日本共産党

2003年1月6日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

若者のパワーが変化をおこす


 「子どもたちは、世界を変えられる」と世界中に訴えてきたカナダのクレイグ・キールバーガーさん(20)。児童労働に反対する非政府組織(NGO)「フリー・ザ・チルドレン(FTC)」の創設者です。昨年末来日し、各地で講演。「一人ひとりが力を発揮すれば、世の中を変えていくことができる」とよびかけました。主な内容を紹介します。


児童労働反対のNGOを創設

キールバーガーさん講演

 僕は七年間で四十カ国を回り、虐待や戦争のまきぞえになっている子どもたちを見てきました。学校にも行けず、ゴミの山をあさっている子、注射針を素手で分類している子……。少しでも仕事を怠るとぶたれ、虐待を受けます。

学校の存在も知らない子が

 フィリピンのマニラ近郊には、ゴミの山をあさっている子どもたちがいます。そこで八歳のジェフ君に会いました。僕は「学校に行ったことはあるの?」と尋ねました。ジェフ君は隣にいた父親をしばらくながめた後、「学校って何?」と聞きました。学校に行ったことがないジェフ君は、学校の存在すら知りませんでした。

 いま世界は、イラクと戦争をするかしないかで騒いでいます。しかし、戦争によって苦しむのは子どもです。

 過去十年、戦争によって命を落とした子どもたちは二百万人います。家を失い、ホームレスになった子は一千二百万人といわれています。世界の四十の地域でいまだに紛争が続き、そこでは少年兵も使われています。

 旧ユーゴスラビアの難民キャンプで、十三歳の男の子に出会いました。彼は、生まれてこのかた「戦争のない世界」を知らないのです。彼に、「将来は何がしたいの」と聞きました。彼は、ぽかんとした顔で僕を見ました。もう一度、詳しく、「僕なら医者になりたいと思ってるんだけど」と聞きました。彼は、「爆弾が落ちなければ、医者なんて必要ない」と答えたのです。

 毎日、三万三千人の子どもが戦争で命を失っています。昨年全世界で使われた軍事費は一兆ドルにもなります。一方、すべての子どもたちに教育を受けさせるには、百二十億ドルで済みます。世界中の政治的指導者は、戦争ではなく教育にお金を使うべきです。

 「FTC」は、僕が十二歳のときにつくりました。「子どもが自由になること」がその意味です。それは児童労働、貧困、搾取からの解放(フリー)を目指し、さらには「子どもには力がない」という発想をも取り払ったと思います。

 結成後、七年間で「FTC」は大きくなり、国際的ムーブメントになりました。三十五カ国に支部があり、三つの柱で活動しています。

 (1)「子どもには、児童労働や紛争ではなく教育を」ということ(2)平和を築くこと(3)リーダーシップを発揮すること――です。

 日本の若者や「FTCジャパン」も手伝ってくれています。できることはたくさんあります。いま大事なのは、“若者がいかにリーダーシップを発揮していくか”です。

 日本の若者は、世界のどの国の子どもより勤勉です。そして、その多くの人が、「自分たちに何かできないか」と模索しています。“生きている意義”を見つけたいと思っています。自分を生かすことで、他の子どもたちの役に立ちたいと考えています。

一人ひとりが力発揮すれば

 若い人の持つパワーを大いに活用してほしいと思います。若者のエネルギーが変化をもたらし、平和をもたらします。

 カナダや日本、世界中の子どもたちが一丸となって行動すれば、世界の貧困、児童労働、戦争、暴力をなくせる。一人ひとりが力を発揮すれば、世の中を変えていくことができるんです。


 クレイグ・キールバーガーさん 一九九五年、新聞記事で児童労働の存在を知り、クラスメートと「FTC」結成。東南アジア、アフリカ、南米などを回り、児童労働の実態について調査、援助をおこなう。三年連続ノーベル平和賞候補。昨年、尾崎行雄記念財団の咢堂賞を受賞するため来日。著書に『僕たちは、自由だ! クレイグ少年の南アジア50日間の冒険記』(本の泉社刊)


