2007年1月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

日銀金融政策

マネーゲ−ムより家計支援を


 日銀が追加利上げの見送りを決めました。金利水準の誘導目標を、昨年七月に「ゼロ金利政策」を解除して以来の0・25%に据え置きます。

 福井俊彦日銀総裁は、十二日の日銀支店長会議などで「息の長い成長が続く可能性が高い」と景気の強さを強調し、追加利上げの機会をうかがう姿勢を見せていました。

 これに対して、安倍内閣と与党からは、「デフレ脱却後の道筋をどう描くのか説明責任を果たしてほしい」(大田経財相)、「金融政策からも経済を支えてほしい」(尾身財務相)など、利上げをけん制する発言が相次ぎました。

脅迫まがいの圧力

 とりわけ自民党の中川秀直幹事長は、利上げをするなら「政府は日銀法一九条に基づく権利を行使する義務がある」(十四日の講演)と、異常な強硬姿勢を示しました。「日銀法一九条」は、日銀の金融政策決定会合への政府側の出席者(経財相と財務相、議決権はない)が、議決の延期を求めることができる権利を定めています。

 中川幹事長は、日銀が政府の議決延期の要求を拒否した場合、日銀法を改正して日銀の「独立性」を制限することまで示唆しています。

 脅迫まがいの発言は、「いざなぎ景気」を超えたと「構造改革」の成果を誇りながら、政権が景気の行方にまったく自信を持てずにいることの表れです。

 景気「回復」が過去最長になったと政府が言っているのに、いまだに国内総生産の六割を占める家計が低迷し、世論調査では国民の八割が「回復の実感がない」と答えています。日銀短観の十二月調査でも、小売業や飲食店など家計に密接な業種の低迷が浮き彫りになっています。

 日本経済の安定的発展のかぎを握っているのは家計の回復です。しかし、家計と賃金から吸い上げて大企業に回す「構造改革」路線は、日本経済を発展軌道から大きく引き離してきました。

 はずれた軌道をいくら進んでも目的地には着きません。

 日銀の超低金利政策は、こんな「構造改革」を金融面から支える最大の政策手段となってきました。

 日銀の推計でも、一九九〇年代からの金融緩和の期間に、吸い上げられた国民の利子所得は三百兆円に上ります。この間、一年物の定期預金の金利はかつての二百分の一に下がる一方で、住宅ローンの固定金利は三分の一にも下がりませんでした。

 銀行はただ同然の金利で預金を集めることによって、また大企業は借入金利の引き下げで、ともに巨大な恩恵を享受しています。国民が本来手にするはずだった預金利子を、大企業と大銀行に付け替えたようなものです。

 利上げ見送りの理由として政府も日銀も「家計消費が弱い」ことをあげています。完全に転倒した議論であり、超低金利を続ければ続けるほど家計を冷やすのが実態です。

「錬金術」の土壌

 空前の金融緩和であふれた資金は株式や不動産の投機的な取引などマネーゲームに流れて行きました。実体経済の回復にはまったく役に立たずに、ライブドア事件や、福井総裁もかかわった村上ファンド事件に象徴されるような「錬金術」の土壌をつくっています。

 過去最高の大もうけをしている大企業、大銀行を応援する必要はありません。マネーゲームではなく家計を支え、正常な預金金利の復活を目指す金融政策への転換を求めます。


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