2007年1月28日(日)「しんぶん赤旗」
残業代40億円払います
米ウォルマート
他に係争中の案件も
【ワシントン=鎌塚由美】米労働省は二十五日、米最大の小売チェーン・ウォルマート(本社アーカンソー州)が同省の告訴に基づき、従業員への未払い残業代として全米各地の約八万六千人にたいし、総額約三千三百万ドル(約三十九億九千三百万円)を支払うと発表しました。
労働省は二十五日、最低賃金や残業代規定を定めた連邦法「公正労働基準法」(FLSA)に基づき、アーカンソー州の連邦裁判所にウォルマートを告訴。残業代の支払いと再発防止を求めました。ウォルマートは即日、「間違いを従業員に謝罪する」と表明し、労働省との示談を発表しました。
ウォルマートは大規模店舗の展開で安売りを武器に急成長をとげる一方、労働者に対しては組合の結成を認めず、低賃金・低給付などを押し付けてきました。
今回の残業代支払いについては、同社が「内部監査で間違いを発見し」、労働省に「自主申告」したもの。同社は、残業代を低く算出していたことは、“計算間違い”だったと説明しています。
ニューヨーク・タイムズ紙(二十六日付)によると、ウォルマートは現在、四十州以上で残業代未払い問題での訴訟を抱えています。同社は、これら係争中の裁判では、「違法行為やいかなる不正」もいっさいないと否定してきました。
ウォルマートは同日発表した声明文で「従業員に正確に補償を行うために、労働省が定める二年ではなく、自主的に五年間にさかのぼり支払うことにした」と述べ、「自主的な申告」と「罰金・罰則なしの示談」によるものだと強調しました。
支払いの対象は、過去の従業員も含む全米各地の八万六千六百八十人。一人二十ドル以上で平均約三百八十ドル(約四万六千円)となります。
今回の残業代支払いについて、議会下院で教育・労働委員長を務めるミラー議員(民主)はロサンゼルス・タイムズ紙に対し「そもそも労働者に支払わなくてはならなかった額を支払っただけであり、ウォルマートにはほとんど損失はない」と語りました。
同紙は、労働省との示談内容は、他の係争中の案件には影響しないものとなっていることから、「ウォルマートは、裁判ではなく、政府とのよりうまみのある取引をしたかっただけだ」と、カリフォルニア州で労働問題を担当する弁護士の指摘を伝えています。
同社の横暴を追及する民間団体ウォルマート・ウオッチのナサール事務局長は同日発表した声明で、ウォルマートが今回自ら名乗り出たことの背景には、「残業代不払いや他の関連する裁判で、より大きな法的暴露に直面している」ことがあると指摘しました。