2007年1月18日(木)「しんぶん赤旗」
看護師不足 深刻に
日本医師会が試算
日本医師会(日医)は十七日の中央社会医療保険協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)に、「看護職員の需給に関する調査結果」を提出しました。昨年十月時点の看護師は約八十一万一千人ですが、〇八年四月には七万人増の約八十八万人が必要になる一方、現状では年平均三万人しか増えないと推計。不足が深刻化するとしています。
昨年四月の診療報酬改定で、看護師の新しい配置基準が設定され、手厚い配置(患者七人に看護師一人)の病院には診療報酬が多く支払われるようにしました。
しかし、政府が看護師総数を増やす手だてをとらなかったため、病院間で「看護師獲得競争」が起き、大病院が大量に募集をかける半面、看護師が確保できずに、病棟閉鎖に追い込まれる病院も生まれています。
中医協では、「予期しなかった問題が生じた」として、厚労相に配置基準の要件見直しを求める建議を提出することを確認しました。新しい配置基準の後退につながる案も浮上しています。
日本看護協会からは、新配置基準で「ケアにあたる時間が増えた」「超過勤務が減少した」と評価する声が増えた調査結果が報告されました。
大幅増員へ本腰入れて
解説
「七対一」の看護師配置基準は、患者や医療団体が求めてきたもので、世論と運動の成果です。「手厚い看護」をすすめるために、さらに広げることが求められます。そのためには、看護師の大幅増員が不可欠です。
中医協では、看護師不足に対する「改善策」として、新配置基準を「看護の必要度の高い病棟」に絞る案が検討されていますが、これは「手厚い看護をすべての病棟に」という点からすれば逆行であり、とるべき方策ではありません。
現在の「看護師獲得競争」といわれる状態が生まれた根本は、〇六年四月の診療報酬改定がマイナス3・16%という過去最大の引き下げ、医療費カットをおこないながら、現場に「手厚い医療をおこなうこと」を押し付けた矛盾によるものです。これを打開するには、医療費抑制を続け、「看護師は現状で足りている」という政府の姿勢を変えさせることです。(宮沢毅)