2007年1月25日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米一般教書演説

イラクでの誤りに反省がない


 ブッシュ米大統領が今年の施政方針をしめす一般教書演説で、イラクに米軍を増派する「新戦略」に支持をよびかけました。米軍を「後退」させてはならないというさわりの部分に、上下両院議員の拍手はまばらでした。

 それほど、大統領と内外世論のずれはきわだっています。ブッシュ政権がこのままイラクで軍事対決に突き進めば、そのきしみをますます大きくし、イラクにとっても、米国にとっても、さらに重大な危機をもたらすことは明白です。

軍事対決一辺倒の錯誤

 今回の演説の最大の特徴は、「テロとのたたかいに勝つ」ため「敵」と「徹底的にたたかう」しかないと、イラクでの軍事対決一辺倒をきわだたせたことです。

 しかし、イラクへの侵略戦争を一方的に始め、情勢をここまで悪化させて、数十万人のイラク人を犠牲にし、米兵三千人以上を死なせた根本的な責任は、ブッシュ政権とその同盟国にあります。米軍侵略前のイラクには、侵攻の口実にした大量破壊兵器もなければ、国際テロ組織・アルカイダとのつながりもありませんでした。

 イラクを戦場にしてテロリストをよびこみ、「憎しみをかきたてる状況」(ブッシュ大統領)をつくり出した最大の責めを負うべきは、ブッシュ大統領自身です。その反省なしの新戦略は、破たんを運命付けられているのも同然です。現に米国民の圧倒的多数は、ブッシュ大統領に明確な批判をあらわしています。

 最新の世論調査によれば、どこでも米国民にとって「もっとも重要な問題」は「イラク戦争」が断トツになっています。米軍増派に対しては、男性の59%、女性の71%が反対(ABCニュース調査)。66%が反対、賛成は29%にすぎない(CBSニュース調査)という結果です。

 ブッシュ大統領への「強い支持」が17%に低下したのに対し、「強い不支持」は51%と半数を超えています(ABC調査)。CBS調査では、「支持」が28%に対し、「不支持」は64%にのぼります。

 米国内で広がるブッシュ政権の「戦争拡大」政策への批判は、米軍のベトナム侵略戦争末期を想起させるほどです。ベトナム侵略戦争を拡大したマクナマラ元米国防長官は、米軍敗退(一九七五年)後に、ベトナム人民の民族独立への願いを過小評価したと“回顧”しました。かならずしも侵略戦争の誤りそのものを認めたわけではない反省ではあっても、米国にとって痛切な“教訓”だったはずです。

 ブッシュ大統領が一般教書演説で、「米軍が後退すれば、イラク政府は過激派に倒される」といくら危機感をあおっても、自らの誤りに反省のない新戦略では、国内外の支持をつなぎとめることは不可能です。

撤退の道に転じよ

 カーター政権時代の大統領補佐官、ブレジンスキー氏は、ブッシュ政権のイラク政策の「五つの欠陥」をあげ、「致命的な欠陥」をこういっています。「イラクで米国は、植民地権力者のように行動している。植民地時代はもう終わったのに、植民地戦争を続けるのは、自滅の道である」(ワシントン・ポスト紙)

 すでに米国民の52%は、市民的秩序が再建できていなくても米軍を撤退させるべきだ、と考えるようになっています(ABC調査)。米国とイラクの国民多数が求め、米議会にも動きが強まっている、米軍撤退に転じる時です。


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