2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」
広がる増派反対
共和党内も異論相次ぐ
【ワシントン=山崎伸治】ますます泥沼化するイラク情勢に、ブッシュ米政権は米軍の増派で対応しようとしています。それに対して米国民の批判は強まる一方。米兵の間での不満も高まっています。そうした声に押されて、米議会では撤退を求める声が与党・共和党の中にも広がり、撤退要求や増派反対の法案・決議案が二十四日までに上下両院に十五件も提出されています。
「いま分かっていることがその当時分かっていたら、私はイラク武力行使容認決議に賛成しなかった」―民主党下院院内総務のホイヤー議員が二十六日、ワシントン市内で行った講演は「反省の弁」で始まりました。
二〇〇二年十月、ブッシュ大統領にイラク開戦の許可を与えた同決議は上下両院とも超党派の議員の賛成で採択。ホイヤー氏は下院で賛成に回った民主党議員八十一人の一人でした。
それから四年余が過ぎ、議会の様相は一転しています。
上院では、バイデン外交委員長、レビン軍事委員長という民主党の有力議員に加え、共和党重鎮のヘーゲル、スノー両議員が提案者に加わったイラク増派反対の決議案が提案され、二十四日に外交委員会で賛成多数で可決されました。
提案者のヘーゲル氏以外に共和党から賛成者はいなかったものの、「ブッシュ大統領の計画が成功するかどうか、私には自信がない」(ルーガー前外交委員長)、「現時点であれ(ブッシュ提案)が最も有効な策かどうかわからない」(マーコウスキー前アジア太平洋小委員長)と、共和党有力議員から増派への異論が相次ぎました。
反戦行動が世論動かす
議員が次々とイラク戦争反対に回ったきっかけは、昨年十一月の中間選挙での共和党敗北でした。米国民のイラク戦争に対する批判の声です。
ブッシュ大統領の対イラク政策に対する米国民の不支持率は、米軍がバグダッドに侵攻した二〇〇三年四月には22%(米紙ワシントン・ポスト、ABCテレビ世論調査)でしたが、泥沼化にしたがって高くなり、今年の一般教書演説直前の十九日には70%で、これまでの最高となりました。
それに対し、〇三年四月には77%だった大統領支持率は下がる一方。中間選挙直前には40%、十九日には33%と最低を記録しました。
中間選挙で共和党が敗北したことを受けて、ブッシュ大統領はラムズフェルド国防長官を更迭し、イラク政策を見直すと発表。十二月には十人の有識者による「イラク研究グループ」の最終報告書も公表されました。
ところがブッシュ政権は同報告書が提言する米軍の段階的撤退を拒否。撤退どころか、今月十日のテレビ演説で二万一千五百人の増派を発表しました。
一方、民主党は上下両院で十二年ぶりに多数を占めたものの、イラク問題をめぐる指導部の弱腰の姿勢は明白でした。
それを変えたのは、今月四日の議会開会早々、ロビー活動に取り組んだ反戦活動家たちの行動でした。中間選挙で国民が示したのはイラクからの撤退だと議会に働きかけた結果、五日には同党指導部が増派に反対する書簡をブッシュ氏に送付。米メディアも反戦運動の力に注目しました。
米兵訴えに賛同
米軍内でもブッシュ氏のイラク政策に対する不支持が広がっています。米兵向け週刊紙を発行するミリタリー・タイムズ社が現役兵士を対象に行っている世論調査では、不支持が42%で支持の35%を上回りました。
イラクからの米軍の即時撤退を求める現役米兵の「訴え」への米兵の賛同署名も広がり、千二百人を超えています。
ブッシュ政権のイラク政策に対する批判は米国内にとどまりません。
英BBC放送が今月、世界二十五カ国で実施した世論調査で、73%がイラク戦争に反対と回答。49%が「米国は世界で否定的な役割を果たしている」と答えています。
有志連合も減少
そうしたなかで、イラクに軍隊を派兵してきた「有志連合」も三十八カ国から十七カ国に減少。第二の派兵国、英国も段階的撤退を決めています。
「イラクへの派兵はブッシュ政権を助けるだけです」と指摘するのは、イラク開戦に抗議して米国務省を辞職した元外交官のアン・ライトさん。「日本には、海外で武力攻撃にかかわらないとしてきた六十年の歴史を無にしてほしくありません。日米両国の国民がそれぞれ自分たちの政府に、海外で無謀な軍事行動に加担すべきでないと立ち上がらなければなりません」と訴えています。
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