2003年1月5日(日)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が四日の党旗びらきでおこなったあいさつの大要はつぎのとおりです。
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みなさん、二〇〇三年、あけましておめでとうございます。CS通信をご覧の全国のみなさんにも、新年にあたっての心からのあいさつを申し上げます。
今年――二〇〇三年は、わが党にとって正念場の年となります。いっせい地方選挙が間近に迫っています。解散・総選挙も、いつあってもそれにそなえる構えでのとりくみが必要となる年であります。
わが党がきたるべき政治戦で、勝利者となる条件はあるでしょうか。私は、それをつかむうえで、新年をむかえた世界と日本の情勢の特徴を深いところからとらえることが、いまきわめて大切だと思います。
情勢をみるときに、「よい面があるが、悪い面もある、だからがんばろう」というだけでは、ほんとうに情勢をつかんだことになりません。これでは、ほんとうの力もわいてきません。
私は、昨年の「党旗びらき」のあいさつで、「激動の時代には、何が歴史の本流で、何が逆流なのかを、しっかり見きわめることが大切だと思う」とのべました。
それから一年がたちました。この一年をふりかえってみますと、世界でも日本でも、歴史の本流は、逆流とのせめぎ合いのなかでの紆余(うよ)曲折はあっても、深いところで力づよく成長しつつあることが、明りょうになってきます。
そして、日本共産党が、歴史の本流に立ち、それを促進する党として、いよいよその値打ちを輝かせていることが、浮かび上がってきます。
いま情勢をみるときに、このカナメをしっかりつかむことが大切であります。これを確信をもってつかみ、わが党が新しい年に、元気いっぱいの姿で、党の値打ちを、国民的規模で語りに語りぬいていけば、必ず勝利への道は開かれる、この気概をもって政治戦に立ち向かいたいと思います。
世界をみますと、この一年間で大きな深い変化が起こっていることがわかります。
昨年の新春を思い起してみますと、私たちは新しい年を、米軍がアフガニスタンへの報復戦争で圧倒的な軍事力をみせつけて、タリバン支配を崩壊させ、いわば「勝利」の凱歌(がいか)をあげているなかでむかえました。「二〇〇二年は戦争の年になる」というブッシュ大統領の不吉な発言が、世界に重苦しく響き、世界は強大無比な軍事力をもつ米国の覇権主義によって、覆いつくされるかのようにみえました。
私たちは、あの報復戦争という手段に厳しく反対しましたが、世界の国でこの戦争に正面から反対をつらぬいた国は少数に限られていたことも事実でした。
この「勝利」に増長した米国は、年初めから、その覇権主義をとめどもなくエスカレーションさせていきました。昨年一月の「悪の枢軸」発言、同じ一月の「核態勢の見直し」報告、八月の「国防報告」、九月の「国家安全保障戦略」などで、米国は先制攻撃、さらには先制核攻撃を世界に宣言し、その矛先を公然とイラクにむけ、戦争準備にとりかかりました。
しかし、そのなかで、世界の新しい平和秩序をもとめる流れが力づよく立ちあらわれてきました。欧州でもアジアでも、世界各地で、「イラク攻撃反対」の大規模な集会がわきおこりました。戦争が起きる前から、こんな大規模な反戦のたたかいが国際的規模でわきおこったのは、未曽有のできごとであります。それは、各国政府の動向にも大きな影響を与え、一時は国連を無視して先制攻撃の道をひた走ろうとしていた米国の暴走を、ともかくもおしとどめ、国連の枠内での平和的解決の可能性に道をひらく国連安保理決議一四四一を全会一致で採択する、こういう新しい局面をひらく力となって働きました。
日本共産党は、この平和の流れを促進するために、国際政治の舞台で、各国政府との対話と共同に力をそそいできました。八月末の不破議長の中国訪問、十月の党代表団の中東諸国の歴訪、十二月の党代表団の南アジア諸国の歴訪など、野党外交の新しい展開のなかで、私たちはこの問題での対話に力をそそぎ、訪問したどの国の政府とも「イラク攻撃反対」での一致を確認してきたことは重要な成果でありました。
私たちが昨年これらの訪問にとりくみ、大きな感慨をいだいたことがあります。それは、これらの国々の多くが、一昨年の報復戦争のさいには米軍の行動に、心ならずも賛同を与えたり、その行動に協力をした国だということであります。たとえば私が年末に訪問したパキスタンは、対アフガン戦争において、無理やり「前線国家」――すなわち、米軍の戦争の最前線の基地とされた国であります。インドも、対アフガン戦争では米軍に基地を提供した国であります。そういう国もふくめて、また一般には「親米」とみなされている中東の諸国をふくめて、「イラク攻撃反対」では、当然のことのように一致がえられました。
