2007年1月13日(土)「しんぶん赤旗」
主張
「事務所費」疑惑
これでは大臣の資格はない
スキャンダルまみれの安倍内閣に、政治と金をめぐる閣僚の新たな問題が表面化しました。
伊吹文明文科相、松岡利勝農水相の「事務所費」疑惑です。
資金の透明度ゼロ
家賃のかからない国会の議員会館を政治団体の「主たる事務所」としながら、数千万円もの高額の事務所費を政治資金収支報告書に記載していました。一般紙も「共産党の党機関紙『しんぶん赤旗』が問題提起していた」(「日経」十一日付)と指摘する通り、本紙一月三日付一面トップ記事が疑惑に火をつけました。
政治団体が年一回提出することが義務付けられている政治資金収支報告書には「事務所費」という支出項目があります。内訳は▽地代・家賃▽固定資産税▽火災保険料▽電話代▽切手代などに限定されています。
「政治活動費」なら五万円以上の支出には領収書の添付が求められますが、事務所費は総額だけの報告で、明細の記載や領収書の提出が求められません。闇の支出を紛れこませられるところがつけめです。
伊吹氏の二つの政治団体は二〇〇五年に、四千七百万円の事務所費を計上しました。家賃もかからないというのにいったい何に使ったのか。
伊吹氏側は、地元・京都市や都内の事務所の賃料を払った、議員などの会食費も年間五―六百万円を使ったと説明しています。語るに落ちるとはこのことで、政治活動費として報告すべきはずの飲み食いの金まで、事務所費にくわえていたのです。活動実態がない政治団体が巨額の事務所費を計上していた問題も浮かんでいます。伊吹氏の政治資金収支報告は、透明度ゼロです。
伊吹氏は十日夜に急きょ記者会見して「法律に違反した記載というものはしていない」とのべました。伊吹氏は政治資金規正法を読んだことがあるのでしょうか。
同法は基本理念で「政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨と」するとのべ、資金をガラス張りにして、国民の不断の監視と批判を仰ぐとしています。
“違法でなければなにをやってもいい”という伊吹氏の規範意識は論外ですが、不明朗な経理をしながら「違法ではない」と強弁するのでは、大臣の資格を欠きます。
松岡農水相も〇五年に、三千三百万円余の事務所費を計上しています。松岡氏は「架空のものだとか、付け替えというのは一切ございません」とのべ、昨年末に事務所経費の付け替えが問題になり辞任した佐田玄一郎前行革担当相の問題とは「全然違う」と強調しています。
松岡氏は、詐欺まがいの手法で全国から百三十億円以上の出資金をかき集め出資法違反で摘発された会社の関連団体に百万円分のパーティー券を買わせながら、報告しなかった問題も未解決です。この会社がもくろんだNPO法人設立への口利き疑惑をめぐり、当初は「関係ない」と説明しながら、事実をつきつけられると秘書の働きかけを認めた「食言」の実績もあります。松岡氏の弁明は国民からみれば、逃げ口上でしかありません。
徹底した解明を
問われるのは両氏を大臣にした安倍首相の責任です。首相は「法にのっとって適切に処理しているとの報告を受けている」と、早々に二人の責任を不問にする態度ですが、とんでもありません。政府は、国民の前に事実を明らかにすべきです。