入、農外収入の大幅減少で生活相談が急増し、「生活費がないとか、税金が払えないという相談も多い。輸入農産物増加で国内価格が下落し、耕作放棄地が増えています」と心配します。

共産党市議や党員区長に期待

 そんな中で、農家の励みとなっているのが小友町農産物直売加工施設「産直ともちゃん」。産直のモットーは「食の安全・安心・新鮮」です。販売コーナーには野菜や雑穀、天然酵母みそなどが。小松市議も組合員で、レジにも立ちます。

 直売所は高齢者の交流の場になっています。学校給食との連携もすすみ、地元食材が使われるようになったのが組合員の励みです。副組合長の佐々木義弘さん(54)は「高齢者の組合員は、自分がつくった野菜や加工品が消費者に待たれているのを喜びにしています。産直は人と地域を元気にしました」といいます。

 高齢者の生産と販売活動を、遠野農業活性化本部の菊池孝二本部長(57)は「中山間地でお年寄りは大事な人的資源です。農業活性化に力を発揮してほしい」と期待します。

 遠野市には共産党員の区長が二人います。菊池瑛さん(65)は綾織七区の区長。集落住民の生活相談に駆けまわる一方、九割の農家を農政から除外する品目横断対策に対応し、集落と農業を守るため集落営農組合代表として苦闘しています。

 「今の農業は限界状態だが、どんなことがあっても農業と農村は守りたい」と快活に語る菊池さん。住民からは「地域のため親身になって動いてくれるのがうれしい。菊池さんの話を聞いていると涙がでる」という声が聞かれました。(宮本敦志)


 限界集落 六十五歳以上の高齢者が半数を超し、独り暮らしが増え、社会的な共同生活が難しくなっている集落。里山、棚田、山林など自然が豊かな中山間地域です。高齢化と過疎化がすすみ、このまま推移すれば二千二百集落が消滅する―と国の調査(一九九九年)は予測しています。日本は二酸化炭素など温室効果ガスの削減義務を負っています。地球温暖化対策からも中山間地の森林の果たす役割が期待されています。


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