日本共産党

2002年12月5日(木)「しんぶん赤旗」

第五回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 志位和夫委員長が三日開かれた日本共産党第五回中央委員会総会でおこなった幹部会報告と結語は、つぎのとおりです。


 みなさん、おはようございます。衛星通信をごらんの全国のみなさんにも、心からのあいさつをおくります。私は幹部会を代表して、第五回中央委員会総会にたいする報告をおこないます。

 いっせい地方選挙まであと四カ月にせまりました。また政局は、解散・総選挙ぶくみで推移する局面に入っています。きたるべき政治戦で、勝利と躍進をかちとるうえで、きわめて重要な時期にわれわれはたっています。

 この間、全党は、党大会決定、三中総決定、四中総決定、全国地方議員代表者会議などの方針にもとづいて、奮闘してきました。それらを前提において、当面する政治課題、選挙勝利をめざす党活動の強化方向について、重点的に報告します。

一、国際問題と日本共産党の野党外交

 まず、国際問題と日本共産党の野党外交についてです。

(1)イラク問題――戦争に反対し、国連の枠組みのなかでの平和解決を

 イラク問題をどう解決するか。これは、二十一世紀の世界の平和秩序にかかわる重大かつ深刻な課題となっています。

新しい局面を開いた国連安保理決議1441と“理性ある力”

 いま世界を見ますと、二つの大きな力が衝突しています。一方で、米国の一国覇権主義の“無法な力”がこれまでにないむきだしの形であらわれ、世界の平和への最大の脅威となっています。他方で、その横暴が強まれば強まるほど、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を守りぬこうとする“理性ある力”が広がりをみせ、米国の横暴な姿勢は、大局的には孤立を深めつつある。この全体を、しっかりつかむ必要があります。

 イラクをめぐっては、十一月八日、国連安全保障理事会で、イラクに大量破壊兵器の査察の無条件受け入れをもとめる決議一四四一が全会一致で採択され、イラクが決議を受諾し、国連による査察が再開される新しい局面が生まれました。

 この決議で重要なことは、当初の米国のもくろみに反して、かりにイラクが義務違反をおかした場合でも、国連安保理に報告され、安保理がつぎの措置を決める――国連の枠組みのなかで解決をはかることが明記され、米国による「自動的な武力行使を排除」するものとなったことであります。そのことは、安保理の討論の経過からも明りょうです。とくに、フランス、ロシア、中国という三つの常任理事国が、異例の「共同声明」を出して、「決議は武力行使におけるすべての自動性を排除した」とのべていることの意味は重いものがあります。

 ここには、“理性ある力”――平和解決を願う諸国民の世論の反映があります。各国でとりくまれた平和集会など諸国民の運動とともに、非同盟諸国のはたしている役割が、とくに重要であります。非同盟諸国は、議長国の南アフリカが安保理議長あてに書簡をおくり、安保理での公開討論を要求し、それを実現させました。十月十六日、十七日に実現した公開討論をつうじて、世界のほとんどの国の見解が公然と表明され、国連の枠組みのなかでの平和的解決の努力をつくすことをもとめる国が、世界の圧倒的多数をしめていることが、世界の前に明白になりました。

 また、その加盟国がすべて非同盟諸国であるアラブ連盟が、イラクへの攻撃を「断固として拒否」することを確認するとともに、イラクにたいして査察受け入れを粘りづよく働きかけてきたことも、積極的な役割をはたしました。

 日本共産党が、いっかんして追求してきた戦争回避と平和解決への独自の外交努力――中国、ベトナム首脳部との会談における「イラク攻撃反対」での合意、中東六カ国を歴訪した党代表団の活動などは、そうした世界の多数の“理性ある力”に合流し、それを促進する、重要な意義をもつものであります。

戦争の危険は深刻――平和解決をもとめるたたかい急速に

 安保理決議一四四一は、国連の枠組みのなかでの平和的解決の可能性を開くものですが、それはあくまで可能性であり、“無法な力”――戦争への危険は依然として深刻です。米国政府は、安保理決議ののちも、国連の決定なしでも、一方的な軍事攻撃を辞さないという立場を繰り返し宣言し、戦争準備の態勢をきずきつつあります。この行動の根本には、ブッシュ政権が、八月の「国防報告」、九月の「国家安全保障戦略」などで、米国政府の方針として公然とのべるにいたった先制攻撃戦略があります。

 日本共産党は、この中央委員会総会の名において、イラク攻撃を許さず、平和的解決をもとめるたたかいを、急速にひろげることを心からよびかけるものであります。米国にたいしては、一方的軍事攻撃の計画を放棄することを強くもとめます。同時に、イラクにたいしては、国連安保理決議を無条件に、誠実に履行することを強くもとめます。いずれの側からの決議違反も許さず、国連憲章を守り、国連の枠組みのなかでの平和的解決をはかるために、ひきつづき国際社会に働きかけます。

 さらにわが党は、日本政府・与党にたいして、つぎの四つの要求をおこないます。

 第一は、米国のイラク攻撃に反対の態度表明をおこなうこと。

 第二は、いかなる形であれ無法な戦争に協力することを拒否すること。

 第三は、インド洋へのイージス艦の派遣計画など、対イラク攻撃への実質的支援につながる、米軍支援の兵力増強を中止し、自衛隊を即時撤退させること。

 第四は、米軍の無法な戦争に参戦する有事三法案をきっぱり廃案にすることであります。

 八十年の歴史をつうじて試された、平和の党としての真価を発揮して奮闘したいと思います。

(2)日朝問題――今後の交渉にあたって堅持すべき大局的立場について

日朝問題で日本共産党が果たしてきた先駆的役割

 この間、日朝関係について、情勢の大きな進展がおこりました。九月十七日、日朝首脳会談がおこなわれ、国交正常化交渉の再開が合意されました。わが党は、正常化交渉の再開という首相の決断を、「強く支持する」という態度表明をおこないました。その根本には、日朝問題で、わが党のはたしてきた先駆的役割があります。

