
2007年2月4日(日)「しんぶん赤旗」
主張
アメリカ経済
危険水域に入る「双子の赤字」
一月三十一日に発表されたアメリカの昨年十―十二月期の国内総生産(GDP)速報で、実質経済成長率が3・5%となりました。先月中旬のFRB(米連邦準備制度理事会)の報告でも、「米経済は緩やかなペースで拡大している」として、景気後退の判断をしりぞけ、金利引き下げを見送りました。
ブッシュ米大統領は一般教書のなかで、「米経済は順調だ。雇用は四十一カ月連続で拡大し、失業率、インフレ率は低く、賃金は上昇している」とのべています。
貧困と格差、ドル不安
たしかに統計数値だけ見ると、失業率は4・5%と五年ぶりの低い水準で、ニューヨーク株式市場も高値を維持しています。アメリカ経済は二〇〇一年十二月いらい長期にわたって景気上昇が続いていますが、ブッシュ政権のもとでさまざまな矛盾が累積し、先行きには危険な兆候がしだいに強まっています。
国内経済では、景気上昇のなかで、貧困と格差がひきつづき拡大しています。
ブッシュ政権は、二〇〇一年一月の発足いらい、「新自由主義成長政策」の立場から大企業減税や個人所得税の減税を繰り返してきました。しかし、貧困ライン以下の人口は二〇〇三年の三千五百九十万人から〇五年には三千七百万人へと大幅に増えています。失業率は統計的には減ったようにみえますが、ワーキングプアが増え、二〇〇五年の家計貯蓄率は、戦後初めてマイナス〇・四%となっています。
最大の問題は、財政赤字と経常収支の「双子の赤字」が拡大し、ドル急落への危険水域に入りつつあることです。
財政赤字は、〇六会計年度(〇五年十月―〇六年九月)には、前年度比22%減の約二千四百八十億ドルにひとまず改善しましたが、これは景気回復による税収増で歳入が11・8%も急伸したためです。ブッシュ政権は、「今後五年間で財政赤字を解消する」などとしていますが、巨額な規模のイラク戦費の膨張にストップをかけない限り、財政再建の道筋はまったく見えません。
経常収支は、〇六年七―九月期(季節調整済み)には、二千二百五十五億ドルの赤字となり、GDP比で6・8%と最悪の水準にたっしています。一―九月期の累計では約六千五百五十八億ドルの赤字で、二〇〇六年の年間赤字は史上最大規模に膨らむ見通しです。
ブッシュ政権によるイラク戦争の継続・二万人の増派政策は、アメリカ経済のゆがみと「双子の赤字」をとめどなく拡大し、ドル急落への内外の懸念をいちだんと広げています。イラクに米軍を増派する「新戦略」をやめ、イラク撤兵を直ちに実現することは、アメリカにとって経済政策上も喫緊の課題です。
対米追随路線の転換を
安倍内閣は、アメリカ国内でさえ強い批判をあびているブッシュ政権のイラク戦争をいまだに支持し、経済政策でも対米追随路線の態度をとりつづけています。
来年度予算案には、米軍の世界戦略の再編と日米軍事同盟強化のために、米軍基地再編の財政負担を盛り込んでいますが、これは絶対に認められません。
また、アメリカの国際収支赤字をドル高による資本流入で穴埋めするために、日米金利差を維持する日米協調の金融政策をとり続けています。これは、日本経済にとって大きなゆがみをもたらすものであり、直ちに転換すべきです。