2007年2月3日(土)「しんぶん赤旗」

主張

中国「残留孤児」

「人間回復」を国の責任で


 中国「残留日本人孤児」への支援をめぐり、政府の決断を求める声がいっそう高まっています。

 安倍晋三首相が一月三十一日、「残留孤児」国家賠償請求訴訟の原告団・弁護団の代表と初めて面談し、これまでの対策に不十分な点があったと認め、厚生労働大臣に「新たな対応」を指示したと表明しました。各地の裁判所の判決で司法の判断は分かれています。支援が実現するかどうかは、政治の判断にかかっています。「孤児」が心から「日本に帰ってよかった」といえる施策を急いで実現することが政府の責任です。

「帰国してよかった」と

 「孤児」は、戦前から戦中にかけ、国策で中国東北部(旧満州)に移住し、一九四五年の終戦のさいに置き去りにされた人たちです。

 戦後も、「孤児」らに日本政府がとった態度はあまりにひどいものでした。中国に多数の残留日本人がいることを知りながら、帰国のための努力をなにもしなかったのです。

 五九年には三千人の孤児を含む一万三千人の残留日本人が中国に遺棄され、生存していることが明らかになっていたのに、政府は「戦時死亡宣告」をして、戸籍上この人たちを殺してしまいました。「孤児」らが「第二の棄民」と呼ぶこの行為は、安倍首相の祖父である岸信介氏が首相の内閣がおこなったものです。

 憧(あこが)れの祖国に帰った「孤児」を待ち受けたのは過酷な現実でした。日本語をほとんど理解できない状態で投げ出され、就労はきわめて困難でした。中国でそれぞれ生活を確立していた「孤児」が、日本では低賃金の不安定な仕事にしかつけませんでした。生活保護の受給は七割にのぼり、多くが七十代を迎えて老後の不安にさいなまれているのです。

 「普通の日本人として人間らしく生きる権利を」と二〇〇一年から始まった中国帰国者の国家賠償請求訴訟を機に、世論と運動は確かな前進を重ねました。「残留孤児」問題の全面解決を求める首相あての署名は百万を超えました。

 昨年十二月には神戸地裁で、政府の責任を断罪し「残留孤児」への支援が北朝鮮拉致被害者への支援より「貧弱でよかったわけがない」とした画期的な勝訴判決が出され、世論もこれを歓迎しました。全面解決への機運は与野党を超えて大きく高まりました。

 日本共産党は、国会でくりかえし「孤児」らの苦境を取り上げ、政府の責任で支援することを求めてきました。いま、▽国は責任を認め謝罪し賠償すること▽国の責任で生活保障のための新たな給付金制度を創設すること▽全面解決へ「残留孤児」原告団・弁護団と継続して定期的な話し合いをすること―などを、安倍首相に申し入れています。

 政府はこれまでの「孤児」への仕打ちを真摯(しんし)に反省し、「残留孤児」の人間回復に力を尽くすべきです。

悲劇繰り返さぬ道を

 「孤児」の苦しみの原点が、日本の誤った侵略戦争であったことを忘れるわけにはいきません。帰国者は「苦しみは私たちを最後に。戦争だけはいやです」と訴えています。

 安倍首相は、「残留孤児」への実効ある支援をすすめると同時に、次の「残留孤児」を生むことのない国づくりに責任をおわなければなりません。憲法九条を投げ捨て、日本をアメリカとともに「海外で戦争する国」につくりかえるこころみはやめるべきです。二度と悲劇をくりかえさぬ道をすすむことこそ、「孤児」の長い苦しみに報いる道です。


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