2003年1月16日(木)「しんぶん赤旗」
二〇〇三年春闘はいよいよ本番です。小泉内閣の「経済改革」の破たんによる深刻な経済危機がすすみ、賃下げの横行、無法なリストラ・人減らしが吹き荒れているもとでたたかわれます。
「雇用維持を最優先に考えれば、賃金水準の引き下げを迫られるケースもある」。日本経団連の奥田碩会長は十五日、講演でこう語りました。さらにベースアップは「およそ不可能」と断じました。三菱重工業の西岡喬社長にいたっては「賃下げでのぞみたい」と表明しました。財界はあげて「ベースアップは論外」「定期昇給の凍結・見直し」などの“賃下げ”の大合唱をくり広げています。
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「雇用維持を最優先」というのは、とんでもないごまかしです。大企業各社は、リストラで常用雇用を四年連続で計百十四万人も削減するなど、大規模な人減らしを強行してきました。
〇三年も、主要三百社の約半数が「人員余剰」があるとし、うち六十九社が〇五年度までに十一万一千人を削減する計画といいます。(「日経」〇二年十二月二十四日付)
小泉内閣の不良債権処理の「加速」によって、厚生労働省の試算でも、新たに六十五万人が職を失うといわれています。史上最悪水準を続ける雇用・失業情勢をいっそう悪化させます。
大企業は、不況で売り上げが伸びなくてもリストラ効果で利益を拡大しています。九月期中間決算は軒並み増益となり、〇三年三月期は「V字回復」が予想されるほどの大もうけぶりです。
内部留保も、リストラ費用の前倒しや新国際会計基準の変更で減少したものの、百四十五兆円(資本金十億円以上の五千四百七十二社)もため込んでいます。(表@)
労働者・国民のくらしはいっそう深刻化しています。厚労省が昨年末に発表した毎月勤労統計調査の十一月分結果は、実質賃金が1・2%減と再び減少に転じました。基本給に残業手当などを加えた定期給与は二十八万一千百四十九円で、前年同月比0・6%と二十三カ月連続の減少です。
総務省が発表した十一月の勤労者世帯の家計調査でも、一世帯あたりの消費支出は三十万七千五百八十五円となり、実質で前年同月比3・4%減と二カ月連続で減少し、下落幅は昨年、最大となりました。
賃金がその国でどれだけのものが買えるかという購買力平価で比較すると、日本の賃金はアメリカの69%、フランスの76%、ドイツの56%にすぎません。(表A)
財界・日本経団連がいう「日本の賃金はトップレベル」どころか、低賃金構造は歴然です。
今春闘のなかでもう一つの焦点が労働法制改悪問題です。労働基準法の根幹である一日八時間労働制が根本から破壊される大改悪が提起されています。解雇の自由を拡大し不当な解雇でも金で解決するルールづくり、ホワイトカラー層を中心に際限のないただ働きを押しつける裁量労働制の拡大、派遣労働の製造業への解禁など不安定雇用の拡大―と労働者の権利を根底から脅かす全面改悪をねらって通常国会に法案を提出する予定です。
財界・小泉内閣の攻撃に対し、「国民総決起の春闘を築こう」と全労連や国民春闘共闘委員会は十日、四十七都道府県すべてで出足早く宣伝行動に立ち上がりました。熊谷金道全労連議長は、財界が法人税減税を求める一方で、消費税大増税をこぞって打ち出している身勝手を批判。“雇用を守るためには賃上げなど論外”という財界側の主張に、リストラで大量人減らしを強行してきたのが大企業であり、それを理由に賃金抑制は許されないと断じました。
全労連は、賃上げ・賃金底上げや雇用確保など切実な要求実現と結び、アメリカのイラク攻撃反対、有事三法案阻止、庶民増税と社会保障の負担増の中止を求め、職場・地域から国民各層との共同のたたかいを広げようと奮闘しています。