 わが党は、日朝間の軍事的対応の悪循環を打開するうえでも、両国間の懸案の課題を解決するうえでも、政府間の交渉ルートを開くことを、九九年一月と十一月の不破委員長(当時)の国会質問で提案してきました。これは、現実の外交を動かし、曲折を経ながらも今回の首脳会談へとつながる提案となりました。

 またわが党は、七〇年代、八〇年代と、北朝鮮が国際的に異常な行動、無法な行動をとったさいに、それにたいするもっともきびしい批判者の党でありました。拉致問題の先駆的で継続的な追及も、この立場からとりくまれたものでした。同時に、拉致の問題もふくめて、日朝間に存在するあらゆる問題の解決は、交渉ルートを開き、交渉の課題にしてこそはかられるということを、強く主張してきました。

 国交正常化交渉は開始されましたが、交渉の前途には困難や障害も生まれてきています。交渉は継続中であり、わが党は、交渉の過程で、日本政府がとっている個々の判断や決定については、その是非をのべることを自制する立場をとっています。それは、わが党は交渉当事者ではなく、得られる情報にも当然の制約があり、不確かな情報をもとに政府の行動の是非をのべることは、かえって交渉の妨げになりかねないという見地からであります。

北東アジア地域の平和と安定という大きな視野にたって

 ここでは、日本政府が、今後の交渉にあたって、堅持すべき大局的な立場について、三点にわたって重要だと考えることをのべておきたいと思います。

 その第一は、北東アジア地域の全体の平和と安定をたしかなものとすることが、日本の平和と安全にとっても不可欠であるということです。また、それはアジアと世界諸国民の強い願いでもあります。日朝間に、国交がない状況を打開すること、両国関係を敵対から友好に転換することは、そのための最大の要の一つとなっています。これは、「日朝平壌宣言」の第四項で「双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した」と明記されていることでもあります。国交正常化というのは、けっして相手への「施(ほどこ)し」ではありません。それは両国の利益にかない、東アジアと世界の利益にかなうことであります。日本政府が、このことを強く自覚し、大きな視野にたって交渉にあたることを要望するものです。

交渉のなかで諸懸案を包括的に解決するという立場で

 第二は、両国間の諸懸案を、包括的にテーブルにのせ、包括的に解決するという立場にたち、互いに誠意をもって交渉にあたることです。日本国民の多くが心を痛めている拉致問題についての交渉が重要課題であることはいうまでもありませんが、核兵器問題をはじめとする安全保障の問題、過去の植民地支配の清算の問題など、両国間の諸懸案の全体について、包括的に解決をはかるという立場が重要であります。そのこともまた、この間の日朝政府間の合意に明記されており、「日朝平壌宣言」の基本精神でもあります。

無法をおかした国だからこそ、日本は理性と道理にたって

 第三は、北朝鮮がこれまで国際的な無法行為をおかしてきた国であればこそ、日本側の対応は、理性と道理にたったものであるべきだということであります。くわえて北朝鮮が、首脳会談をつうじて、日本人拉致問題については、ともかくもその犯罪の事実を認め、謝罪したという態度の転換をおこなったという事実も、念頭におかれなければなりません。北朝鮮にこれまでの国際的な無法行為の全体を清算させ、国際社会への仲間入りをさせる方向で、日本側は道理ある冷静な交渉態度をつらぬくべきであります。これもまた、世界が強く願っていることであります。

 わが党は、日朝両国政府が、ようやく開いた交渉の扉を、決して閉ざすことなく、諸懸案を理性と道理をもって解決し、国交正常化へと実をむすぶ成果をあげることを、強く期待するものであります。

(3)野党外交――その発展の土台となった路線と方針はなにか

 この間、わが党の野党外交は、新境地を開く発展をとげました。四中総後、インド・パキスタン両国政府への書簡による働きかけ、不破哲三議長の中国訪問、上田耕一郎副委員長を団長とする代表団のキューバ訪問、緒方靖夫国際局長を団長とする代表団の中東諸国歴訪、アジア政党国際会議への参加、ラオス訪問などにとりくみ、それぞれが多面的で豊かな成果をおさめました。

 これらのわが党の野党外交は、つぎのような路線と方針を土台にして、発展させてきたものであります。

その根本には、歴史でためされた確固たる自主独立の立場が

 第一に、その根本には、旧ソ連、中国の毛沢東派の覇権主義とのたたかいで鍛えられ、試された、自主独立の確固たる立場があります。この立場は、この間の一連の国際活動でも、根底につらぬかれています。

 不破議長の中国訪問では、中国共産党首脳部との多面的な意見交換がおこなわれましたが、そこでは内部問題不介入の原則を守りながら、外交問題について自主的立場からの率直な意見表明がおこなわれました。

 わが党の中東歴訪団が、米国の対イラク攻撃に強く反対する一方、イラクのフセイン政権にたいして、国連の査察の無条件受け入れを、これまでのイラクの対応への批判的意見をのべつつ、堂々と説いたことにも、自主独立の精神がしめされています。

