2007年2月4日(日)「しんぶん赤旗」

築地移転先は汚染地域

石原都知事それでも推進

発がん物質 基準1500倍も


 これで食の安全が守れるのか―。石原慎太郎東京都知事の誕生(一九九九年)とともに加速した築地市場(中央区)の移転計画。移転先の東京ガス豊洲工場跡地(江東区)の土壌から、環境基準をはるかに超える有毒物質・発がん物質が検出されているのに計画を推し進める都のやり方に、魚屋や市場関係者から批判の声が噴出しています。(遠藤寿人)

 移転先の「豊洲」は三方を東京湾に囲まれた埋め立て地です。東京ガスは石炭を原料に三十年間、都市ガスを製造、土壌と地下水が汚染されました。同社が環境基準(土壌溶出量)をはるかに超える有害物質について発表したのは二〇〇一年でした。

 ベンゼン千五百倍、シアン四百九十倍、ヒ素四十九倍、水銀二十四倍、六価クロム十四倍、鉛九倍、カドミウム五倍―。

 築地市場(二十三ヘクタール、東京ドームで五個分)は「魚河岸」として七十年以上、都民の台所を賄ってきました。都は築地市場の跡地に二〇一六年に招致しようとしているオリンピックの施設「メディアセンター」を建設すると発表しました。

 「オリンピックをすすめる石原さんのために、世界の『築地』ブランドが土壌汚染にまみれてはたまらんわ」と五十年らいの仲卸業者は声を振り絞ります。

 「生鮮食料品を扱っているのだから『毒物』があると聞いたときに豊洲への移転をあきらめるのが常識だ。二十年、三十年後、人体にどんな影響が出るか不安になるのが普通の感覚だろう。これで安心な魚を供給できるか」

 「農ある産業のある街づくり大実行委員会」の大澤和子さん(79)=練馬区=は「一番安全じゃなきゃいけない生鮮食料品の市場を汚染地域に移転するのは無責任だ。築地市場は『都民の台所』として活気があり、慣れ親しんできた。仲卸の人たちが反対しているのに問答無用で移転させるやり方には納得いかない」と話します。

高まる反対 業者デモも

「食の安全」 都は無責任

東京・築地市場移転先から毒物

 東京・新交通臨海線ゆりかもめ「市場前」駅を降りると、水たまりが点在する広大なさら地が広がり、土壌の入れ替え工事が進んでいます。

 東京ガスが都に提出した対策は、土壌の入れ替えや盛り土を施すことで、地盤面から深さ四・五メートルまでは環境基準の十倍を超える有害物質を存在しないようにする―というものです。

 果たしてこれで食の安全は守れるか…。

 日本共産党の村松みえ子都議は一月二十五日の都議会都市整備委員会で、同社の調査は、土壌汚染対策法で定める十メートル間隔より粗い三十メートル間隔にとどまっていると批判。直下型地震が起きた場合、液状化や側方流動が起きる危険性があるとのべ、「食の安全を求める声が高まっているなかで、汚染された豊洲へ移転することは都民の期待を裏切る」と追及しました。

 土壌汚染をめぐっては三菱マテリアルと三菱地所が、汚染土壌の封じ込め対策を講じたものの、汚染物質が拡散した問題も起こっています。両社は、汚染の事実を隠して大阪市北区の高層マンションなどの複合施設「大阪アメニティパーク」(OAP)を販売したとして二〇〇五年三月、宅地建物取引業法違反(重要事項の不告知)で、幹部が書類送検されました。

強引な移転決定

 老朽化し手狭になった築地市場は一九八六年から「再整備」が実施され、立体駐車場の建設など約四百億円が投じられました。

 移転話が再燃した九八年、水産仲卸の最大組織である東京魚市場卸協同組合(東卸・加盟約八百社)は意向調査をしました。結果は移転反対が六割、賛成が四割でした。

 この状況が一変するのは九九年、石原知事が初当選してからです。同年九月の視察で石原知事は「都民の台所を賄うには古い、狭い、危ない」と言い放ちました。その直後から都が東京ガスと強引に交渉。〇一年一月に同社が汚染を公表すると、十二月に都は豊洲移転を正式に決定します。

 八百種類の生鮮食料品を扱い、四万人が入場する築地市場に隣接する「場外市場」も移転で打撃を受けるのは必至です。

 「移転には反対だよ」という父の代から魚屋を営む男性(36)は「ここを売ったら都の財政は潤うだろうが、収入の減るわれわれのことを考えているのか。借りている冷凍庫会社も移転するのでここで商売ができなくなる」といいます。

 移転への流れが強まるなかで昨年十月、業者ら千五百人がデモ行進し、反対を訴えました。

中央区も反対

 全国一般東京地本・東京中央市場労働組合の羽根川信委員長は「最初から移転ありきで築地の売却が目的。市場関係者の合意形成などあったものじゃない。施設使用料を高くして店舗数を減らすもくろみもある。移転できない仲卸は廃業しろと言わんばかりだ。一団体でも反対なら、移転しないとした市場長の発言の責任も含め追及していきたい」といいます。

 日本共産党中央区議団の志村孝美団長は「地元中央区や区議会の移転反対の意思を無視して強引に豊洲に移転しようとする石原都政のやり方は、区民の大きな批判を浴びている。引き続き移転計画の中止を強く求めていく」と語っています。

表

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