2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」

来年度文化庁予算案

芸術・文化活動は大幅減額

いっそう冷たい安倍内閣


 安倍内閣が初めて策定した二〇〇七年度予算案のうち、文化庁予算案の詳細が明らかになりました。総額は、千十六億五千五百万円で、対前年度1・0%、十億七百万円の微増となっています。しかし、増額したといってもごくわずかであり、国家予算に占める割合は0・12%と、フランス(0・96%)や韓国(0・95%)などに比べて著しく低い状態はなんら変わっていません。しかも内容的には、芸術・文化活動への支援は増額どころか、逆に大幅な減額となっています。

3つの柱を見る

 文化庁行政の三つの柱である芸術・文化活動支援、文化財保存、施設整備の区分で見てみると、(1)「文化芸術立国プロジェクトの推進」が三億八千九百万円減、(2)「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」が十億五千七百万円増、(3)「文化芸術振興のための文化拠点の充実」が一億四千二百万円増となっています。

 文化財保存は若干増額になっていますが、昨年度と今年度予算で削減されており、新規事業をふくめて若干「復活」しただけです。開発で破壊の危険がある「埋蔵文化財発掘調査事業」は二〇〇五年度の四十億三百万円から三十八億八千六百万円に削減されたままです。それ以外では、今年開館となる国立新美術館が借地となっているため用地購入に六十三億円を計上。子どもたちの鑑賞機会を拡充する「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」は二億八千九百万円増となっています。

さきゆきに不安

 その一方で、芸術・文化活動への支援は昨年に引き続き大幅な減額となっています。とりわけ、アーツプランとよばれた文化団体への支援「芸術創造活動重点支援事業」は五十億千四百万円で、13・5%、七億八千万円の大幅減額です。しかも、九月の概算要求段階では新規事業として要求していた「舞台芸術共同制作重点支援事業」が認められず、その内容も従来の「重点支援事業」に繰り込んだため、文化団体の事業への支援はさらに圧縮されます。

 「重点支援事業」は、二〇〇五年度以降、それまでの団体ごとの採択から個別事業ごとの採択に変更されました。ぼう大な申請事務を要求されるうえ、先行きの計画が立たないとの指摘がオーケストラなどから出されていますが、さらに対象公演数まで削減されることになります。

 また、「魅力ある日本映画・映像の創造」が32・7%、三億九千五百万円減、「国内上映・映画祭の支援」も14・7%、四千六百万円減になるなど、日本映画への支援も大幅減額。国立美術館や日本芸術文化振興会など独立行政法人への運営費交付金も軒並み減額で、国立博物館と文化財研究所の両法人の統合を前提とした交付金となっています。

 文化芸術振興基本法が制定されて五年がたちますが、自民党政治がおしすすめた「構造改革」路線のため、芸術・文化活動の条件は悪くなっています。二〇〇七年度予算案は、「美しい国」づくりを唱えながら、芸術・文化に冷たい安倍内閣の姿勢を示しています。

(辻 慎一 党学術・文化委員会事務局次長)


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