日本共産党

2002年12月7日(土)「しんぶん赤旗」

道路4公団民営化委最終報告

混乱に現れた小泉内閣の無責任

民営化最優先の“丸投げ”で矛盾噴出

天下り禁止、政治家との癒着…解決策示さず


道路4公団の5分割案
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 六月から三十五回もの審議をつづけてきた道路関係四公団民営化推進委員会が混乱をつづけた背景には、小泉内閣の道路公団「改革」方針の矛盾が現れています。

 委員会が抜き差しならない事態に至ったのは、新会社による高速道路の新規建設の仕組み、財源確保をめぐって激しく対立したからです。今井敬委員長が指示してつくらせた事務局案は、日本道路公団など四公団の民営化でできる新会社が建設を継続できる道筋をはっきりつけるものでした。

建設量、費用捻出に違い

 これにたいし五人の委員が推した松田昌士案は新会社の意向を優先させるという建前です。まず早く自立してもうけをあげ株式上場する、そのため債務返済を優先して身軽になり、その結果として高速道路の建設が多少後回しになっても仕方がないというものです。

 両者とも高速道路の建設継続では同じですが、建設量をどの程度にするかという建設費の捻出(ねんしゅつ)に違いがありました。現在、日本道路公団は年間二兆円の料金収入があり、このうち九千億円以上を建設資金に回しています。

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第二東名高速道路のトンネル建設現場=静岡県

 民営化委員会事務局幹部は「松田案では会社が建設に投資できる資金は一千億円から二千億円程度」と審議のなかで発言していました。

 「松田案では行政、国会で受け入れてくれない」と今井氏がくりかえしたのは、建設継続をねらう自民党道路族、国土交通省の意向をくんだものでした。

 それでは多数決により最終報告になった松田案がむだな道路建設継続をストップさせるものかといえば、そうではありません。

 最終報告は国鉄分割・民営化をモデルにしており、制約を設けながらも、新会社による新規建設に道を開いています。新会社がつくれない不採算の高速道路は「国と地方の財源により建設する」ことを打ち出しています。「高速道路をつくらないとは一言もいっていない」と猪瀬直樹委員がいい、「国がつくることに文句はいわない」と松田委員がいうのはそのためです。

混乱の芽は6月発足時に

委員長は辞任 退席して…
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委員長を辞任して退席したあと車に乗りこむ今井氏=6日

 こうした対立、混乱の芽はすでに六月の民営化委員会の発足時に宿っていました。

 世論調査でも「これ以上の高速道路はいらない」という人の割合が七割近くに上っていました。しかし、政府が決め道路公団にやらせてきた高速道路計画なのに、小泉内閣は昨年暮れの「特殊法人等整理合理化計画」でムダな高速道路をつくらない政策を打ち出さず、民営化委員会に丸投げしてしまいました。

 しかも、そのなかで民営化を最優先にして、「五十年上限償還」と借金返済を長期に設定し、料金収入を建設にあてる道を開きました。さらに本四公団の長期債務には「国と地方の財源をあてる」と税金投入を打ち出していました。

 委員会が混乱したのは、このような小泉内閣の方針のもと、高速道路の建設をこのまま進めるのか、四十兆円にのぼる四公団の債務をどう処理するかという根本問題をあいまいにしたまま、もっぱら「民営化」の形態の論議をつづけてきたからです。

 ファミリー企業の問題でも議論はしたものの、「民営化」の立場に終始しているため、天下りの禁止、政治家との癒着を断つ問題などの解決策が示されていません。

 現在の高速道路建設は凍結し無駄な建設はきっぱりと中止する、債務を国民負担に押しつけない、そのうえでどうしても必要な国民、住民が望む道路を精査してつくるという、基本の問題が民営化委員会によっても解決されずに残されたままです。

 (山沢猛記者)


最終報告要旨

 道路関係四公団民営化推進委員会が六日、小泉純一郎首相に提出した最終報告の要旨は次の通り。

 一、改革の意義と目的 必要性の乏しい道路建設をストップし、道路関係四公団の債務を長期固定で確実に返済していくことを第一優先順位とする

 一、基本認識 公団方式による高速道路等の建設は限界▽経営の自律性の欠如▽事業運営の非効率性・不透明性▽厳しい財務状況

 一、民営化の基本方針 五十年を上限とした早期の債務返済▽新会社の自主性確保▽通行料金値下げや採算性確保の上での新規路線建設▽規格見直しなどによる建設コスト縮減

 一、新たな組織の在り方 早期の債務返済のため「保有・債務返済機構」を設立。機構は四公団にかかわる長期債務を一括承継し、新会社から徴収した貸付料収入を債務返済に充当、債務の平均残高を減少▽機構は債務返済、借り換えのみを業務とし、機構からは新規投資資金の一部を支出しない▽新会社は十年後をめどに機構から道路資産を買い取り、早期に上場。機構は解散▽機構が新会社から徴収する貸付料は約四十年間の元利均等返済をベースに算定▽本州四国連絡橋公団は料金収入、国の出資、地方の出資(現行より十五年延長)、所要の債務切り離しなどで債務処理。債務切り離しには道路特定財源を充当▽新会社の資金の円滑な調達を図るため上場まで政府保証を付け、買取り後に新会社所有となる道路資産への固定資産税を大幅軽減▽債務の返済を早期に行わせるため機構は法人税を負担しない。当初機構が所有する道路資産にかかわる固定資産税を大幅軽減

 一、地域分割 四公団を全国五地域に分割

 一、通行料金 目に見える成果として平均一割引き下げ▽本四公団は半額程度▽新会社が徴収する通行料金は適正な利潤を含むものとし、新会社が自主的に決定

 一、今後の道路建設

新会社は公益性にも配慮しつつ、採算性の範囲内で当該自動車事業に参画▽新会社の採算性を超える部分の財源は国、地方が負担▽高速自動車国道や都市高速道路の建設において、合併施行方式による建設など国、地方公共団体等の費用負担等を前提にした新たな制度を政府において早急に検討▽新会社は国等の委託を受けて建設工事を行うことができる。この場合、新会社は資金負担をしない▽新会社は道路建設の投資資金を自ら調達。資金の円滑な調達のため上場まで政府保証をつける

 一、ファミリー企業 公団OB受け入れ企業との取引関係自粛▽維持補修業務の入札参加資格要件を今年度内に撤廃

 一、改革の手順及び移行時期 民営化委が作成した基準による個別路線の優先順位に基づく重点的な予算配分▽現首脳陣に代わる複数の民間人登用▽管理費の約三割縮減▽民営化は二〇〇五年四月一日に実施


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