日本共産党

2003年1月11日(土)「しんぶん赤旗」

国立大法人化

移行前提に準備強要

東大図書館 資産目録づくり


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東京大学の総合図書館(東京都文京区の本郷キャンパス)

 文部科学省は、全国九十九の国立大学を法人化することが法律で決まってもいないのに、二〇〇四年度からの移行を前提にして実質的な準備を各大学に押しつけています。たとえば国から法人へ「資産」を引き継ぐための目録づくり。東京大学(佐々木毅総長)の付属図書館では、蔵書すべての目録をつくる作業に、アルバイトを雇うなどして追われ、現場からは「法にもとづかない作業は中止すべきだ」との声があがっています。

 東京大学の学部・研究科や研究所の付属図書館に求められているのは、今ある図書原簿(書名、受け入れ日、金額、数量などを記載した台帳)を整備し、OCR(光学式文字読み取り装置)で読みとり電子ファイルを作りそれを「承継目録」とする作業です。

 原簿の整理は通常業務の範囲内ですが、その後の電子ファイル化は法人化しなければ必要ないもの。法人化は大学関係者の中にも反対が多く、現在法案が国会に提出もされていない段階です。職員からは「法的な根拠のまったくない作業を職員に課していいのか」と批判の声があがり、東大職員組合は、総長などに「法に基づかない付加労働を直ちに中止する」よう申し入れています。

 東大関係者によると、十一月二十六日開かれた同大の図書館業務連絡会(付属図書館の掛長を集めた事務レベル会議)で大学当局は、「承継物品目録を、先行して法人化したところでは作らなくて良いとされているが、省力化の方法を考えて文科省と相談して作ることを決めた。作業は継続する」と説明しました。

バイト雇い

 この作業の事務量は膨大です。学部・研究科は二十四年分、研究所は創立以来百年分にもわたる原簿から不明図書を抹消するなどの整理を二〇〇三年三月中旬までに行うことを大学から指示されています。通常の人員ではできず、アルバイトを雇って対応したところも出ています。すでに法人化された旧国立試験研究機関の中には、図書を「資産」と扱わず、承継目録を作らなかった所もあります。仮に国立大を法人化するとしてもこの作業が必要かという疑問の声も職員の中で出ています。

 全国の国立大学の蔵書は約九千二十一万冊。うち八百万冊を有する東大では、電子ファイル化の費用は数千万円と言われています。


国会無視の暴走

 石井郁子衆議院議員の話 法律ができていないのに、文科省が規定事実のように進める。こういう国会無視、行政サイドの暴走は絶対認められない、との私の質問に、工藤高等教育局長は、「私の発言をもとにご心配、混乱させてまことに申し訳ない…対応等を含め、注意しながら進めてまいりたい」(八月七日、衆院文部科学委員会)とのべたのです。

 これは、大学への文科省の介入はできないことを意味し、まして法案が不成立になるかもわからないのに法人への移行の作業を押し付けるなどは法治国家にあるまじきことです。


解説

強引な法人化スケジュール

 今回の脱法的な法人化作業の背景には、文科省の決めた強引な法人化スケジュールがあります。多大な人員と設備をかかえる国立大学などが組織形態を変えるには、「少なくとも一年半くらいの期間が必要」(大学関係者)。ところが文科省が国立大学協会に示した「作業スケジュール(案)」(昨年十一月十四日の総会)は、二〇〇三年五月後半に「国立大学法人法(仮称)」成立、翌四月には「法人」移行とされ、わずか十一カ月足らずの期間しかありません。そのため大学側は「今から法人化作業をしないと間に合わない」と浮足だたされています。


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