2007年1月24日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「事務所費」問題

疑惑の徹底解明を急ぐべきだ


 現職閣僚や自民、民主両党の幹部にまで広がった「事務所費」疑惑に国民の批判が高まっています。

 安倍内閣の支持率低下に歯止めがかからないマスメディアの世論調査でも、疑惑の実態が「解明されていない」が85%にのぼり、「解明された」はわずか2%しかありませんでした。(「朝日」二十三日付)

 現職閣僚にかかわる疑惑は、閣僚個人とともに、任命権者である首相が責任を持って、調査・公表すべきものです。自民・民主の両党には政党としての自浄能力を発揮するかどうかが問われます。二十五日に開会する国会でも、徹底した解明をすすめる必要があります。

公開が責任果たす道

 家賃のかからない国会の議員会館に政治団体の主たる事務所をおきながら、政治資金収支報告書には年間数千万円もの巨額「事務所費」を計上していたというこの問題は、日本共産党の市田書記局長が二十二日の記者会見でも明らかにしたように、現行の政治資金規正法に照らしても、違法・脱法の疑いがある問題です。

 政治資金規正法は、「政治活動費」には、五万円以上の支出に領収書の添付を求めていますが、「事務所費」など経常経費には総額の報告を求めるだけで、領収書の添付を求めていません。「事務所費」に領収書を求めないのは、その使途が家賃や電話代などの固定的経費に限定されているからです。この趣旨に照らせば、家賃がかからず、都内なら電話代もかからぬ議員会館に「主たる事務所」を置きながら、一千万円を超えるような巨額の事務所費が計上されること自体、きわめて不自然です。

 伊吹文明文科相、松岡利勝農水相、自民党の中川昭一政調会長、民主党の松本剛明政調会長ら巨額の事務所費支出が明らかになった議員のなかで、これまでに根拠を示して、国民に明確な説明をした議員は一人もいません。伊吹文科相と中川政調会長は飲食費を事務所費に計上したことを認めましたが、本来「政治活動費」で処理すべき支出を「事務所費」に入れたとすれば、政治資金規正法に違反することになります。

 政治資金規正法の立法の趣旨は「政治活動の公明と公正を確保」することにあります。政治資金は国民の浄財なのだから収支を常に明らかにして国民の判断にゆだねるべきだということです。政治団体には「いやしくも国民の疑惑を招くことのないように」する責任を求めています。

 この説明責任が果たされないのでは、国民は納得できません。領収書を添付する必要がない「事務所費」も、政治団体は帳簿への記録と領収書の徴収を義務付けられています。不正がないというのなら、みずから保管義務のある帳簿と領収書を示して説明するのが当然です。

国民の税金にかかわる

 自民党や民主党には現行の政治資金規正法の不備を言い立てる向きもありますが、現行法でも違法・脱法の疑いがある問題を、その解明を避けて、「改正」問題に逃げ込むのは間違っています。事務所費にも領収書の添付を義務付けるなどの改正はもちろん必要ですが、先決問題は現行法でも違法・脱法の疑いが濃い疑惑を徹底して解明することです。改正はそのうえで行うべきです。

 自民党や民主党の政治家が扱う政治資金には、献金だけでなく年間三百億円を超える政党助成金も含まれています。国民の血税の使い道にもかかわる、政治への信頼回復がかかった重い課題として、真摯(しんし)に疑惑を解明すべきです。


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