2003年1月1日(水)「しんぶん赤旗」
本紙が一昨年スクープしたダム入札談合報道が、「脱ダム」の長野県でいま大きな力を発揮しています。
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長野県・浅川ダム(長野市)の入札談合問題を調査してきた長野県の第三者機関、県公共工事入札等適正化委員会(委員長・鈴木満桐蔭横浜大教授)は、談合を認定する報告書を一月末までにまとめる方向です。ダム談合を行政側が独自調査して認定するのは全国初。その有力な根拠のひとつが本紙の報道でした。談合認定は全国の「脱ダム」の流れを加速させるものです。
同委員会は、田中康夫知事が二〇〇二年七月に弁護士など五人をメンバーに発足させました。日本共産党県議団が〇一年九月、本紙のダム談合報道(〇一年八月三十日付)をもとに真相解明を申し入れたさい、知事は調査を約束。その具体化が委員会発足でした。
発端となった本紙報道は、ダム工事下請けの大手、山崎建設(本社・東京)の内部文書を明らかにしたもの。この文書は一九九五年十二月に作成され、全国各地のダム工事について、業界内で工事受注の“本命”とされた企業名を明記。浅川ダムでは入札(〇〇年七月)の五年前に、前田建設工業・フジタ・北野建設の共同企業体を“本命”とし、実際その通りに落札されました。
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同委員会は、この山崎建設文書に注目しました。赤旗編集局にも協力を要請し、さまざまな角度から文書を検証しました。さらに、浅川ダム入札参加業者が提出した積算内訳書などの入札関係書類や、入札談合をめぐる過去の裁判事例なども詳しく検討。その結果、入札参加業者間で談合がおこなわれたと認定することは可能との判断に達したものです。
「脱ダム」を掲げる田中知事は昨年九月、浅川ダム本体工事(契約額百二十九億円)の契約を解除しました。すでに入札時から談合情報が流れていたため、ゼネコン側は「談合があれば契約解除に異議を申し立てない」との内容の誓約書を県に提出しており、「談合」がはっきりすれば賠償も請求できません。
他方、ゼネコン業界団体・日本建設業団体連合会の平島治会長(大成建設会長)は、「堂々と賠償を請求すべき」と発言。「長野ですまない」(大手ゼネコンの幹部)とゼネコン全体にかかわる問題とみており、今年、重要な局面を迎えます。
NPO情報公開市民センター理事長の高橋利明弁護士の話 談合認定をすれば画期的だ。行政の透明性や効率性を確保するための当然の行為で、全国に少なくない影響を与えるのではないか。