日本共産党

2003年1月3日(金)「しんぶん赤旗」

リストラ反対 安全な職場を

共感呼ぶ共産党の宣伝

労災事故多発の鉄鋼大手


 「グローバル戦略」の名のもとに経営統合をすすめる鉄鋼大手。昨年九月に統合、持ち株会社を設立した川鉄千葉製鉄所(千葉市)とNKK京浜製鉄所(川崎・横浜市)の職場では人減らし、過密労働の新たな不安が広がっています。日本共産党委員会は「労働者に一方的な犠牲を押しつけるリストラ反対、安心して働ける職場をつくろう」と活動を強めています。(名越正治記者)

 NKKと川鉄は、持ち株会社「JFEホールディングス」の設立にあたって、連結グループ労働者の12%に当たる七千人の削減を発表しました。

 四月には、五つの事業会社に再編し、千葉製鉄所と京浜製鉄所は「JFEスチール」東日本製鉄所として出発します。

 全国の粗鋼生産は一億トン程度を推移していますが、鉄鋼大手五社の人員は一九九〇年に十六万一千人いたのが、二〇〇一年には九万六千人へと四割強が削減されました。

 千葉製鉄所では「これ以上、人員を減らされたら命がもたない」という不安が広がっています。昨年、二十二件の労働災害が発生し、五人が死亡しました。一九九七年以降の六年間で十一人ですから異常です。所長と副所長が更迭されるという前代未聞の事態です。

 経済産業省は業界団体の鉄鋼連盟に異例の注意文書を出して警告。マスコミは「事故多発。リストラが影」(「日経産業」)と報じました。

 ところが川鉄の數土文夫社長は「グローバル化は弱肉強食の世界…最後の一頭になるまで競い合う」と主張しています。

 京浜製鉄所では、分社化、外注化で正規労働者の人減らしをすすめ、いまや「七割は外注関連労働者」といわれる状態です。無権利、低賃金労働者が拡大しています。

 川鉄党委員会は、職場新聞「クレーン」のパンフレット版を発行。どうしたら命と健康を守れるのかと、大規模に宣伝・対話を広げています。

 宣伝に、労働者が「会社にどんどんものをいってくれ」「職場で読ませるから五枚くれ」と声をかけてきたり、会社役員が「私は『クレーン』の熱心な愛読者だ」と党員に話しています。

 京浜党委員会は、日本共産党中央委員会が昨年十二月に発表した雇用政策「無法なリストラや解雇から雇用と人権を守り、安心して働くことができるルールの確立を」を機関紙「京浜の高炉」号外にして門前で配布。労働者と対話し、共感を集めています。

“社会的規制が必要”の声

労働者は半減 川鉄千葉

分社化や外注 京浜製鉄所

一人作業で…

 川鉄千葉製鉄所は一九九〇年に五千二百人いた労働者が十年間で二千八百人と半減しました。

 第三製鋼工場の転炉で昨年九月、五十二歳のラインマネジャー(職制)が突然閉まったサイドドアに頭をはさまれて死亡しました。

 近くで仕事をしていて事故を目撃した山形光幸さん(51)は「頭のなかが真っ白になった」といまもショックが残っている様子です。製鋼職場の労働者は、死亡事故の連続に「みんなピリピリしている」といいます。

 一人でパトロール中に点検台の鉄板ごと廃液処理タンクに落ちる、トラクターショベルカーごと海に転落する、硫化水素の処理設備でガス漏れで中毒死するなど、一人作業で数時間後に発見されるという痛ましい事故も起きています。

 山形さんは「会社が実施している職場総点検活動で『要員を増やしてほしい』と毎年要求してきましたが、会社はまったく耳を貸そうとしませんでした。会社が一方的に発表する職場の“必要人員”では、労働災害は絶対なくなりません」と語気を荒らげます。

 人減らしは、食事時間が確保できないほどのひどさです。四十五分の食事休憩が二十五分と二十分に分割されていますが、労働者は残業をしてようやく食事にありつけるという状況です。

 日本共産党の川鉄党委員会の職場新聞「クレーン」は、災害の原因が(1)作業・安全など関連する設備の老朽化(2)リストラによる過密労働と一人作業(3)責任を労働者個人に負わせる安全活動―にあると告発。「代勤なしに年休がとれる要員、食事交代や安全確保要員という本来あるべき人員をみんなで計算し、どれだけ無理な仕事になっているかを把握して安全を守ろう」とよびかけています。

要員協定なし

 京浜製鉄所は昨年九月現在、本体の従業員数が二千九十一人にたいし、分社化・外注化した職場の関連従業員数は四千七百十二人(本体からの出向者含む)で、「業界で最高水準」(会社側)といわれています。

 職場は、分社化・外注化によって、労働条件の改悪がすすんでいます。

 分社化会社や外注先の関連企業は、NKKと比べて賃金は六―七割に引き下げられ、年間所定労働時間は逆に六十―八十時間長くなっています。「二十年前の水準に逆戻りさせられるなんてとんでもない」と上司に抗議する出向の労働者もいます。

 持ち株会社化による経営統合という新たなリストラのなかで、賃金は定期昇給や職能給での査定幅が拡大し、労働条件が下回ることがありうる内容が含まれています。

 NKKには「基準人員協定」という要員協定がありますが、川鉄には要員協定がありません。

 京浜党委員会は、要員協定の確保や抜本的な賃金の底上げを求め、宣伝や対話を広げています。

 「雇用でもサービス残業でも年休取得にしてもやっぱり全体を社会的に規制していくことが必要だ」と日本共産党の雇用政策に共感を示す声が労組役員からもあがっています。

 切実な要求とともに、NKKと川鉄の経営統合に関連して、「これでいいのか日本の資本主義」と題した鈴木明党委員長の京浜製鉄革新懇での講演録を発行し、活用しています。職場で「大きく日本の政治の転換を考え、頼りになる」と期待が高まっています。


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