いま、世界の圧倒的多数の国が、一方的軍事力の行使に反対し、国連の枠内での平和解決をもとめています。世界の平和秩序をもとめる流れが、おさえがたい勢いで力づよく広がっています。米国の一国覇権主義の横暴は、国際政治の場で、大局的には孤立を深めつつあります。
この一年間をふりかえっても、歴史の歯車は深いところでちゃんと前に向かって進んでいるということが、確認されるのではないでしょうか。
こうした世界の流れにてらしますと、日本政府、小泉政権のとっている態度が、いかに異常なものかは歴然とするのではないでしょうか。ここには進歩というものがまったくみられません。世界に目をむけた視野の広さも、まったくありません。
小泉政権のとっている態度は、米軍による戦争を「既定事実」とみなして、その戦争に日本がどう「対処」するか、どう「協力」するかという惨めな対応に終始するというものです。
この政権は、世界とアジアの多くの国が、平和的解決の可能性を追求している最中に、イージス艦をインド洋に派遣し、戦争開始の背中を押す暴挙を強行しました。さらに、戦争を想定した「米軍支援」の新規立法、さらには「戦後処理」を想定した新規立法まで計画していることが伝えられています。
この行動は世界の心ある人々の批判を呼び起こしています。「なぜイージス艦をこの時期に出すのか」。これは南アジアの諸国の政府と対話したさいにも聞かれた声でした。世界が大きく動いているときに、一人日本政府だけが、突出した対米従属ぶりをさらけだしている。これはまことに情けないかぎりではないでしょうか。
米国による対イラク戦争の危険はなお、きわめて深刻です。この問題の行方を、われわれは予断をもっていうことはできません。もちろん私たちは戦争不可避論に立つものではありません。平和的解決の可能性を最後まで追求して奮闘します。
しかし、この問題がどのような帰すうをたどろうとも、この一年間で広がった平和をもとめる世界の諸国民、諸国家の動きが、二十一世紀の世界の未来に生きることは間違いありません。そして、そうした平和の流れを促進するために、日本共産党がおこなっている働きかけの値打ちも、未来に生きることは疑いないと確信します。
みなさん、そういう歴史を動かす仕事にとりくんでいる党の値打ちをおおいに語ろうではありませんか。平和を守るたたかいを日本でも大きくわきおこす先頭に立ってがんばりぬく決意を、新年にあたって固めようではありませんか。(拍手)
国内の動きでも、この一年間の変化は、大きく深いものがあります。
昨年の「党旗びらき」を思い起こしてみますと、まだ「小泉旋風」と呼ばれた政治的突風が吹き荒れていた時期でした。この古い逆流の政治を、日本を根底から変える未来ある流れであるかのように描く偽りが、なお広くばらまかれていました。「小泉政治」はすでに随所にほころびや破たんをみせていましたが、内閣支持率はなお大変高い水準にありました。
それから一年がたちました。ここでも、状況は大きく変化しました。なによりも「小泉政治」は、“民のかまど”を守る仕事、すなわち経済政策において、その破たんがだれの目にも明らかになっています。この一年間に、この内閣が掲げた「看板」はどれもすっかり破たんしてしまいました。
たとえば、「財政構造改革」では、「国債発行額を三十兆円以内におさえる」ということが、ともかくもこの内閣の「看板」でした。しかし、「三十兆円」という「看板」は、無駄づかいの削減のためには使われず、社会保障をはじめ国民生活むけ予算の削減のテコとして使われただけでした。
その結果、不況がいっそう深刻になり、税収がさらに落ち込むという深刻な悪循環が進みました。来年度予算案では、税収が五兆円も落ち込むなかで、「三十兆円」の「看板」はぼろぞうきんのように打ち捨てられ、当初予算案の段階から国債発行額はなんと三十六兆円と史上最悪の水準に達しています。
また「経済構造改革」では、「不良債権の早期処理」ということがこの内閣の最大の「看板」でした。二年から三年でその「処理」を「終了」するということがともかくもこの内閣の「公約」でした。しかし、内閣発足からもう二年近くたちます。ところが、「終了」どころか不良債権は増加する一方であります。無理やり中小企業をつぶす道が景気悪化、いっそうの不良債権の増加という悪循環をつくっているのです。
