2007年1月20日(土)「しんぶん赤旗」
教育再生会議第1次報告案
いじめ・学力 解決に逆行
教育再生会議が十九日、大筋了承した第一次報告最終案は、安倍内閣による改悪教育基本法の具体化の第一歩ですが、教育問題の解決に逆行するものばかりです。
ストレス助長
いじめ対策として、「体罰禁止規定の見直し」をもりこんだことは、いじめの温床として指摘される教員による体罰を大々的に広げかねない深刻な問題です。
体罰は教育と相いれないものであり、学校教育法一一条で禁止されています。一九四八年の法務庁長官通達で(1)罰として廊下に立たせる(2)遅刻したら教室に入れない(3)用便に行かせない―も体罰として禁じました。報告案は「問題児童・生徒」を教室から排除できるように、この通達について〇六年度中に見直すことを「四つの緊急対応」の一つとしています。
いじめる側に懲罰で対応することは、いじめをますます教師から見えにくくさせ、陰湿化させる危険も強くあります。
「ゆとり教育」を見直すとして、公立学校の授業時間の一割増加を求めていることも、学力向上につながるどころか、子どものストレスを助長するものです。
すでに全国で「授業時数確保」の名目で、授業が延長され、「金曜日はくたくたで授業にならない」「始業式から授業がある」など限界となっているのが実情です。その上さらに授業時数の増を求めるのはまったく実情に合いません。
国際学力調査トップで注目されるフィンランドは中学校の必修授業七百九十六時間で、日本の八百十七時間より少なく、世界最短クラスです(OECD『図表でみる教育』〇五年版)。教員の自主性の尊重、二十人学級などの教育条件整備、そのもとで学習のおくれがちな子どもへのゆきとどいたケアなどが、“成功”のひけつといわれています。
教員給与に優劣の差をつけるのも、教育実践の要である教師集団の協力をむずかしくします。教育委員会の広域化も住民が自分たちの町の子どもを自分たちで育てるという気風を弱めるものです。
与党から批判
教育の実情と遊離し、現場にいっそうゆきすぎた競争と管理を持ち込む報告案について、文部科学省や与党からも批判があり、そうした反発を避けるため政府は第一次報告も五月に予定されている第二次報告、最終報告も閣議決定しない考えです。身内からの反対で拘束力をあいまいにせざるをえないところに、安倍首相がもくろむ「教育再生」のもろさが現れています。(北村隆志)