2007年1月23日(火)「しんぶん赤旗」

事務所費問題について

市田書記局長の会見


写真

(写真)記者会見する市田忠義書記局長=22日、国会内

 日本共産党の市田忠義書記局長が二十二日の記者会見で、事務所費問題についてのべた部分(大要)は次の通りです。

 あらためて事務所費問題の何が問題で、どうすべきかについて、わが党の見地をのべたいと思います。

現行法にてらしても違法・脱法の疑い

 第一に、問題は現行政治資金規正法に照らしても違法・脱法の疑いがあるということです。政治資金の収支報告は「政治活動費」と「経常経費」に分けられています。「政治活動費」は、五万円以上の支出に領収書の添付が義務付けられています。「経常経費」(事務所費、人件費、光熱水費、備品消耗品費)は領収書が不要です。したがって、「事務所費」も領収書は不要です。

 問題の「事務所費」の内訳・定義は、地代・家賃、固定資産税、火災保険料、電話代、切手代、修繕料、その他これらに類する経費で事務所の維持に通常必要とされるものに限定されています。

 「主たる事務所」を、家賃がただで電話代も東京都内分は税金でまかなわれている議員会館に置きながら、その「事務所費」が年間一千万円を超える、なかには数千万円を超えるものもあります。現行法に照らしても、「事務所費」名目で一千万円以上も計上されていることは不自然であって、違法・脱法の疑いがあるのは明白です。

 伊吹文明文部科学相は、本来「政治活動費」に計上すべき飲食費を「事務所費」として報告していたことを自ら認めているわけですから、これは明白な現行法違反です。

疑惑がある以上、使途を公開すべき

 第二に、何をわが党は求めるかという点です。疑惑がかけられている以上、「事務所費」として計上した使途を公開すべきです。領収書は義務付けられていませんが、帳簿の保管は政治資金規正法上、義務付けられています。疑惑をかけられた政治家は帳簿を公表すべきだというのが、わが党の立場です。

 規正法第一条は、立法趣旨について、「政治活動の公明と公正を確保」するために法律をつくったとし、第二条には「(政治資金が)国民の浄財であることにかんがみ」「いやしくも国民の疑惑を招くことのないように」とあります。立法趣旨からいっても、家賃がただの議員会館を「主たる事務所」としている政治家が、一千万円以上も「事務所費」を計上していることは、だれもが異常と思うのは当然で、公表すべきです。

首相と各党の責任が問われている

 第三に、事務所費問題には、伊吹文科相や松岡利勝農水相など、現職閣僚がかかわっています。安倍晋三首相がいうように、政治家個人の責任だといってすますことは許されません。安倍首相として責任をもって調査し、公表すべきです。

 自民党も民主党も、中川昭一政調会長や松本剛明政調会長ら党幹部がかかわっており、政党としての自浄能力を発揮するかどうかが問われています。責任をもって調査し、政党としての責任を果たすべきです。

規正法改正は当然

 第四に、現行政治資金規正法の改正問題です。すでに昨年十一月二十九日の参院倫理選挙特別委員会で、わが党の井上哲士議員が事務所費問題をとりあげ、国民の信頼をうるために「事務所費」を含む「経常経費」も、領収書の写しを添付して透明性を高めるべきだと主張しています。その点で現行法のしかるべき改正が必要です。

国民の税金も

 最後に、国民が一番怒っているのは、政党の収入の多くが、国民の税金である政党助成金だということです。ところがその支出がいったい何に使われているのかはっきりせず、領収書もいらない、不透明だということに怒っているわけです。

 政党の本部収入に占める政党助成金の割合は、二〇〇五年分で自民党は60・2%、民主党は83・6%です。国民の税金を収入の大半にしながら、「事務所費」は支出について領収書もいらないというやり方が問題です。


会見での一問一答

 ――民主党の鳩山由紀夫幹事長が、事務所費問題は共産党の「赤旗」が意図的に問題にしたと発言しているが。

 市田 報道によると、民主党にも疑惑があるではないかと記者から問われ、あの問題は「赤旗」が意図的に問題にしてきた、作為的なレトリック(巧言)だという言い方をしています。

 しかし、政治資金規正法は、透明性を確保し、国民の疑惑を招くことがないようにとしています。その趣旨に照らし、領収書も不要で、使途がチェックできない巨額の「事務所費」を計上した事実が、疑惑を招くのは当然です。

 鳩山幹事長は会見で、後ろめたいことはないとおっしゃったのだから、きちんと使いみちを国民の前に公表することこそすべきであって、「赤旗」の指摘をレトリックと攻撃するのは、開き直りのレトリックです。

 新聞のほとんどの社説で「国民の不信感を軽く見ているのではないか」「仮に今の制度上は問題がないとしても、政治家には一段と高いモラルが求められているはずだ」と指摘され、これは、ほとんどのマスメディアの共通した主張です。自分たちの疑惑を指摘されたら、開き直るというやり方は正しい立場ではない。事実も示さないで、後ろめたいものはないといってやりすごすならば、事実も示さずに問題ないといっている伊吹文科相や松岡農水相などと同じ立場になりかねない。与党の疑惑を追及する資格が問われることになります。

 私は、この事務所費問題は、与党とか野党とかという問題ではない。私たちは政党助成金をもらっていませんが、国民の血税によってそのほとんどをまかなっている政党・政治家が国民の前にきちんと事実を明らかにすべき性格の問題だと思います。

 ――領収書の添付を義務付ける改正案を各党共同で提案すべきか。

 市田 先決問題は、国会の場で事実、疑惑の解明を行うことです。その上で、必要な改正をやるべきです。問題なのは、いまの現行法が悪い、自分たちは悪いことはしていないという開き直りです。現行法に照らしても、違法・脱法の疑いが濃いことが問題の本質であって、この問題を明らかにすることを避けて、現行法に不備があるという開き直りを許してはなりません。

 ――佐田玄一郎・前行革担当相の政治資金の問題などを追及するため、野党四党の幹事長会談をやるべきだという声もあるが。

 市田 その場合、民主党など野党にも疑惑がかけられているわけです。ですから政府・与党を追及するというのなら、自分たちの疑惑も正し、国民の前に公表すべきです。そのうえで力を合わせようというなら、連携は可能だと思います。

 野党はいつも、政治資金の問題できれいで、悪いのは与党だ。だから野党が力をあわせて追及しようという単純な構図ではありません。自分たちの問題もただすという立場に立つのかどうかが問われます。


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