 日朝問題でも、北朝鮮の野蛮な国際的テロや、わが党への無法な攻撃を、きっぱり批判してきた自主独立の立場が、今日に生きています。

アジア外交重視の第二十一回党大会決議――今日に生きる重要な決定に

 第二に、一九九七年の第二十一回党大会で、アジア外交重視の方針を決定したことも、今日に生きる重要な決定となりました。

 この決定は、まず九八年の中国共産党との関係正常化と三十二年ぶりの首脳会談として具体化されました。つづいて九九年には、東南アジア諸国訪問がとりくまれました。さらにそれは、北東アジアの平和のために、日朝関係をどう前むきに打開するかについての、九九年の一連の提案につながっていきました。

共産党間の交流の枠をこえて、自由闊達な交流と共同の道が開かれた

 第三に、一九九九年の第二十一回党大会四中総で、外国の諸政党、政府との関係の新しい発展をはかる方針を決定したことは、わが党の外交活動の視野を画期的に広げる転換点となりました。

 この方針は、従来のおもに共産党間の交流という枠をはずして、相手の党が保守的な政党であれ、革新的な政党であれ、与党であれ、野党であれ、双方に交流開始への関心がある場合、「自主独立、対等・平等、内部問題相互不干渉」の「三原則」にもとづいて、関係を確立し、率直な意見交換、可能な共同の努力をはかるというものでした。

 この方針の初めての具体化が、東南アジア訪問であったわけですが、それは今日、大きく広がっています。今回の中東歴訪や、アジア政党国際会議への参加にも道を開いています。共産党が認められていない国の政府もふくめて、自由闊達(かったつ)な意見交換、一致点での協力の道が大きく広がりました。

わが党が重視している立場は、世界の公理にたつもの

 第四に、こうした国際交流のなかで、わが党が重視した立場は、世界の公理であります。すなわち国連憲章にもとづく平和の国際秩序をきずく、核兵器廃絶を緊急課題としてとりくむ、各国の経済主権の確立と平等・公平を基礎とする新しい国際経済秩序をつくるなどの立場であります。これらが、わが党と政治的立場や世界観が異なっても、世界の多くの政府や政党と共有できる立場となることは、この間の野党外交の経験が証明しています。

 日本共産党の野党外交の発展は、こうした確固たる路線と方針をふまえたものであります。その前途は、世界と未来にむけて大きく開かれています。わが党はアジアと世界の平和、社会進歩をもとめ、自主、自立の外交活動の発展のためにひきつづき力をつくすものであります。


二、暮らしと経済――「四つの緊急要求」、日本の経済主権を守るたたかい

 つぎに暮らしと経済について報告します。

(1)「小泉改革」――救いようのない深刻な自己破綻に

 一九九〇年代以降長くつづく不況のもとで、暮らしと経済の危機は深刻となり、自民党政治は、日本経済のかじ取りの力を、まったく失いました。この危機の「打開」をかかげて登場したのが小泉政権でしたが、そのすすめる政策も救いようのない深刻な自己破綻(はたん)におちいっています。

「構造改革なくして景気回復なし」――空文句であることが証明

 その第一は、「構造改革なくして景気回復なし」という主張の破綻であります。これが空文句であり、景気悪化を加速させるだけであることは、いまやだれの目にも明らかです。

 「構造改革」の最優先課題とされた「不良債権の早期最終処理」は、倒産・失業の増大と、景気悪化、不良債権の拡大再生産という悪循環をつくりだしました。それは「不良債権」とされた企業を倒産においこむだけでなく、貸出金利の引き上げと猛烈な貸しはがしという形で、すべての中小企業に襲いかかり、日本経済をいま土台から破壊しつつあります。

 社会保障だけで三兆円をこえる負担増が、国民におしつけられようとしています。最近になって、政府の経済財政諮問会議の四人の民間議員が「社会保障の負担増による景気へのマイナス効果」として、あわてて同様の試算を発表していますが、巨額の負担増政策の景気への破壊的影響は、いまやだれも否定できなくなってきています。

 小泉政権の「構造改革」なるものは、個人消費と中小企業という、日本経済の土台・主役を破壊する、亡国の政治といわなければなりません。

一方で需要引き下げ策をとりつつ、他方で「悪い需要政策」をとる支離滅裂

 第二は、景気の深刻な悪化のなかで、政府・与党が、なしくずし的に、「公共事業の積みまし」路線にのりだしているということです。五兆円規模の補正予算案の編成がとりざたされていますが、またも関西国際空港二期工事や中部国際空港など、見通しのない巨大開発に、税金を流し込む計画が、すすめられています。しかし、「景気対策」として公共事業を積みますという方式は、「効果がない」と、首相みずから否定した「禁じ手」のはずであります。

 一方で「構造改革」という需要引き下げの政策をとりながら、他方ですでに失敗が証明ずみの「悪い需要政策」をとるというのは、まったくの支離滅裂、迷走状態というほかないものです。

 自民党政治のもとでは、暮らしも、経済も、財政も、金融も、日本が根本から破壊される。そこまで危機と破綻は深刻になっています。

(2)広範な人々の共同の旗印――「四つの緊急要求」かかげ国民的大運動を

 日本共産党が発表した「四つの緊急要求」――社会保障の負担増中止、庶民増税反対、中小企業つぶし政策の転換、雇用と失業対策の充実は、深刻な経済危機から国民生活を守るぎりぎりの要求であるとともに、小泉「構造改革」と正面から対決し、経済政策の抜本的転換をもとめる内容になっています。そこにつらぬかれているのは、国民生活を応援して需要を回復させ、日本経済の民主的再建をはかろうという立場です。