「痛みに耐えれば未来がある」といって国民におしつけたあらゆる「看板」が破たんするもとで、この内閣に残されているのは、無展望にただひたすら国民に耐えがたい痛みをおしつけることだけであります。
社会保障と庶民増税で今年度から来年度にかけて四兆円もの巨額の負担増をおしつける。中小企業を無理やりつぶし、日本の金融システムそのものを根底から破壊する「不良債権処理の加速」を強行する。むきだしの形で、痛みをおしつけることだけであります。
少なくない国民が「痛みに耐えれば未来がある」という言葉にいちるの望みを託しましたが、もはやその先には暗闇しかみえない。光はもはやみえません。
さらに、財界の目先の利益にだけ奉仕する政治が、財界を増長させ、暴走をつくりだしていることも重大であります。日本経団連は、一月一日に、二〇二五年までの日本の国家像を示す「活力と魅力溢れる日本をめざして」と題した「提言」なるものを発表しました。この提言では、(1)二〇〇四年度から消費税の税率を毎年1%ずつ引き上げて16%にする、(2)法人税は大幅に引き下げる、(3)そしてこれらの政策に「賛同」する政治家に企業献金をおこなうことなどが公然とのべられています。とんでもない「お年玉」であります。
カネの力で政治をゆがめる――これこそ昨年、国民から指弾された最大の問題ではありませんか。「改革」というなら日本の政治で真っ先に改革されなければならないことではありませんか。ところが、企業献金をテコにして、こともあろうに消費税の引き上げをはかろうというのであります。この暴挙は絶対に許すわけにはいきません。
こうしたもとで国民の動向にも深い大きな変化が起こっています。年末年始の新聞各紙の投書欄を見ますと、痛みをおしつけるだけの政治に対して怨嗟(えんさ)に近い悲痛な声があふれています。「弱者しぼって借金付け回し」「道路やダムに増税分ゆくの」「釈然としない年金引き下げ」「増税ばかりで国民無視とは」などの表題の投書が紙面に並んでいます。ここからは、“我慢ももはや限界”という切羽詰まった気持ちが伝わってきます。「小泉政治」の正体は、広く国民にいま見抜かれつつあります。
日本共産党は、小泉内閣が発足した当初から、「小泉旋風」に正面から立ち向かい、この古い流れをあたかも新しい流れであるかのように偽る動きを厳しく見抜き、その悪政と正面から対決してきた党であります。
「小泉政治」に対置して、経済危機からくらしを守る「四つの緊急要求」を提案し、その実現のために力をつくしている党であります。
全国の地方自治体で、悪政から住民を守り、福祉とくらしの充実をもとめて献身的に奮闘している党であります。
その党の姿をみて、いまふたたび、「時流に流されない党」「ぶれない政党」などの評価が、識者からも寄せられるようになっています。わが党の先駆的な値打ちは、「小泉政治」の無惨な破たんと対照的に浮き彫りになっています。
みなさん、新しい年に、この党の値打ちをおおいに語り、くらしを守る“たたかいの組織者”としての真価を発揮して、ここでも力をつくし、奮闘しようではありませんか。(拍手)
政党状況はどうでしょうか。これもこの一年間で大きな変化が起こりました。
「自民党をぶっ壊す」とさけんで登場した小泉政権が、たしかに「ぶっ壊し」つつあるものがあります。それは、自民党の従来の支持基盤であります。そのことは、橋本元首相が「小泉君は自民党をつぶすというが、自民党支持組織はもう半分くらい壊れている」と、認めているとおりであります。
そのことはこの一年間、目に見える形でも劇的に進行しつつあります。昨年末にも、印象的なニュースが二つありました。
一つは、日本医師会など医療関係四団体の会長さんが共同で、「サラリーマンの三割自己負担の実施凍結」「高齢者の自己負担の軽減」をかかげて、東京・銀座などで宣伝活動をおこなったというニュースであります。
いま一つは、全国町村会と全国町村議会議長会が、共同で、この二月に「町村自治確立総決起大会」を開催するというニュースであります。この大会は、「合併をおしつけるな。小規模自治体をきりすてるな」などをかかげ、全国二千五百四十二町村の町村長、議長が一堂に集まる、画期的な数千人規模の集会になるということであります。
これらはどちらも、従来は、選挙のさいに自民党が頼りにしていた組織であります。それが、こうやって公然と反旗をひるがえしているのであります。この動きは、決して偶然ではありません。自民党政治のもとでは、もはや未来は保障されていないからであります。従来の利権や利益誘導のしめつけは、もはや通じなくなっているからであります。そして、真剣に医療を考え、真剣に地方自治を考えれば、もはや自民党政治ではやっていけなくなっているからであります。「自民党政治にはいよいよ愛想がつきた」――こうした流れが広くひろがっています。しかも、こうした人々がかかげる要求は日本共産党の政策とぴったり重なり合いつつあることも、うれしいことではありませんか。
