2002年12月13日(金)「しんぶん赤旗」
ことし二月の長崎県知事選の直前、県発注の工事を請け負った建設会社が、現職の金子原二郎知事側に知事選資金として献金を行い、公職選挙法違反(特定寄付の禁止)容疑で捜査対象になっています。長崎県議会では、この問題を日本共産党の中田晋介県議が取り上げましたが、議長(自民党)が知事に答弁させず、公明、民主、社民党会派も質問封じに同調、知事もだんまりを決めこむなど、大きな問題になっています。
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現在、長崎地検が捜査対象としているのは、五洋建設など中堅ゼネコン四社の自民党長崎県連への九百万円と、県建設業協会長崎支部に加盟する地元建設業者十四社の自民党長崎県建設支部への七百万円の二つのルート。いずれも昨年十〜十二月に献金が行われました。(図参照)
これらの献金は、自治体の首長、議員の選挙で、当該自治体の公共事業を請け負った企業は選挙にかかわる寄付をしてはならないと定めた公選法(一九九条)に違反するものです。政治資金収支報告書に記載されており、直接、金子知事に渡っていない献金も、「違法」として追及されたことは自民党に大きな衝撃を与えています。
これらの献金は、自民党県連幹部が、県発注工事の受注実績にもとづき、約三十社に献金要請したと指摘されていますが、本紙の調べで第三の献金ルートも浮かび上がってきました。
自民党長崎県港湾支部の昨年の政治資金収支報告書によると、同支部は、全日本漁港建設協会長崎県支部から十二月五日に五百万円の寄付を受け、同日、そっくり五百万円を自民党県連に献金しています。
また、同二十六日には、全日本漁港建設協会長崎県支部から直接、三百万円が自民党県連に献金されています。全日本漁港建設協会長崎県支部に加盟する四十六社には、違法献金容疑で捜索された五洋建設、東亜建設工業の二社があり、この二社をふくむ二十一社が諌早湾干拓関連事業などを受注していました。
県建設業協会と、全日本漁港建設協会長崎県支部は、同じ事務所、同じ電話。自民党長崎県港湾支部も自民党長崎県建設支部も同居し、事務担当者は、同一人物です。
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開会中の長崎県議会で異常事態が起こったのは九日のこと。「知事選での違反寄付容疑」問題をとりあげた中田県議の質問を、議長が一方的に「緊急質問」と決め付け、知事に答弁させなかったのです。
長崎県では、自民党県議が前土木技監にパーティー券の建設業界へのあっせんを依頼、政治資金規正法違反で辞職したばかり。違法寄付疑惑は、こうしたなか、「知事よ、おまえもか」と、県民が注目している問題です。金子知事は自民、民主、公明、社民、自由、保守の六党推薦で再選しました。
この問題で、当事者の県建設業協会の上滝勝会長は記者会見で、「(知事の)金子後援会から依頼され選挙支援資金を集めた。事務所運営費に使った」と事実を認めています。ところが、金子知事は、一般紙などで、「全く知らなかった。知事選の際も業者からの寄付は一切ない」と繰り返しています。
中田県議が、正規の手続きをへ、十四分の再質問の時間を残して主質問を終えた直後、加藤寛治議長(自民党)は、この問題の質問に対し、「質問は認められない。知事は答弁しなくてよい」といいがかりをつけて妨害、知事に答弁させませんでした。知事もこの問題での発言を求めませんでした。
中田県議は、「他の議員も同様の手続きで質問を行い答弁もなされている。平等に扱ってもらいたい」と繰り返し答弁を要求。知事がこの事件での責任を明確にして再発防止策を示し、県発注工事の受注企業からの政治献金をいかなる形でも中止するよう求めました。
それでも知事は一言も答えず、質問の取り扱いをめぐって議会は空転。議会運営委員会では、あくまで質問を認めないという議長に公明、民主、社民党会派が同調し追認したのです。
再開された本会議でも中田県議は、残された質問時間で、あらためてこの問題をとりあげて堂々と質問、捜索を受けた企業の献金が知事選の年に急増していることにふれ、「金額でも、集めた時期や支出の面からも疑惑は当然。『一般の献金だ、偶然だ』といってすむ問題ではない」と答弁を求めましたが、議長の制止を受けた知事は最後まで答弁しませんでした。
傍聴していた岩井三樹さん(60)は、「特定の議員の質問にだけ、知事に答弁させないのは差別であり異常だ。県民に不正献金の実態を知られたくない議員たちが臭いものにフタをしようということだ」と話していました。