2007年1月27日(土)「しんぶん赤旗」
日歯 参院選へ ぐるみ選挙
政治連盟非会員に“通達”
医療改悪推進自民の比例候補支援
公益法人である日本歯科医師会(日歯)が、ことしの参院選比例区に自民党から立候補を予定している日本歯科医師連盟(日歯連)参与の石井みどり氏を支援する活動を展開していたことが本紙入手の内部資料などでわかりました。日歯と、その政治団体である日歯連の活動を厳格に区分けすることは厚生労働省が文書で指導している問題です。診療報酬改定をめぐる汚職事件で元会長らが起訴された日歯連事件とともに、日歯の反省のなさが厳しく問われています。
本紙が入手したのは、滋賀県歯科医師会の芦田欣一会長が昨年十二月十一日付で会員あてに出した「石井みどり支援者獲得についてお願い」。名前、年齢、郵便番号、住所、電話を記載する名簿欄つきで、「一医療機関に、『石井みどり』を確実に支援してくださる方五人以上(会員本人含む)」をことし一月十九日までに返信封筒で送るよう求めています。
「お願い」のなかで、「県歯科医師会、県歯科医師連盟の会員を問わず」と、日歯連に加わっていない会員にも「支援者獲得」を呼びかけています。
会員から「公益法人が政治活動をするのはおかしい」という声があがり、滋賀県健康推進課は、県歯科医師会に「二度とこのようなことをしないように」と行政指導しました。
また、日歯本体も大久保満男会長名で、都道府県歯科医師会長あてに「日本歯科医師会会員(日本歯科医師連盟非会員)に対する『石井みどり後援会活動へのご協力のお願い』の送付について」とする文書を発送する動きも明らかになりました。
これについても、滋賀県歯科医師会会員の津曲雅美さんが日歯に抗議の電話をするとともに、文書送付を決めたという理事会の議事録の開示などを求める公開質問状を提出。回答は期限をすぎてもありませんでしたが、会長名文書の送付は中止となりました。
日歯連をめぐっては、「日歯連に強制加入させられたのは思想・信条の自由をふみにじり不当」と各地の歯科医師が起こした訴訟で「会員の入退会の自由」を認め、公益法人とその政治団体の活動を「峻別(しゅんべつ)する」との和解も成立しています。
和解条項に違反
日歯連鹿児島訴訟の原告、月俣博通さんの話 会長名で日歯連の会員でない人にも特定候補の支持を押し付けようとすることは、明らかに憲法違反であり、和解条項違反です。“未遂”になったとしても、そういうことを考えること自体、おかしい。カネで政策を買収した汚職事件も何ら反省していません。しかも自民党は、「医療改革」といいながら患者負担を増やし、診療報酬を3・16%引き下げ、混合診療解禁を進めるなど、患者と医療機関に被害を与えているのに、そんな自民党を支援することは許せません。
国の分離通達を無視
本来、公益法人は特定の政治活動や選挙活動をすることはできません。公益法人が表裏一体の政治団体をつくり、組織ぐるみ選挙を行うことは、会員の思想・信条の自由にかかわる問題です。
日本共産党の佐々木憲昭衆院議員、小池晃参院議員、八田ひろ子参院議員(当時)は、この問題を国会で再三とりあげ、ただすよう求めました。これを受け、厚労省医政局は二〇〇四年四月、三議員の関連質問部分も添付して、公益法人とその政治団体の活動を峻別するよう求める事務連絡文書を各都道府県と、日歯、日本医師会、日本看護協会に出しています。