みなさん、こうした変化しつつある人々の思いを受けとめることができる政党が日本共産党以外にあるでしょうか。
公明党は、自民党の支持基盤の崩れを創価学会の票で支える役割を果たそうとしています。しかし、反共だけが「存在意義」の党が新しい政治を模索する広範な人々の気持ちを受けとめる能力も資格もないことはあまりにも明りょうではないでしょうか。
保守新党の結成の動きは、日本の政党と政治家が自己保身と政党助成金に深くむしばまれ、退廃を強めている姿を象徴的に示すものとなりました。訴えるべき政治戦略をもたず、党利党略、個利個略、右往左往、軽佻(けいちょう)浮薄な姿をさらけだしている政党と政治家の姿は、多くの国民の軽べつの対象となっているだけであります。
こうした新しい政党状況のなかで、保守をふくめた広大な無党派の人々とわが党との、これまでにない大きな共同の新しい条件と可能性が目の前に広がっています。この人々とおおいに胸を開いて対話し、ともに新しい日本の進路をみいだす、開拓者の気概を持った奮闘が、わが党にもとめられています。
国民とともに新しい政治をおこす力と資格を持った唯一の党であるという点でも、わが党の値打ちは、いま輝いているのではないでしょうか。
この一年をふりかえり、新しい年を展望しますと、世界でも日本でも、歴史の本流は、逆流とせめぎ合いながら、深いところで力づよく成長しています。日本共産党の値打ちはどの分野でも輝いています。歴史は着実な足取りで前に向かって動いています。
今年、私たちが立ち向かおうとしている政治戦で、わが党が前進、躍進することは容易ではない大仕事です。しかし、歴史の本流に立ったこの党の値打ちを、全党員、全後援会員、すべての支持者のみなさんの共通の確信にし、それを全国民のものにする仕事をやりきれば、必ず勝利への道は開かれる。この確信をもって奮闘しようではありませんか。
ただ、みなさん、この奮闘は、選挙まぎわになってから始めたのでは、間に合わないことにもなります。この間の中間選挙の結果も、ここが明暗を分ける重要な分水れいとなっています。
五中総では「攻めの構え」ということを強調しましたが、政治戦で、わが党の先駆性をきわだたせるとともに、草の根での組織活動――すなわち、対話と支持拡大、後援会活動、党勢拡大など勝利に必要な組織活動を早い時期にやりぬくことが、勝利にとって絶対不可欠であります。「選挙の告示にならないと本気にならない」、あるいは、「最後の三日間にならないと底力が出ない」ということでは、こんどの選挙に勝つことはできません。早い時期に勝利に必要な仕事をやりきり、さらに躍進のための仕事にのりだす。これが勝負を決める。こういう構えで新年にのぞみたいと思います。
ある著名な政治評論家が、五中総決定を読んで、つぎのような感想とわが党への期待を寄せてくれました。それを紹介します。
「五中総決定が政党状況の新しい局面のもとで、政党らしい政党としての日本共産党の値打ちを四つにわたって指摘しているのは、まったくその通りだと思う。こうした共産党の存在は、その後の保守新党の動き、さらに民主党の状況、その他流動化が予想される政党状況のなかで、いっそう光を増していくだろう。そうした共産党の存在と役割については、無党派層もふくめて、それを認める人たちが大きく増えてきていることは確かである。問題は、そういう人たちをこんどのいっせい地方選挙、総選挙で共産党にどれだけ結びつけられるかである。結びつけるためには、もちろん政策上の問題はあるが、まさに地をはう活動、たたかい以外にないと思う。そういう意味では、貴党にとって二〇〇三年は、大きな正念場の年であり、飛躍できるかどうかの重要な年だと思う」
「地をはう活動、たたかい以外にない」――まさにその通りだと思います。日本共産党は、この点でも大きな財産をもっています。わが党は、全国津々浦々に党支部と後援会という“草の根の力”をもち、「しんぶん赤旗」という“自前のメディア”をもつ党であります。ここにもわが党の“政党らしい政党”としての真骨頂があります。この力を年初めからフルに発揮して、きたるべき政治戦での勝利を必ずかちとろうではありませんか。
以上をもって、年頭のあいさつにかえるものです。ともにがんばりましょう。(拍手)