2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

建築労働者の暮らしと健康守る


 首都圏はじめ全国各地の建築労働組合は、消費不況による仕事不足、建設業従事者の減少のもとでも、建築労働者の待遇改善や建設国保を守り発展させる運動や、アスベスト(石綿)被害根絶のたたかいなどをすすめ、組合員をふやしてきました。そのなかから東京土建一般労働組合と熊本県建築労働組合天草支部の活動を紹介します。


アスベスト救済働きかけ

東京土建

 東京土建は、昨年秋の組合員拡大月間で七千五百十人ふやし、組織人員は過去最高の十二万九千二百四十三人に到達し、この一月、結成六十周年を迎えました。大手資本の市場支配による地域業者の受注減少などのもと、倒産、廃業も多く、東京の建設業従事者は、五年間で14%も減少し約四十一万二千人。その31・3%を占めています。

 外注化で「一人親方」がふえるなか、野丁場(現場)への働きかけを強めるなどしてきました。自分で労災保険、国保に入ったり、健康診断をうけたりが必要で、そうした要求に応えたのです。

 ホームページもリニューアルし、若い職人むけにケータイですぐアクセスできるQRコード付きのビラを配るなど、工夫や努力もしてきました。ケータイサイトからの資料請求も年を追ってふえ、三百六十件。うち四、五割が組合に加入するほど。小規模事業者にむけた拡大のとりくみで、まず社長が入り、あとから七人が加入といった例もありました。

 組合員の健康と暮らしを守る業務をふやすなか、東京土建がじん肺・アスベスト被害の掘り起こしを本格化したのは二〇〇二年。問題点の告発、国や資本にむけた運動、組合員の被害防止など、いちはやく総合対策を打ち出しました。〇六年までに百四十七件という「一年で十年分」と評価される労災認定に結実していきました。

講習に1万6千人

 アスベスト救済新法の労災申請の五年時効を念頭に〇六年には「過去に亡くなった人を中心に七百五十人以上に手紙を出し、肺がんで死亡した組合員で胸部レントゲンフィルムが残っていた人六十五人中五十一人に石綿肺などアスベスト疾患の症状がでていることがわかった」と東京土建の三宅一也労働対策部専従執行委員。

 〇五年七月施行された石綿障害予防規則による石綿作業者特別教育はこの年から翌〇六年にかけて二百数十回行い、一万六千人が受講。作業主任者講習にも力を入れました。受講を通し〇五年秋には千九十五人、〇六年春と秋には二百九十五人が組合に加入しました。

 東京土建の援助で〇三年誕生したじん肺・アスベスト疾患患者会「はなみずきの会」は、年三回交流会を開いています。

組合からの手紙

 東京都目黒区の女性(69)の場合は、建設設備業の夫が末期がんと診断され入院した直後、組合から手紙をもらい、レントゲン・フィルムの貸し出しをうけて専門医に見せ、アスベストの肺がんとわかったケース。患者会運営委員である浅野さんはいいます。

 「組合員でなかったら、単なるたばこの吸いすぎによる肺がんで片付けられていた。証明手続きに一年がかりで大変な思いをしたが、書類が全部そろい、亡くなる二日前に労災申請を提出し翌年四月に認定された。うちは会社をやめたが、うちの現場で働いていた職人には何かあれば、夫の申請でそろえた資料をもとに私が証人になると伝えたのです」

 アスベスト救済法一周年にあたり、石綿全国連の主催で、三月二十六日午後一時から、アスベスト救済法を検証する集会が千代田区の社会文化会館で開かれます。(地方部・孝岡楚田)


賃金額守り議会にも陳情

熊建労天草支部

 熊本県建築労働組合(略称・熊建労)は、県内の建設産業で働く親方・一人親方・職人で構成し、組合結成四十四年目の昨年秋の定期大会で七千人組織建設などをめざした第五期五カ年計画を確認し一年目に入りました。

 県内十一番目の支部として結成された天草支部は、一九九三年に当時五人の組合員でスタートし、地域の建設労働者のさまざまな要求に応えながら現在六百六十人を超えています。

 当初、保守的な地域性から「労働組合」という言葉そのものに抵抗を持つ人が少なくありませんでしたが、組合の制度や労災事故の対応で助かった話など、何でも相談活動が熊建労への信頼となり、なくてはならない存在となっています。

月6万円弱低い

 ゼネコン・住販企業の高利益と裏腹に、組合員や家族の実態は大変です。昨年九月に取り組んだ賃金アンケートでは、全国の労働者の平均賃金より月額にして六万円弱も低い結果となりました。アンケートには、「賃金・単価が下がりとても不安だ」「このままでは生活できない」「仕事が少なく続けていけるか不安だ」など、切実な声が寄せられています。

 毎年二月に全県一斉に「賃金ポスター立て」行動を取り組み五千本立てていますが、支部でも九分会で百五人が参加し、四百五十本のポスターを地域全体に打ち立てました。この取り組みは組合に入っていない仲間も励まし、建設職人の賃金額を守っています。

ルールづくりを

 また、アスベスト対策では、健康診断会や、「アスベスト取り扱い特別教育」を実施。「建設業界ルールづくり」の運動では、県議会での請願採択に向けて、有権者の2%以上の陳情署名を集め、二市三町で採択を実現するなど、議会に直接交渉した運動は貴重な教訓となりました。

 昨年春は、全建総連の大江拓実書記次長を講師に「建設従事者の『宝』熊建労の仲間を増やす運動」と題した学習講演会では組織建設の重要さを話してもらいました。「きびしいときこそ、仲間のよりどころの組織が必要、『熊建労』がその役割を担っている」、と松本均支部委員長(大工)を先頭に支部・分会の役員は、熊建労の運動に自信を持ち、六月末までの支部の到達目標七百人にむけて日々奮闘しています。(熊本県建築労働組合天草支部書記長 谷口信一)


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