2007年1月23日(火)「しんぶん赤旗」
主張
自衛隊員の自殺
イラク戦争が苦しめている
イラクから帰還した自衛隊員の自殺が、七人(陸上自衛隊六人、航空自衛隊一人)にもなっていることが明らかになりました(十四日付「しんぶん赤旗」で既報)。
自殺の増加は、戦場であるイラクでの活動と大いに関係があるとみられます。安倍首相はNATO本部を訪れたさいの演説で「自衛隊が海外での活動をおこなうことをためらいません」と公言しました。イラク派兵は大義のないアメリカの侵略戦争を助け平和の願いを踏みにじっているだけでなく、隊員とその家族をも苦しめていることを直視すれば、とても口にできる発言ではありません。
2倍に上る自殺率
本紙が入手した防衛省の内部文書は、二〇〇四年一月からイラクに派兵された五千五百人あまりの自衛隊員のうち、帰国後の自殺者が相次いでいることを認めています。
見過ごせないのは、自衛隊員全体に占める自殺者の割合とくらべても、イラク派兵隊員の自殺の割合が突出して高いことです。額賀福志郎防衛庁長官はすでに昨年の国会で、自衛隊員全体の自殺率に比べ、イラク派兵隊員の自殺率は「二倍ぐらいの数字になっている」と認めています(昨年六月二十二日、衆院イラク特別委員会)。二倍以上というのは、異常事態というほかありません。
全体の数は明らかになっていないものの、自殺ばかりでなく、自殺未遂やうつ病、職場への順応ができない隊員が相当数増えていることも深刻な問題です。
もちろん自殺やうつ病とイラク派兵との関連は断定できません。しかし、少なくとも自殺率が二倍に達するという事実は、自殺がイラク派兵と無関係ではないことを示しています。イラク帰りの隊員の自殺率が高いのは、危険な地域で活動を強いられてきたからと見るのが自然です。
陸自の場合撤退を終えたものの、サマワで占領米軍の仲間とみられ、駐屯地に迫撃砲を撃ち込まれ、自衛隊車両が通行する道路に爆弾もしかけられました。いつ撃たれるかわからないという不安で精神的ストレスが頂点に達した結果とみられます。
イラクに残り米軍兵士・物資を輸送する空自の場合は、輸送先の飛行場に着陸するときが最も危険です。着陸のたびにフレア(ミサイル攻撃回避のための熱源体)を放出して地上からの攻撃を避ける状況が続いています。緊張を強いられ、精神を蝕まれることが予想されます。
いわば、この人たちは政府の政策による被害者であり、政府は自衛隊員のおかれた実態に目を向けるべきです。実態を隠し公表を拒むなど許せることではありません。
ところが政府は、こうした派兵隊員の苦しみを理解しようとしません。ヘルスケアに万全をつくすといいながら、自殺の原因については「イラクに派遣されたからと直接断定できない」「結びつくものではない」(額賀防衛庁長官=当時)と無関係を強調するばかりです。
空自の撤退を急げ
ブッシュ政権はイラクから撤退するのではなく、逆に二万人もの部隊を増派し軍事作戦を強めています。米軍の非人道的・無差別攻撃はやわらぐどころか激化するのが必至です。空自の輸送支援は、この軍事作戦を支えるものとなるだけに、ますますイラク国民の怒りを買うことになるのは目に見えています。
米軍の増派は世界から批判されています。日本はアメリカいいなりのイラク派兵をやめ、イラクからただちに撤退させるべきです。