社会保障の負担増――注目すべき医師会の変化

 いま重要なことは、この「緊急要求」が、生活と経営に苦しむ、広範な国民のたたかいの共通の旗印となりつつあることです。この間、全国で、「緊急要求」をもっての申し入れ、対話、共同のとりくみがおこなわれていますが、従来、自民党の支持基盤だった団体・組織もふくめ、広い人々との接近、一致、共同が広がっています。

 たとえば、社会保障の負担増をめぐっては、医師会の変化は、注目すべきものがあります。日本医師会が十月に開催した臨時代議員会での坪井会長の所信表明では、医療費負担増法案の強行を、「容認しがたい暴挙といわざるを得ず、引き続き、今後も国民の負担を増大させる一部負担金の引き上げに反対」すると言明しています。さらに、「経済政策の失敗の穴埋めに使われるために医療費が削減されるとか、命に価格づけをする政治は、近代福祉国家として失格であるといっても過言ではありません」とのべています。各地の医師会・歯科医師会も、国会での法案強行後、「撤回」をもとめる決議をあいついで出しています。

増税計画――中小企業を代表する四団体が「断固反対」

 庶民・中小企業増税の計画にたいして、中小企業団体のなかで広い怒りの運動がおこっていることも注目すべきです。日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会という、日本の中小企業を代表する四団体は、十一月、「総決起大会」を開き、「外形標準課税導入は絶対反対」「消費税の免税点制度見直しおよび簡易課税制度の廃止は断固反対」など四項目の決議をあげました。反対署名は四百七十八万人におよび、全国各地の商店街などに、「増税反対」の大きなスローガンが掲げられています。このもとでわが党と各地の商工会議所などとの共同の輪もさまざまな形で広がっています。

「不良債権処理の加速」――「生き埋めにされる」という糾弾の声が

 「不良債権の早期最終処理」という政策にたいして、福島県の商工会議所会頭が、この間の国会の参考人質疑やテレビ討論で、この方針では、中小零細企業が「絞め殺される」「生き埋めにされる」と糾弾するなど、全国各地の経済界から批判の声が広がっています。

 金融庁主導の信金・信組つぶしにたいして、全国各地で地域金融を守るための、経済界、労働界、自治体ぐるみの運動が広がっています。たたかいの結果、不十分でありますが、金融庁も、中小企業むけの金融検査は、別だてのマニュアルをつくらざるをえなくなりました。わが党は、全国のたたかいの経験をふまえて、「地域金融の活性化のための法案」を提案していますが、これは自治体の条例としても具体化が可能なものです。草の根から地域金融を守るたたかいを発展させ、この暴挙を広く包囲していくことが強くもとめられています。

「サービス残業」の根絶――特筆すべき各地での成果

 雇用確保と失業者の生活確保にかかわって、この間の、特筆すべき変化は、「サービス残業」根絶にむけた前進であります。長年のたたかいと国会論戦によって、昨年四月に、厚生労働省に根絶にむけた「通達」をださせました。全国で、労働基準監督署による特別検査がはじめられました。東京都内では六十七企業、十五億円の残業代を払わせ、大阪では百三十八社、三千人以上に、四億円を払わせ、愛知では百四十七社、六千人以上に、五億円を払わせました。大きな成果をあげつつあります。連合系の労働組合とでも「緊急要求」での一致と、共同が広がっています。職場から民主的ルールをつくるたたかいを発展させるうえで、わが党の役割は、かけがえのない大きいものがあります。

 いま日本列島どこでも、不況に苦しむ庶民の怨嗟(えんさ)と怒りが渦巻いています。多くの国民は、たたかわねば、みずからの生活がたちゆかない、切迫した状況におかれています。その時々の国民の苦難を軽減することにこそ、わが党の立党の精神があります。

 同志のみなさん、「緊急要求」をかかげ、「たたかいの組織者」として、経済危機から暮らしを守る国民的大運動をつくりあげる先頭にたって奮闘しようではありませんか。

(3)「不良債権処理の加速」――経済主権を根本から脅かす暴挙を許すな

 小泉・竹中体制が、「不良債権処理の加速」策としてすすめていることは、日本の経済主権を根本から脅かす、より深刻な問題をはらんでいます。

日本の金融と産業を、米国の大手投資銀行の支配下におくくわだて

 この動きは、つねに米国の圧力に屈従する形で、すすめられています。米国のねらいは、アメリカ型金融システムを日本におしつけ、日本の金融と産業を、米国の大手投資銀行や投資ファンドの支配下におくところにあることを、直視しなければなりません。

 じっさい小泉政権が、「不良債権処理の加速」策として策定した方針は、銀行の資産査定でも、銀行の自己資本の算定でも、アメリカ流の方法をそのままあてはめ、そのことによって銀行の自己資本を人為的に激減させるというものです。この方針のもとで、銀行は、自己資本比率を引き上げるために、猛烈な貸しはがし=資産圧縮に走らざるをえなくなっています。日本総合研究所の試算では、この方針のもとでは、大手銀行だけで最大九十三兆円もの貸し出し減がおこります。そしてこの方針にたえられない銀行は、莫大(ばくだい)な税金を注入され「国有化」されることになります。

