2002年12月18日(水)「しんぶん赤旗」
【ソウル17日面川誠】韓国大統領選挙の投票日まで二日を残すだけとなった十七日、各候補は支持候補を決めかねている浮動層の獲得へ総力を上げました。
与党・新千年民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補は十七日、党本部で会見し、「金大中政権の不正腐敗に関連した人物は必ず処罰される」と強調。「古い政治を清算し新しい政治の時代を開く」と述べ、“政治不信”が強い浮動層の支持を訴えました。
野党ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)候補は同日、浮動層が多いソウルと忠清道で遊説。盧氏が公約する首都移転問題に焦点を当て、「ソウルの空洞化をもたらし、新首都の大田市・忠清道の地価暴騰、乱開発を招く」と主張しました。
中央選挙管理委員会が十六日に発表した世論調査によると、支持候補を決めていない有権者は34・3%。これまでにない高率だといいます。
浮動層の多さの背景には、軍事独裁が終わった一九八七年からの民主化で、有権者の価値観が多様化し、候補者も多様化したことがあります。北朝鮮に対する敵対意識が弱まったことも反映しています。
ハンナラ党の李氏は、対米同盟重視、企業の競争力強化などを重視する保守派。新千年民主党の盧氏は、対米自立外交、財閥の規制を主張し「中道リベラル」「中道左派」と呼ばれます。権永吉(クォン・ヨンギル)候補を擁する野党・民主労働党は、党綱領に「資本主義の克服」を明記する「左派」です。
その他の四候補のなかには、正面から「社会主義」を掲げる社会党の金栄圭(キム・ヨンギュ)候補がいます。十三日のテレビ討論で金候補は、「社会党は資本主義の廃棄をめざす社会主義政党です」とあいさつし、視聴者を驚かせました。
十七日、ソウル市内で金候補の遊説に足を止めた会社員、徐允晋さん(55)は、「時代が変わったね。私は支持しないけれど、いろんな主張があってもいいじゃないか」と、とまどいながら関心を示しました。
【ソウル17日面川誠】韓国大統領選挙(十九日)の主要三候補は十六日夜、社会文化分野の政策を争う最後のテレビ討論で論争を交わしました。与党・新千年民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補と野党ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)候補が首都移転の是非をめぐり激しく対立。野党・民主労働党の権永吉(クォン・ヨンギル)候補は軍縮による福祉財源ねん出を主張しました。
盧氏は、「ソウルの人口増加が毎年二十五万人で、二〇一〇年には総人口の約半数の二千五百万人に達し都市機能がマヒする」と指摘。大田市を中心とする忠清南道に人口五十万人程度の新しい首都を建設すべきだと主張しました。
これに対し李氏は「ソウルが空洞化する」と反論。新しい首都を建設した場合、そこでも一極集中が再現し、過密解消の決め手にはならないと強調しました。
社会福祉では、盧、李両氏が、国家予算に占める社会福祉費用を漸増すること、保育費の公的補助によって女性の社会進出を促進することを主張。
これに対し権氏が、「財源のあてのない福祉政策は実現性がない」と批判。高額所得者への富裕税の新設と大幅な軍縮を通じた財源づくりを主張しました。
文化政策では、三氏とも韓国文化の保護・育成を強調。「文化を自由貿易体制に任せることは望ましくない」と一致して主張しました。