2007年2月3日(土)「しんぶん赤旗」

人間らしく たたかい 生きる シリーズ

「これで病院に行ける」

国保料を減免

大阪・生野区


 「これで医者にかかれます」。女性がほっとした表情でいいました。高い国民健康保険料に人々が悲鳴をあげています。大阪市では、保険料の減免や分割納入を求め、「みんなに保険証がゆきわたるように」と市民が運動しています。(竹田捷英)


 「とても保険料を払えません」。同市生野区の生野民主商工会の事務所に女性(43)が、相談に訪れました。

所得の2割が

 大阪市が昨年、保険料の算定方式をかえたため、女性の保険料は倍にはねあがっていました。一昨年、九万九千六百七円だったものが、約九万五千円あがり、十九万四千五百六十一円を納める必要に迫られていました。女性はパートで働き、年間所得は九十一万円です。保険料を払うと、残りの所得は七十二万円になってしまいます。

 幼い二人の子どもを抱えて十一年前に離婚。女手一つで大学一年生と高校生になるまで育ててきました。「今でさえ、やり繰りしてもぎりぎりの生活やのに、九万五千円も上がったら、やっていけません。滞納したら保険証が使えんようになると思うと、こわくて」

 応対した同会の中村正明さん(55)は、こうアドバイスしました。「大阪市国保条例の軽減措置ではあなたの場合、保険料が三割減額されます。分納もできますよ」

 女性は、減免された保険料を分納で支払い始め、保険証が継続されました。「ほんまに助かりました」

 中小企業が多く高齢化がすすむ同区では、全世帯の五割を超える三万六千余世帯が国保に加入しています。保険料が高く、加入世帯の約三割におよぶ一万世帯が国保料を納めることができずにいます。(二〇〇五年三月、大阪社保協調べ)

 そのうえ昨年、市は保険料の算定をこれまでの住民税をもとにした計算から、所得に応じた計算方式に変えました。(旧ただしがき方式)

前年の4.3倍も

 算定方式の変更が提案された三月議会で、日本共産党市議団は「住民非課税の高齢者をはじめ、新たに賦課される世帯が大きく増加する」などをあげ、反対しました。自民、民主、公明の各会派が賛成し、提案は可決されました。

 この結果、住民税非課税世帯にも、世帯の総所得が三十三万円を超えると「所得割」がかかるようになりました。

 市の試算では六十五歳以上の単身世帯で所得三十三万円の場合、前年の一万八千円から七万八千円にはねあがりました。実に四・三倍です。

表

市民が「国保よくする会」

6万7000円が2万円に減免

 国保料の算定方式をかえ国保料を大幅に引き上げた大阪市。昨年六月半ば、各家庭に納付通知書が届くと市民の間に衝撃が走りました。住民税が定率減税の半減などで大幅にあがったうえ、国保の保険料が二倍、三倍になっていました。

千人区役所に

 「この金額は、なんかの間違いやろ」

 「こんなもん、払えるわけないやないか」

 区役所には毎日、説明を求める人、抗議する人が詰めかけ、一日千人にもなる日がありました。区役所の係への電話は鳴りっぱなしでした。

 しかも、国が激変緩和措置をとったうえのことで、保険料は、さらに今年、来年と連続して上がります。

 国は、保険料の払えない世帯にたいし保険証をとりあげ、資格証明書を発行するように義務づけています。資格証明書では病院にかかるさい、費用の全額をいったん窓口で払わなくてはなりません。このため、病院にかかれず、命を落とす痛ましい事件が各地で起きています。生野区でも四百三十五世帯に資格証明書が発行されています。(〇六年七月)

犠牲者だすな

 「生野区から、国保がもとで犠牲者を出してはならない」―。同区では民主商工会、ヘルスコープ、生活と健康を守る会などが共同して昨年、「国保をよくする会」を発足させていました。

 「会」は急きょ、「保険料の減額、免除を求める制度があります。活用するため、みんなで区役所と交渉しましよう」と区民によびかけました。

 六月末の交渉当日、予想を超えて二百人余が区役所を訪れ、集団交渉となりました。減免、分納をあわせて百五十人が手続きをしました。日本共産党の下田敏人市議も同席しました。

 生野民商は、並行して各班ごとに減免申請の運動をよびかけ、これまで六百四十八世帯が申請しました。市の国保条例、国の軽減制度で二割、三割軽減が百四十世帯に適用されました。国の軽減制度である五割、七割軽減が二百六世帯に適用されました。

 六万七千円の保険料が二万百五十円に減額された高齢者もいました。

 「大阪市の国保をよくする実行委員会」の森野一志代表(生野民商会長)はいいます。

 「住民の福祉増進をはかるべき自治体が、所得の低い人に負担増を押しつけるなど見すごせません。市は、国保料について、住民負担がより少ない方式への変更をすべきです。減免制度の拡充も求めたい。国民皆保険を守るためにも、加入世帯すべてに保険証が行き渡るように声と運動を大きくしていきます」


活用しよう減免制度

 政令による軽減(国の制度)

 (加入者に均等、平等にかかる応益割が45%以上55%未満の市町村)

 7割軽減…世帯の所得が33万円以下の世帯

 5割軽減…世帯の所得が33万円+24万5千円×(世帯主を除く加入者数)以下の世帯

 2割軽減…世帯の所得が33万円+35万円×加入者人数以下の世帯

 (2割軽減のみ申請が必要です)

 市町村独自の条例減免

 保険料の徴収猶予、納期限の延長をしても納入が困難な場合、申請による減額措置。市町村の権限で条例に定めています


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