 この結果何がおこるでしょうか。米国中心の外資による日本の金融と産業の買収であります。その先がけが、あの新生銀行であります。旧長銀が破綻し、三兆円をこえる国民の税金を注ぎ込んで「国有化」され、不良債権を税金できれいに処理したうえで、この銀行は、米国の投資会社にただ同然で売り飛ばされ、米国金融資本に巨額の利益をもたらしました。

 竹中大臣が「学べ」といっている韓国の実情も、この方針のゆきつく先をしめしています。九七年に経済危機におちいった韓国は、IMF(国際通貨基金)から「資金援助」とひきかえに、「構造調整プログラム」を強要されました。その中心は、主要銀行の閉鎖・整理でした。その結果は、巨額の税金を投入しての主要銀行の国有化であり、米国を中心とする外資による買収でした。これに「学べ」といって恥じない竹中大臣は、アメリカの大手投資銀行の代理人というほかない人物であり、大臣にとどまる資格はないということをはっきりいわなければなりません。

この破綻は、アメリカでも、アジアやロシアでも、証明ずみ

 小泉・竹中体制がおしつけようという、アメリカ型金融システムが、目先の株価をつりあげることだけを目標に、いかがわしい金融技術を駆使し、いかがわしい投機に熱中する、不正と腐敗にみちたシステムであることは、すでにエンロンやワールドコムの破綻など、本家のアメリカで証明ずみのことです。

 このシステムを、IMFや世界銀行などを通じて、世界におしつけることが、どんな破綻をもたらすかも、すでに経験ずみのことです。九七年のアジア経済危機でも、九八年のロシア経済危機でも、IMFが「援助」とひきかえに、それぞれの国の実情を無視した、市場万能主義と「構造調整」という「処方箋(せん)」をおしつけ、米国企業による銀行と企業の買収がすすみ、国民経済が破綻するという悲惨な結果をまねきました。この「処方箋」が事態を悪化させたことについては、いまでは当事者のIMF自身が認めています。

 アジアのいくつかの国々が、IMFの軍門に下っていったなかで、マレーシアはIMF方式をきっぱり拒否し、外資規制にふみだし、独自の経済再建にとりくんで成功をおさめました。この経験にこそ学ぶべきではないでしょうか。

 自民党の経済政策は、こうして日本の経済主権をみずから売り渡す、売国的というほかないところまで腐敗・堕落しているといわなければなりません。日本共産党は、この動きから、日本の経済主権を守るために、広く経済界の人々もふくめ、立場の違いをこえ、国民的な対話と共同を広げ、たたかいをおこすことを、心からよびかけるものであります。


三、政党状況の新しい局面――日本共産党の値打ちをおおいに語ろう

 つぎに政党状況の新しい局面と、日本共産党の値打ちについてのべます。

(1)多くの政党が訴えるべき政治戦略も、よるべき組織もなくなる状況

 今日の政党状況には、これまでにみられなかった新しい局面が生まれています。

 十月の国政統一補欠選挙の結果、自治体でのあいつぐ無党派首長の誕生などをうけ、あるマスコミは「政党の衰退」と書きました。「自民の衰弱、民主の非力」と書いたマスコミもありました。

 多くの政党が、訴えるべき政治戦略をもたず、よるべき組織ももてなくなった状況のもとで、政党らしい本来の活動を堂々とおこなっている、“政党らしい政党”が日本共産党だけであるというのは、重要な意義をもつ新しい政治局面であります。

与党陣営――自民の支持基盤の崩壊、反共だけが「存在意義」となった公明

 与党陣営をみるとどうでしょうか。あるマスコミは、自民党について、「『小泉人気』の陰で、この政権党の衰弱は確実に進んでいる」とのべ、選挙戦で「業界団体による従来型のテコ入れ」がきかなくなったことを、リアルに描きました。じっさい、長くつづく経済危機と経済政策の破綻のもとで、自民党政治の支持基盤は、土台から崩壊現象をおこしています。これまでの選挙で、「集票組織」として使われた、建設業界、商工会、農協、医師会などで、大規模な“自民党離れ”の現象がおこっています。

 この支持基盤の崩壊のもとで、自民党の組織的な支えとなっているのが、公明党・創価学会です。しかし、この党も与党に入ることで、自ら主張してきた「存在意義」を自己否定するという深刻な矛盾に直面しています。わが党は、公明党が与党入りによって、「福祉」「平和」「清潔」「公約を守る」という、まがりなりにもこの党が掲げていた「四枚看板」がはがれ落ちたとのべましたけれども、この党に残された「存在意義」は、反日本共産党の先兵ということでしかありません。しかし反共だけが「存在意義」の政党が、はたして国民にとって必要でありましょうか。この党はいま、そのことが深刻に問われるところに、みずからの身をおいているわけであります。

野党陣営――自民政治を変える旗印をもてないことが混迷の根本に

 野党陣営はどうでしょうか。わが党は、国会での一致点での野党共闘を、誠実に追求するという姿勢をとってきました。社会保障での三兆円の負担増反対での一致が、四野党でえられたことも、重視しています。同時に、多くの野党が、自民党政治をどう変えるかの旗印と戦略をもてないでいることもまた事実であります。きょう、民主党の鳩山代表が辞任表明するというニュースが伝えられてきましたが、「野党の混迷」といわれる状況が深刻になっていることの根本には、この弱点があるのではないでしょうか。

 歴史的にみますと、一九七〇年代までは、わが党以外の野党も、自民党政治と異なる、独自の路線と活動をもっていました。「大企業中心主義の害悪をただす」ということは、野党であるならば、当時は当然の主張でした。日米安保条約の問題でも、さまざまな色合いの違いはありましたけども、米軍基地が日本にあることを当然とする野党はありませんでした。

