2003年1月9日(木)「しんぶん赤旗」
【ハイデラバード(インド)8日小玉純一】当地で開かれた「アジア社会フォーラム」は七日閉幕し、六日間の日程を終えました。期間中には「グローバル化(地球規模化)」の諸問題と対案の検討を中心に、八つの全体会議、三百余の分科会がもたれ、各国から三百団体、二万人近くの人が参加しました。
閉会集会で、ナラヤナン前インド大統領は「アジアは歴史的に帝国主義、植民地主義とたたかってきました」「アジア社会フォーラムは、新たな帝国主義とグローバル化への反撃であり、搾取された人々のためのもう一つの世界を求めるたたかいです」と述べました。
昨年二月ブラジルで開催された「世界社会フォーラム」のウィタカル事務局員は「アジア社会フォーラムの大成功をお祝いします。グローバル化によって搾取を強める資本主義とたたかう人たちの連帯のグローバル化が可能です。新しい世界をつくることは可能です」と述べました。
集会後、五千人以上の人たちが地元ハイデラバードの非政府組織(NGO)のよびかけたデモに参加し、それぞれの要求を掲げて市内を行進しました。
インドのバンガロールからきた自然科学系の研究所で働くチャタジーさんは「それぞれの地域の運動が一堂に会して、互いにパワフルになってうれしいね」と話していました。
一月二十三日から二十八日まで、第三回「世界社会フォーラム」がブラジルのポルトアレグレで開かれます。
インドのハイデラバードで開かれた「アジア社会フォーラム」では、全体会議でも分科会でも、活発な討論が交わされました。その一端を紹介します。(小玉純一)
平和の精神 |
全体会議「平和と安全保障」では、十人のパネリストが発言。日本からは広島市在住の被爆者・松原美代子さん(70)が被爆体験を語りました。また元国連大学学長の武者小路公秀さんは発言のなかで日本政府の米軍協力を批判しました。
米国のワシントンから参加した非政府組織(NGO)・グリーンピースのクレメンツ氏は、米国の核戦略について述べ、「米国の国際法違反に抗議しよう」と訴えました。
韓国の平和をつくる女性の会のジョン・スー・キムさんは、韓国での米兵による女子中学生れき殺事件と米兵無罪判決後の運動の高揚を紹介しました。「ろうそくデモに出るたびに悲しくなります。零下の街頭で子どもからお年寄りまで参加しました」「米国の朝鮮半島支配にたいするたたかいに連帯を」と述べました。
◇
公正な世界を目指す国際運動のチャンドラ・ムザファールさん(マレーシア)は、非同盟運動に言及。「非同盟運動は、米国とその同盟諸国に同盟しないようにするべきだ」「二月にマレーシアで開かれる首脳会議に向けて、非同盟運動が連帯と社会正義、平和の精神をよみがえらせるべきだ」と述べると会場から拍手が起こりました。
七日の閉会集会ではナラヤナン前インド大統領が「非同盟運動はまだまだやるべき仕事がある。インドは非同盟を強めるべきだ」と述べました。
フォーラムではその他、イラクやパレスチナ人民への連帯、インド・パキスタン関係なども討論されました。
経 済 |
「対案と人々の運動」をテーマにした討論では、八人の発言者が熱弁をふるいました。
タイのバンコクに本部を置くフォーカス・オン・グローバル・サウスのウォルデン・ベロー理事長は、「現在の国際通貨基金(IMF)など極度に中央集権化した国際機関は廃止するか大幅に権限を縮小して、地域社会が独自の発展の道を追求することができるような新しい国際システムづくりが必要」と述べました。
そして、「地域社会や各国の機関がこれら国際機関と匹敵する力をもつようになり、相互にチェック機能を働かせてバランスをとり、各地域社会が自らの発展の戦略を選べるようにするべきだ」と主張しました。
◇
インド共産党(マルクス主義)政治局員のシタラム・イェチュリさんも発言。「IMFなどの構造が、少数の国の利益を優先し他のすべての国と人民を犠牲にしている、このようなグローバル化に反対する」と述べました。そして現在のグローバル化の悪影響を止める一致点で団結すること、自分たちの代表を国会に送り、政治運動と社会運動を結びつけることを訴えました。
◇
全インド人民科学ネットワークのトーマス・アイザックさんは、左翼戦線がこれまで何度も政権を担当してきたケララ州の経験を報告。「人々に教育・医療は行き渡ったが生産力が低いなど多くの課題を抱えている。そのなかで住民の行政への直接参加が重要となっている。わが州では、住民が水資源の管理や学校の運営にあたるようにし、パンチャヤト(自治組織)に少なくない予算をまかせ、意思決定に人々が参加するようにした。三百万人がこのための会議に参加している。州政府に対する草の根からの民主主義的圧力と、新たな発展の文化が生まれた」
アイザックさんは「選挙で州政府が代わってもこの参加型民主主義は変わっていない」と述べました。