2002年12月22日(日)「しんぶん赤旗」
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「納車を半年以上待たされた」「契約したら最後、納車をえんえんと引っ張られる」――インターネットカーディーラー「クイック」の納車遅れと、ユーザーへの不誠実な対応への非難が沸き起こっています。クイックへの不満をぶつけるインターネット上の「掲示板」には、苦情がびっしりと書き込まれていました。
自動車の販売店は大別して、メーカーの「正規ディーラー」と、正規ディーラーを経由して新車を販売する「サブディーラー」に分けられます。(図)サブディーラーは、整備工場や中古車店だったりしますが、メーカーから直接、車を仕入れることはできません。
クイックも、正規ディーラーを介して新車をネット上で販売する、サブディーラーです。
自動車のネット販売に詳しい関係者は「サブディーラーは正規ディーラーと、支払いの関係でも信頼関係を築くことが大事。人気車種になれば、自分(正規)のところの注文を優先させるのが常。サブディーラーが注文を定期的に出せなければ納期が後回しにされる」と指摘します。
しかし、千葉の会社員の場合、十月に車体番号が届き、車庫証明をクイックに提出しました。
ホンダ本社に問い合わせると、同じ車体番号の車は、工場からきちっと出荷されていました。
それから二カ月、なぜ納車が遅れたのか…。
納車にきた川崎市内のホンダディーラーも「十月には車が完成していた。いつ納車するのか、大丈夫なのか、クイックに催促したがナシのつぶてだった」と漏らしました。
自動車ネット販売関係者は「クイックに納車の意思がなかったとは言い切れず『詐欺』ともいえないが、はっきりと納期遅れの理由をユーザーに説明もしない。非常に悪質だと思う」と強調しました。
東京都品川区南大井にあるクイック本社は十四階建てビルの十階で、閑散としたフロアにコンピューター画面の光が鈍く漏れていました。
なぜ、納車遅れがおこるのか。いくら説明を求めても、クイック側から具体的な回答はありません。
車のネット販売は、自動車メーカー自前のネット販売、中古車販売、仲介販売があります。仲介系は、見積もり依頼型と直販型に大別されます。
見積もり依頼型は、ユーザーの見積もり依頼をネット上で受け、それをディーラーにつなぎ、紹介料をとるもの。
直販型は、見積もり依頼、購入予約をネット上で行うもので、クイックは直販型に入ります。
クイックの佐藤治社長は、「顧客に会わずに取引をする」と特徴づけ、電子メールをセールスに活用し、商談の手間を省くことが売りです。
一方、千葉県の会社員が「他のディーラーが値引き額を公示しないのに対し、クイックは提示していたことが魅力だった」というように、格安値段の公示も大きなポイントでした。
自動車ジャーナリストの松本隆一さんは、「一般的に見積もり依頼型は、ユーザーとの間で、金銭のやりとりは発生しない。直販型の場合、いくら価格が安くても納車の前にお金を渡さないのが原則。商習慣上の申込金(一万円)程度にとどめるべきだ」と指摘します。