 この状況に大きな変化がおこったのが、八〇年代以降でした。わが党以外のすべての党が、日米安保体制と、大企業中心主義という、自民党政治の基本路線を肯定する立場に、身をおくことになりました。この「オール与党」体制は、九三年以降、わが党以外のすべての党が政権与党を経験するなかで、いっそう顕著なものとなりました。

 九七年暮れの新進党の解党などを契機にして、この状況に一定の変化が生まれ、国会内の限定的課題での野党共闘の可能性が生まれるようになっています。同時に、わが党以外の野党が、その基本路線において自民党政治の古い枠組みからぬけだせず、これにかわる新しい政治の展望をしめせないでいることも、事実であります。それは、さきほどのべた「不良債権処理の加速」というブッシュ大統領におしつけられた方針にたいしても、他の野党から異論がおこってこないことにも、あらわれています。

(2)政党本来の立場にたって堂々と活動をすすめる日本共産党の値打ちが光る

 こういう政党状況のなかで、政党本来の立場にたって堂々と活動をすすめる日本共産党の立場はきわだっています。

自民党政治を変革するたしかな路線と戦略をもつ党

 第一に、わが党は、自民党政治を変革する、たしかな路線と戦略をもつ党です。アメリカと大企業の支配を打破して、「国民が主人公」の国づくりを、当面の課題とした党綱領路線はその確固とした土台であります。

 さらに、世界の資本主義体制が、さまざまな矛盾と危機を深めるなかで、二十一世紀の世界が、資本主義を乗り越える新しい社会制度への条件が熟する世紀になるという、壮大な科学的展望のもとに活動する党であります。

どの分野でも建設的な提案をもち、実現のため行動する党

 第二に、わが党は、その路線と戦略を、生きた外交、内政、経済と切り結んで具体化し、どの分野でも建設的な対案をもち、その実現のために行動する党であります。その真価は、すでにのべたイラク問題や日朝問題などでの野党外交、経済危機から国民生活を守る「緊急要求」などで、生き生きとしめされています。

草の根で国民とむすびついて献身する自前の組織をもつ党

 第三に、全国津々浦々に、二万五千の党支部をもち、四十万人をこえる党員を擁し、約四千四百人の地方議員をもち、草の根で国民とむすびついて、国民の利益のために献身する、自前の組織をもっているのも、日本共産党だけであります。この力こそ、わが党が、だれにも気兼ねせず、国民の立場にたって活動することを保障しているのであります。

 この間、全国の支持者のみなさんからお寄せいただいた募金によって新しい党本部ビルの第一期工事が完成しましたが、これもわが党の草の根の力の結晶として、みなさんのご協力にこの場を借りてあらためて感謝を申しあげるものです。

自前のメディアをもち、国民と素晴らしいネットワークをつくっている党

 第四に、「しんぶん赤旗」という自前のメディアをもって、国民とのむすびつきに努力している党が、日本共産党です。このメディアは、これを日々担い、大きくする、全党と支持者のみなさんのたゆまぬ努力によって支えられています。わが党は、「しんぶん赤旗」を通じて、国民との豊かで、人間味があふれ、心がかよう、素晴らしいネットワークをつくりだしています。

 十一月におこなわれた「赤旗まつり」は大きな成功をおさめましたが、そこに参加したあるジャーナリストは、「強烈なカルチャーショックを受けた」として、つぎのような感想を寄せてくれました。

 「赤旗記者が体験記を語り、党の歴史が掲示され、他方、酒を酌み交わしながら、語らっている姿があった。ここは共産党、ここからは党とかかわりがない遊びの部分、という区別なく、両方が、こん然一体となって大衆政党・共産党を醸し出していた。こういう集いに三日間で二十万人以上も参加する。いま、これだけの催しをできる政党が、集団が、日本にあるだろうか。共産党以外には、こうしたイベントができる政党はない。……私は、強いカルチャーショックを受けた。政党とはなにか、をいや応なしに考えさせられ、政治の世界に触れて短くない私だが、私の知らなかった共産党の実像に触れた思いだった」

 たいへん新鮮だったという感想を寄せてくださっております。あれだけの催しを開けるのは、政党としても、集団としても、日本共産党しかない、このことについてのひじょうな驚きが伝わってまいります。

 この党を躍進させてこそ、いま政党状況に生まれている新しい局面を、前むきに打開する道が開かれます。国民の期待にこたえる方向での野党状況の前むきの変化の可能性も生まれてきます。

 同志のみなさん。いま輝く日本共産党の値打ちを、それぞれの党員が、自らの実感と思いをこめて、自由闊達に、おおいに語る選挙戦にしていこうではありませんか。


四、地方政治の新しい流れ、無党派の人々と日本共産党の共同の探求

 つぎに、地方政治の新しい流れ、無党派の人々と日本共産党との共同の探求についてのべます。

(1)新しい流れの広がり――こうした変化がどうして起こっているのか

新しい希望ある地方政治の流れがひろがっている

 八月の全国地方議員代表者会議で、わが党は、全国の自治体の現状を分析し、一方では、自民党政治による自治体への反動支配の害悪がますます深刻となり、「自治体が自治体でなくなる」というべき変質がすすみ、さまざまな矛盾が噴き出していること、他方ではそのなかで、徳島県、長野県、高知県などの県政や、各地の革新・民主自治体などに代表される「自治体らしい自治体」のありかたを取り戻そうという希望ある変化が全国各地に生まれていることを明らかにし、そういう新しい変化をとらえた党の活動の新しい発展がもとめられていることを強調しました。そこにはどこでも、住民が自らの手で、「住民こそ主人公」の地方政治をきずいていこうという、ドラマチックな過程があります。

