2002年12月24日(火)「しんぶん赤旗」
アイフル、ディックファイナンス、プロミスのサラ金三社に、百七十二万五千円の過払い金の支払いを約束させた―。返金を約束させたのは東京都大田区の明地一郎さん、和子さん夫婦(いずれも仮名)。明地さん夫婦は「私たちと同じようにサラ金やヤミ金の取り立てに苦しんでいる人たちに、解決の道はあるんだということを知ってほしい」と本紙に訴えてきました。(上野隆之記者)
配管工事に従事している一郎さんが経済苦のためサラ金から借金をしたのは十三年前。最初借りた金額は十万円でした。それを返済しても、また借りて、借金は三十万円、五十万円と増え、やがて一郎さんの名義では借りられなくなりました。そこでこんどは和子さんの名義を使って借りるようになりました。
返済が遅れるとほぼ毎日、「明日までに入れろ」と取り立ての電話がきました。家まで押しかけ、ドアを「ドンドン」と乱暴にたたくこともしばしば。明地さん夫婦は「この先どうなるのか本当に不安だった」と、当時の気持ちを語ります。昨年六月、アパートの契約更新で、家賃が払えず不動産屋から「出ていってくれ」と言われ、明地さん一家は一郎さんの親類の家に住まわせてもらうことになりました。
この深刻な事態から打開に向けて踏み出しはじめたのは、今年六月、金子悦子党大田区議の生活相談で相談してから。一郎さんの姉が購読していた「しんぶん赤旗」日曜版の集金に来た人に偶然、生活相談のことを教えてもらったのです。この時点での「借金」はサラ金六社から五百万円でした。
金子区議に事情を話すと「借金の返済が過払いになっているかもしれないから太陽の会(サラ金やヤミ金に苦しんでいる人を対象に無料相談を行っている団体)に相談してみたら」とアドバイスを受けました。
明地さん夫婦は太陽の会に相談。東京簡易裁判所の債務整理問題を扱う特定調停に申し立てをすることになりました。
太陽の会の本多良男さんは調停の有効性について話します。「調停の申し立てをすれば業者に対し、取り立てをストップし、いつ借りていつ返済したかという取引経過を開示させることができます。40%の金利で五年以上返済し続けている場合、利息制限法(年15%―20%を超える金利は無効と規定した法律)に照らして払い過ぎている場合が多い。支払い状況を開示させれば計算して超過分を充当して借金を減額することができます」
今年十月三日、調停の結果、裁判所は、明地さんとサラ金業者の間には「金銭消費貸借契約に基づく債務が一切ないことを確認する」という決定を下しました。
さらに明地さん夫婦は安原幸彦弁護士に、調停で開示された取引経過を見てもらったところ、利息制限法に照らすと過払いがあることが判明しました。
調停で返済状況を開示していたアイフルなど三社とは、百七十二万五千円の過払い分を返金させることで、今月十六日、合意が成立しました。今月十日に返済状況を明らかにした武富士には過払い分の返金を求める内容証明を送りました。残る二社についても交渉中です。
明地さん夫婦は「金子区議や弁護士の方には本当にお世話になりました。サラ金はテレビなどで大々的に宣伝されていて、ついつい手を出してしまう危険があります。大宣伝はやめるべきです」といいます。
安原弁護士は、「一人だけで悩まずに、恥ずかしく思わないで、親族や弁護士、被害者の会に率直に相談するのが大事です」といいます。