2002年12月15日(日)「しんぶん赤旗」
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「戦争はイヤだ、これが市民の声だ」と十三日に東京・渋谷公会堂に二千人がつめかけた「12・13集会」。集会は、ジャーナリストの矢崎泰久さんの司会ですすめられ、作家の小田実さんがこれまでの経緯を報告。作家、哲学者、宗教者など多彩な著名人八氏が、日本共産党の志位和夫委員長、社民党の土井たか子党首とともに、アメリカのイラク攻撃を許さないとの思いを語り合いました。
作家の小田実さんは、同時多発テロ発生から一周年のことし九月十一日に、日本がアメリカとイラクの間の仲介をするべきとの「声明」をだし、日本共産党や社民党など政党を含め、集会の呼びかけをおこなってきたと集会開催までの経過を報告。「いくらなんでもひどい時代」とのべ、アメリカばかりでなく、イージス艦を派遣する日本にたいするとりくみも強めようと呼びかけました。
小田さんは、自分も体験した一九四五年の大阪大空襲のさい、米国側が上空から撮影した一枚の写真をしめし、「この下にいる人間にとっては地獄ですが、アメリカは上から見ていた。これがアメリカ人にとっての戦争」と告発し、イラク攻撃も同じくらいにしか考えてないと批判しました。きょうのデモに参加した市民一人ひとりが今後、さまざまな行動をと訴えました。
いきなり軍歌を歌い始めたキリスト者政治連盟委員長の大島孝一さん。再び戦争の道へ進もうとする状況にふれ、「いまの事態を変えさせたい」と強調。「本当のことを伝えるネットワークをつくっていこう」と呼びかけました。
作家で精神科医のなだいなださんは、戦争の傷跡を残す患者の話を紹介。「患者が私に、戦争というものを痛切に思い出させてくれる」との言葉に、参加者は静かに耳を傾けました。「マスコミはもっといろんなことを報道してほしい」と注文したうえで、「地球を壊すことはやめにしたい。その思いを分かち合って、一緒に歩きましょう」と呼びかけました。
日本キリスト教協議会総幹事の大津健一さんは、同時刻に渋谷の教会でキリスト者が平和を祈っていることを紹介。「集会後の行進にいっしょに参加します」とのべると共感の拍手。キリストの言葉を示しながら「平和を作り出すことは幸いだ。いまどういう形で平和を作り出すことができるのか、一人ひとりに問われている」と強調しました。
「昨年の9・11以降、心臓がドキドキしない日はありません」と切り出した作家の中山千夏さんは、「戦争が起これば、女性や子どもが犠牲になる。なんとしても戦争を止めたい。止めたいと思っている人がいることを示したい」と発言。「志位さんの都合で日程が決まった」と小田さんが語ったというエピソードを紹介し、「用事があるので先に帰りますが、私の分まで、志位さん、しっかり歩いてください」とエールを送りました。
作家の澤地久枝さんは、小泉首相が国会審議にもかけずにイージス艦を戦闘地域に出すことにしたことを批判。「アメリカにハイハイ、あなたをお助けします。命も差し出します」というふうになっているとのべると笑いも。いまの女性は参政権を持っていることをあげて「『力がなかった』といって逃げるわけにはいかない」と力を込めました。手作りのゼッケンを掲げると、割れるような拍手が起きました。
哲学者の鶴見俊輔さんは、ブッシュ大統領がアフガンへの報復戦争を始める際に「”自分たちは十字軍だ”といった。びっくりしたな」と語り、爆笑を誘いました。「アメリカは世界一の金持ちとなり、いくつもの原爆を持って、貧しい国を脅かしている。こういう形はどうかしている」と指摘。原爆が人類や動植物に「大変な迷惑をかけている」といい、「そろそろこれを捨てちゃうことを考えるとき」とのべると拍手に包まれました。
原子力資料情報室共同代表の山口幸夫氏は、ベトナム侵略戦争のとき米軍戦車の輸送をストップさせたたたかいにふれ、連帯の大切さを語りました。今年春、ベトナムを訪問したさい、現地の通訳が「戦争で本当に苦しいとき、世界中が応援してくれている、日本では戦車がとまっていると知り、勝てると確信した」と語っていたことを紹介。アメリカが核兵器の使用さえ公言しているいま、「もう殺し合いはやめろと、多くの人に語りかけよう」と訴えました。
小泉首相と同窓生と自己紹介した佐高信さん。「小泉氏は昔から”入り口はいるとすぐ出口”という奥行きのない人物。反応が単純で、ブッシュ(米大統領)にもすぐ賛成した」との辛口批評に場内は爆笑と拍手でわきました。日本の中国侵略の痛切な経験にふれ、「この痛みを忘れずに、アメリカにものをいう必要がある」としめくくりました。