 その後のわずかな期間にも、ひきつづき地方政治の新しい流れの注目すべき広がりがみられます。九月には、福島県桑折町、長野県塩尻市で、十一月には熊本市、兵庫県尼崎市、長野県箕輪町、福島県川俣町で、わが党が無党派の人々と共同して、推薦、支持、支援した無党派の首長候補が、自民・公明連合などの候補を破って勝利しました。どこでも公明党・創価学会を先頭にした反共攻撃が激しくおこなわれましたが、それを住民とともに打ち破って、勝利したことも重要であります。

 これらの流れは、偶然ではありません。尼崎の勝利について一般紙も、「主な政党がこぞって支持し、大多数の団体の推薦を受けた一見、盤石の体制の候補者が敗れる。常識的には信じがたいが、政治離れしていた無党派がいったん動き出すと、政党や団体の連合はたちまち見掛け倒しの実態をさらけ出している」「今や閉そく感から抜け出したいという空気はどこにも満ちている」(「日経」十一月二十一日付)と書きました。

地方自治体は、自民党政治の矛盾の集中点に

 こうした変化は、どうしておこっているのでしょうか。

 一つは、地方自治体が、自民党政治の矛盾とゆきづまりの集中点になっていることがあげられます。

 国政での経済政策の破綻にくわえて、地方にたいして、地方交付税や補助金切り捨て、市町村合併の強要など、自治体をまるごと切り捨てようという動きが強まるなかで、保守層もふくめてこれまでの利権型政治を見直そうという動きが、深いところで広がっています。十一月二十七日の全国町村長大会で、「市町村合併の強制に反対」「小規模市町村の切り捨て絶対反対」「地方交付税切り捨て反対」などを明記した「緊急重点決議」が全会一致で決定されたことは、画期的な出来事であります。巨大開発優先、福祉と暮らし切り捨てという「逆立ち」政治の矛盾が深刻になるもとで、さまざまな形での無党派の住民運動、市民運動が、多様な形で広がっています。

 わが党以外の諸党の「衰退」といわれる状況は、地方政治ではいっそう顕著であり、地方政治の改革を願う無党派の方々が、政治を変えようと思ったら、そのよりどころになる政党は日本共産党しかないというもとで、新しい共同の流れが広がっているのであります。

無党派と党との共同の背景――党議員団の活動への信頼が

 いま一つは、こうした無党派の人々と党の共同の前進の背景には、それぞれの地域での、党と議員団の奮闘への広い住民の信頼があるということです。

 大田民主県政を誕生させた徳島県でも、田中知事の再選をかちとり県内の民主自治体が十四に増えている長野県でも、橋本県政が同和行政で転換にふみだすという新たな前進をするなかで県内の民主自治体が九つに増えている高知県でも、それぞれの県政で、党議員団がはたしている役割巨大開発をストップさせる、利権政治を刷新する、「解同」(部落解放同盟)の利権あさりへの勇気ある批判を貫くなどの役割が、広く住民全体の信頼をえるなかで変化がおこっています。

 福島地区では、この一年の間に、福島市、霊山町、桑折町、川俣町の一市三町の民主自治体を誕生させていますけども、ここでも、それぞれの自治体での議員団の奮闘とともに、五人になり交渉会派入りした党県議団の活動と実績への信頼があります。また秋田・湯沢市、霊山町と相次いで誕生した党員首長自治体の影響も東北地方にひろがっています。

(2)変化を広い視野でとらえた党活動の発展を――新しい創造的探求がもとめられる

 地方政治におけるこうした新しい変化を、広い視野にたってとらえ、党の活動の新しい発展をはかることがもとめられています。それは一律でなく、それぞれの地方の現状にそくして、原則性と柔軟性をむすびつけた、創造的探求を必要としています。

問題点は率直に指摘しながら、前進面をのばしていく対応を

 程度の差はあっても前むきの変化がみられる自治体では、問題点は率直に指摘しながらも、前進面をのばしていく対応が必要です。全国各地で、大型開発が財政破綻から実態としてたちゆかなくなり、これをきっかけに行政のあり方の見直しをはじめている自治体が生まれています。合併の押しつけ反対をつうじて、その自治体のあり方について、住民がまさに主人公となって広く討論するなかで、党と首長に新たな共同の関係が生まれ、このなかから自らの自治体を自ら守り、発展させようという新しい機運が広がっている自治体も全国各地で生まれています。

 自治体が、不十分であっても、住民の方にむいた努力をしているとき、その変化を無視した対応をしては、かえって住民から孤立することになります。同時に、そのさいにも問題点については、率直にただすという党らしい原則性も忘れてはなりません。

 徳島県は、わが党が与党の民主県政ですけれども、県政与党として知事を支え、利権政治や公共事業の改革に共同してとりくみつつ、同和問題という県政の弱点については、堂々とただすという立場を党県議団がつらぬいていることは重要です。

悪政の告発とともに、改革の提案と住民運動で、行政を動かす

 多数の自治体では、「オール与党」体制がつづき、「自治体が自治体でなくなる」というべき変質が進行しています。そうした自治体では、住民の立場にたって、悪政を告発することが必要であることはいうまでもありません。同時に、そのこととむすびつけて、住民の要求にたった改革の提案を鮮明に打ち出し、その実現のために住民とともに運動を組織し、一歩でも二歩でも行政を現実に動かしていくことが、重要であります。そのなかで、住民とともに自治体の民主的改革の先頭にたつ党の値打ちと実績を、うきぼりにしていくことがもとめられます。

