2007年1月28日(日)「しんぶん赤旗」
世界社会フォーラム
新自由主義反対・9条との出会い
アフリカにも拡大
新自由主義反対、公正で平和な社会に向けて代案を探る世界社会フォーラム(WSF)が二十日から二十五日まで、東アフリカ・ケニアの首都ナイロビで約六万五千人(主催者推定)が参加して開かれました。WSFは今回で七回目、アフリカでの単独開催は初めてでした。会議は、新自由主義反対の運動がラテンアメリカ、アジアに加えてアフリカを含む文字通り第三世界のすべてを含む運動に拡大する契機となりました。(ナイロビ=岡崎衆史)
フォーラムでは、世界で最も貧しい地域であるアフリカを苦しめるさまざまな問題が議論のテーマとなりました。
■債務と貧困
その一つが貧困を生み出す対外債務の問題です。社会フォーラムに参加した主な非政府組織(NGO)は債務問題を協議し、先進国による途上国の債務帳消しを求める運動を強化することで一致。議論の中では、債務問題と途上国で進む新自由主義政策との関連が浮き彫りになりました。
二十一日の二つの分科会では、三人のアフリカからの参加者が、債務返済のためにアフリカ各国政府が世界銀行に構造調整政策を押し付けられ、教育、福祉予算削減、民営化などを進めていることを告発しました。ベナンの女性は「構造調整政策によって、アフリカ諸国の経済政策はどこも同じだ。生活が破壊され、貧困が固定化されている」と訴えました。
日本のグループが主催した分科会では、日本政府の政府開発援助(ODA)は、その資金で進められるプロジェクトを受注する日本企業の利益になった上、債務だけが途上国に残ることが指摘され、日本の対外援助に非難が相次ぎました。
■平和を築く
紛争が絶えない中東、アフリカで平和を築く問題も重要なテーマになりました。イラクの人権活動家イスマイル・ダウド氏は「米国の侵略と占領政策がイラクでの宗派や民族間の対立、テロ組織アルカイダの出現を招いた」「米国は今、二万人超の部隊を増派しつつあるが、イラクの紛争は占領政策が引き起こした政治的な問題であり、解決方法も政治的であるべきだ」と述べ、軍事優先のブッシュ米政権を批判しました。
今回の会議は、憲法九条がアフリカと出会い、平和創出の力として受け入れられる大きなきっかけとなりました。二十四日の分科会で、ケニアの平和活動家アンソニー・ニョロロ氏は「ケニアでは部族同士の武器をもった争いが絶えない。武器をもってたたかうのではなく、憲法九条こそがその解決方法だと確信した」と発言。戦争放棄と武力不保持をうたう憲法九条が、アフリカから争いをなくす唯一の方法だと強調しました。
外国軍基地についての分科会では、西アフリカのナイジェリアからの参加者が「外国軍基地の存在は植民地支配以来のアフリカ人民の抑圧を継続するものだ」と断言。世界の基地反対活動家がアフリカの状況を知り、連携を強める足場となりました。
■歩みだした
フォーラムに参加した組織や個人は、すでに、その成果を手に、新しい運動に向け歩みを始めています。
「アフリカでは一部の有力者のふところを潤すために水が民営化され、多くの貧しい人を悲しませてきた。私たちが連帯し、団結すれば、これを変えることができる」
二十四日、同日午前に結成されたばかりの「アフリカ水ネットワーク」を率いるバージニア・マグワザ・セツディさんが分科会で表明しました。水の民営化に反対するアフリカ初のネットワークを通じ、アフリカ内の運動の協力を強化し、ラテンアメリカやアジア、欧州との連携も視野にいれた活動をしていくといいます。
社会フォーラム参加は今回で五回目だというブラジル人男性のシルビオ・ディアスさん(48)は、閉会式典で「初めてアフリカに来て、いろいろな出会いができた。運動に多様性が生まれて、強化されていくはずだ」と語りました。
世界社会フォーラムとアフリカの出会いは、公正で平和な社会を求めるアフリカと世界の運動を強める機会となりました。