2007年1月21日(日)「しんぶん赤旗」
主張
食の安全
利益最優先の体質が問われる
大手菓子メーカー「不二家」の埼玉工場で、消費期限切れの牛乳を使ってシュークリームを製造していた不正が発覚してから十日がたちました。大阪・泉佐野工場や北海道・札幌工場での不正も明らかになり、消費者の信頼が揺らいでいます。自治体や国の立ち入り検査が進められており、原因の徹底究明が求められています。
ルールを守らず
消費期限は、急速に劣化しやすい食品を対象に設けられています。製造日を含めておおむね五日以内の期間で品質が劣化する食品に表示されます。生ものを製造・販売する企業にとって、消費期限切れの原料使用は、腐敗する恐れのある食品を売るに等しい行為です。原料に期限切れを使用するだけでなく、泉佐野工場では、シュークリームの消費期限の表示を社内基準より延長していました。また、泉佐野工場で製造したプリンを期限表示せずに埼玉工場に移し、そこで消費期限を表示して出荷していました。
つまり、不二家では、「消費期限」のルールがあってないがごとく守られていませんでした。
札幌工場や埼玉工場では、国や社内の基準を大幅に上回る細菌を検出しているにもかかわらず出荷していました。細菌検査の記録に「無限」と書かれているものもあり、しかも菌の種類は不明です。
一連のずさんな衛生管理は、食品を扱う会社としての資格が問われます。
不二家の消費期限をめぐる衛生管理は、過去七年間にわたって常態化していました。今回発覚した消費期限切れの原料使用は、昨年十月から十一月にかけての事件で、当時から社内ではわかっていました。それを二カ月も隠していました。
十二月のクリスマス商戦で洋菓子を一つでも多く売るためです。
社長は、辞任表明の記者会見で、隠ぺい体質の原因を問われて、「営業優先だとか長年のリストラによる社内の閉そく感だとか、いろいろ要因があると思う」とのべています。
食の安全や労働者を犠牲にして、企業の利益を最優先する体質が、今回の事件を招いたことは明白です。
昨年秋に発覚したさい、外部に公表されれば、「雪印の二の舞いになる」と不祥事を隠したとされていますが、逆に公表しなかったことが社会の批判を浴びて、製品が店頭から撤去される事態を招いています。食の安全を最優先に正直に公表すれば、消費者の力でずさんな衛生管理にも目が向けられ、企業も体質の改善に一歩でも踏み出すことができたのではないでしょうか。
食の安全をめぐる株主の訴訟で、裁判所が早期の事実公表や回収を怠った企業の注意義務違反を認める判決を出していることを直視すべきです。
健康被害出る前に
国民の命や健康、安全をないがしろにして、企業の利益を追求する姿勢では、消費者から信頼を得られません。ひいては、企業の利益にもなりません。消費期限切れ原料の使用が発覚した直後から、不二家製品の撤去が始まり、経営にも影響を与えた事態は、そのことを強く感じさせました。
法令順守は、企業の社会的責任の初歩の初歩です。不二家のような老舗の大手企業が、ずさんな衛生管理を長期にわたって続けていることを放置してきた国の責任も重大です。健康被害が出てからでは遅すぎるのです。