2007年1月28日(日)「しんぶん赤旗」

横田の米軍「新戦闘司令部」

日本国民に説明なく進む再編

「地球規模のテロ戦争」の一環


 「横田基地の第五空軍をグアムの第一三空軍と統合する」(二〇〇四年九月、米太平洋空軍・ヘスター司令官)―。日本政府の要請で表向きは取り下げられたこの構想は、日本国民に説明されることなく「ケニー司令部ジャパン」の創設という形で進行していました。

一体化さらに

 ブッシュ米政権が〇二年に打ち出した先制攻撃戦略に沿って、米空軍は司令部再編を進めています。「地球規模のテロとの戦い」に対応するための司令部機能の強化が目的で、全世界で十個の「戦闘司令部」設置が計画されました。

 第五空軍(在日米空軍)司令部と、当時グアムにあった第一三空軍司令部の統合計画もその一環で、統合後にハワイかグアムへの移転が検討されました。米側はこの計画を、〇四年から本格化した在日米軍再編の協議で、米陸軍キャンプ座間(神奈川県)への陸軍戦闘司令部の創設と並ぶ最重要課題に掲げました。

 第五空軍司令部の国外移転計画に驚いた日本政府は「航空自衛隊の相手役がいなくなる」などの理由から残留を懇願。結局、第五空軍司令部は残り、第一三空軍司令部だけがハワイに移って、〇五年に戦闘司令部=「ケニー司令部」に衣替えしました。

 しかし、同司令部は第五空軍傘下の実戦部隊の作戦統制権を握り、横田にあった気象隊や管制隊もハワイに移ります。今回、新設された同司令部の分遣隊「ケニー司令部ジャパン」の要員はすべて第五空軍司令部からの転出です。第五空軍司令部は事実上、ケニー司令部に吸収・統合されつつあります。

 第五空軍司令部は移転せず、ケニー司令部ジャパンの新設で基地機能が強化され、自衛隊との融合・一体化をいっそう進めるという重大な事態です。

 日米両政府がこの重大な変化を周辺自治体に通知したのは「ケニー司令部ジャパン」発足の前日(一月四日)でした。

能力の橋渡し

 ケニー司令部ジャパンは当面、「ミサイル防衛」(MD)を通じて、米軍と自衛隊の融合・一体化を計画しています。

 ケニー司令部のアッターバック司令官は、「ミサイル防衛」の意義を強調し、「第五空軍と航空自衛隊に、ハワイの第六一三航空宇宙作戦センター(AOC)の能力の橋渡しをする」と述べています。自衛隊が「米太平洋空軍の神経系統の中心」(在日米軍司令部)であるAOCの情報や計画に基づく「ミサイル防衛」作戦に自動的に動員される危険があります。

 また、昨年六月にグアムで実施された日米共同演習「コープノース」では、ケニー司令部の司令官が統制官となりました。同司令部が指揮するアジア太平洋規模での殴り込み作戦に自衛隊が組み込まれる危険を示しています。

大本が破たん

 これら一連の動きは米軍の地球規模の変革・再編の一環です。しかし、その大本にあるブッシュ米政権の先制攻撃戦略は、イラクでもアフガニスタンでも破たんしました。

 ケニー司令部が担当するアジア太平洋地域では、全体として見れば平和の共同の流れが強まり、軍事介入の余地がなくなりつつあります。戦争ではなく外交で問題を解決するという世界の流れに逆行する変革・再編に、自衛隊がさらに組みこまれようとしています。(竹下岳)

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