「しかたない」から「あきらめない」へ

芝信金の昇格差別を是正

松尾由美子さんと語る

 ことしは、「人生のキラリ☆」を探してみませんか。はじめの一歩は知ることから。悩んで探して見つけたもの、それはきっと一生の宝です。

 「キラリ☆」の経験者松尾由美子さん(55)は、こんなふうに話します。「自分の人生を大事にするには、大きな声をあげていかないとね」

 松尾さんは芝信用金庫支店の窓口で働いています。「芝信」は長い間、男女で昇格に差をつけていました。それを、松尾さんは仲間といっしょに是正させることができたのです。

 「同僚男性は次々に係長、課長と昇格していくのに、私はずっとヒラのまま。私だって、もっと仕事をできるようになりたいし、えらくもなりたい、お金もほしいって思っていたの」と振り返る松尾さん。男女の年収格差は最大四百万円にも広がっていました。

 松尾さんたち女性職員十三人は三年間も悩んだ末、「がまんしていたって、現実はよくならない。失うものは何もないんだ」と一九八七年、裁判に訴えました。

 裁判をおこす前から、芝信用金庫従業員組合員としてたたかっていました。「その当時も、第二組合員に『二階から飛び降りろ』なんて言われたりしたわ。でも、彼女が悪いんじゃない。そういうふうに会社の雰囲気がなっていたの。悔しいけど、やめてしまえばおしまい。やめちゃだめだって頑張ってきたのよ」

 昨年十月、最高裁で勝利和解。金庫に二億二千三百万円を支払わせ、松尾さんは課長職に昇格しました。

 「私たちは差別をなくす懸け橋になれたんじゃないかしら。イヤだと思うことにカギをかけずにおかしいことはおかしいと言うのが大切ね」

どう思う?

 松尾さんは昨年十二月、全日本学生自治会総連合(全学連)などが主催する全国学術文化集会(十二月祭)で、自分の体験を話しました。学生たちはどう感じたのかな?

 「十年以上もたたかっているなんてすごい」と日本福祉大学四年生の平沢慎さん(22)。就職が決まり、今春から社会人一年生。「社会の矛盾について『なんでこうなるのか』を考えていく学習が欠かせないですね」

 東京都立大学二年生の波瀬真理さん(20)=仮名=は、「不屈の精神を受け継ぎたい」。サークルのコンパで先輩男子学生にお酌を強要されるのがとても嫌でした。「でも、がまんしちゃう自分が腹立たしかった。不当なことには声を上げる生き方をしたい」

 法政大学一年生の大河ゆりさん(18)=仮名=は法律を専攻。でも、自分が本当に学びたい学問はなんなのか、悩んでいました。話を聞いて「生きる権利が大切にされなきゃ! 人権を学んでいこうって決めました」。

 三人でしばし歓談。

 ゆり 「松尾さんはいじめや嫌がらせを受けても『仲間』がいるからと頑張れた。やっぱり仲間がいると頼りになるよね」

 真理 「大学には、『どうせ変わらない』なんていう人もいる。けど松尾さんの『失うものは何もない。だったら声をあげよう』という話に共感する。男女とも、自分の能力に応じた仕事ができる社会が望ましいよね」

  「僕は学生自治会活動をずっとやってきた。学費の値上げを抑えさせたこともある。やればできるんだと思う」

 ゆり 「(『やればできる』と思えない人がいるのは)学校とかで自分の権利を教えられてこなかったからだと思う。おかしくても『こんなもんなんだろう』と思っちゃう。インターネットやテレビなど、情報はあふれているんだけど、本当に必要な情報にはたどり着けていない」

 真理 「(権利に)関心を持つきっかけも与えられてないよね」

  「こういうこと(松尾さんの経験)を後輩たちにも伝えて、仲間を増やしたいよね。僕も一人で考えてたらけっこう落ち込むほうだし」

 ゆり 「あたし一人が声をあげてもダメだけど、少しずつじっくり、仲間を増やしていきたいな」


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