2002年12月10日(火)「しんぶん赤旗」
「本当は産地がわからない牛肉の箱に、コピーした高級産地の証明書を張りつけた」――。一面所報のハンナン食肉(大阪府羽曳野市)の牛肉産地偽装について、実態をよく知る同社関係者は、偽装の手口を以下のように日本共産党調査団に証言しました。
ハンナン食肉では、BSE(牛海綿状脳症)の検査済み証明書に産地が表示してあることを悪用した産地偽装をしていました。始まったのは、昨年十月十八日のBSE全頭検査開始の直後からでした。
大阪では、佐賀牛、宮崎牛、鹿児島牛など九州産に人気があります。そうした高級産地の検査済み証明書を事務所のコピー機で五十枚、六十枚と大量に増刷りしました。
デパートの食品売り場などに店舗をもつハンナン系列の会社、サノチューへの納品書がハンナン食肉に回ってきます。そこには、品名、産地、ロット番号(牛肉の倉庫での保管単位)、数量などが記入されています。
ハンナン食肉の倉庫では、商品管理物流課の担当者が、納品書に記入されたロット番号の出荷箱を運んできて、高級産地の証明書を四つ折りにして張りつける偽装をおこないました。それらの産地表示を張り付けて、サノチューの売り場に出荷しました。
しかし、倉庫にある出荷箱には産地がわかる表示はありません。ロット番号はついていましたがハンナンでは「F1」(黒毛和牛とホルスタインの混合種)の場合、一回に五頭、十頭とまとめて、ごちゃまぜにして一つのロット番号をつけます。
倉庫の出荷箱には、ロット番号しかないので、本当は産地がどこか判別できません。だから、出荷作業をしている本人が、どこの産地の出荷箱かわからないにもかかわらず、納品書に合わせてコピーした高級産地の証明書をペタペタと張りつけるのです。
他社の産地表示のシールが張ってある場合は外箱も包装もシールをすべてはがし、高級産地の証明書に張り替えてしまったこともあります。
こんなことをするのは上部の指示があるからです。心ならずも不正に加担させられたり、その事実を知ってイヤになり退社した人も少なからずいます。
ハンナングループをひきいる浅田満氏の一家は、週刊誌で報道されているような、お城のような豪邸で暮らしています。あの鈴木宗男議員のような利権政治家とのつきあいも明るみに出ました。
その一方で、国民の血税をつぎ込んだBSE対策事業を悪用するなんてどうしても許せない。だから私は、勇気をふるって告発したんです。
ハンナングループ 食肉業界の最大手の一つ。同グループを率いる浅田満氏は、大阪府同和食肉事業協同組合連合会の会長を務めるなど、食肉業界に大きな影響力をもっています。衆院議員の鈴木宗男被告(自民党離党)とも高級車を格安で提供するなど、親密な関係。BSE対策国産牛肉の買い取り事業では、申請量の突出ぶりや、焼却の早さが国会でも取り上げられました。