「柔軟で新鮮な発想」にたって、広い無党派層への働きかけを

 党のおしだし方、活動の仕方を、「柔軟で新鮮な発想」にたって、いまの有権者の気持ちにあったものに発展させることも重要です。有権者が、自民党政治と「オール与党」の体制に、不信をもつ状況が広がるなかで、従来の保守層もふくめ無党派層が大きく増え、さまざまな形での自発的な住民運動が広がっている。こうした政治状況のもとで、わが党の結論をおしつけるのでなく、政党離れした無党派の人々の実際の経験、実際の体験にそくして、政治は変えられるという希望と展望をしめし、わが党の姿をおのずと理解してもらい、自然な形で共同がすすむような活動の発展に、とりくみたいと思います。

首長選挙――基本方針を堅持すると同時に、必要におうじ柔軟な対応も

 首長選挙では、自民党中心の従来の支配体制の崩壊過程のなかで、「党と政策協定をむすぶ」という従来の枠にはまらない無党派候補が、自民党型政治を打ち倒すという事例がでてきています。

 この間の選挙でも、政策協定をむすんでの勝利は、福島県の桑折町と川俣町であり、長野県塩尻市、熊本市、兵庫県尼崎市、長野県箕輪町では、政策協定にはいたらないが、党と無党派との共同で勝利をかちとる経験が、多様な形態で生まれました。

 首長選挙にたいするわが党の基本方針は、三中総決定で確認しているように、「わが党が、候補者選考、政策、組織など、選挙戦のすべての面で、政党としての政治的、組織的な責任をはたせる」ような共闘をきずくことにあります。これが基本方針です。

 同時に、自治体の民主的改革にむけて住民が広く大同団結するという大局にたって、それぞれのケースごとに、無党派との共同のための柔軟性をもった対応をおこなうことも視野にいれることが大切です。そういう場合であっても、わが党の政治的立場どういう立場で候補者と共同しているのかが、広い有権者に鮮明にされる必要があります。

 地方政治における新しい流れの広がりというのは、日本共産党地方議員団の前進、奮闘と、一体のものです。この力をきたるべき選挙で大きくし、住民との共同をさらに広げることこそ、地方から日本の政治をかえるもっともたしかな力になることに確信をもって、奮闘しようではありませんか。


五、選挙勝利をめざす活動の推進のために

 選挙勝利をめざす活動の推進について報告します。

 いっせい地方選挙と総選挙勝利のための方針は、すでに党大会決定、三中総決定、四中総決定、全国地方議員代表者会議などの方針で明りょうです。現にこれらの方針にもとづいて全党のみなさんが、いま選挙勝利をめざす活動にとりくんでいるわけですから、この報告では、その活動を推進、加速するために留意すべき問題を、つぎの四点にしぼってのべたいと思います。

(1)選挙戦にのぞむ「構え」――二つの面から「攻めの構え」を全党のものに

 第一は、選挙戦にのぞむ党の「構え」の問題です。ここでは二つの面から「攻めの構え」を、全党のものにすることの重要性を強調したいと思います。

議席増はもとより現有議席確保も、「攻めの構え」をつらぬいてこそ

 一つは、議席増はもとより、現有議席を確保することも、「攻め」のとりくみをつらぬいてこそ、はじめて可能になる、容易ではない課題であるということです。

 一九九九年のいっせい地方選挙は、前年の九八年の参院選で約八百二十万票という史上最高の得票をえた躍進の流れのなかの選挙でした。しかし、わが党の躍進に体制的な危機感をつのらせた反共・反動勢力の攻撃のなかで、その後の二〇〇〇年の総選挙、二〇〇一年の参院選で、わが党は悔しい後退をきっし、昨年の参院比例票は八百二十万票から四百三十三万票まで後退しました。いったん押し込まれたところから、逆に押し返し、新たな党躍進の波をつくる「反転攻勢」によって、新しい上げ潮の流れをつくりだしてこそ、勝利をつかむことができます。

 九九年の選挙でえた議席や得票を、「既得の陣地」であるかのようにみなして、「現有議席だから何とかなる」という甘い構えのままのとりくみに終わったら、大きな失敗におちいることになります。現有議席の確保も、四百三十三万票という参院比例票の水準を大幅に上積みする攻勢的な活動によってこそかちとれます。中間地方選挙の結果をみましても、こうした「攻めの構え」のとりくみになっていたかどうかが、明暗をわける最大の分岐となっています。

 「反転攻勢」後退から前進に転ずることは、全党の知恵と力を総結集してはじめて実現できる大きな事業だということを、お互いに肝に銘じて奮闘したいと思います。

客観的条件をくみつくして――得票増に正面からいどむ

 いま一つは、わが党が新しい上げ潮をつくる客観的条件は、国政でも、地方政治でも、おおいにあるということであります。その条件をくみつくす「攻め」の選挙をやりぬこうではないかということを、よびかけたいのであります。

 世界の動きは、激動と危機をはらみながらも、国連憲章にもとづく平和秩序をつくろうという流れが、国際社会の多数となっています。自民党政治は、外交でも、経済でも、国民を代表して国のかじ取りをする能力も資格も失っています。地方政治をみても、古い利権政治がその基盤をうしない、「住民が主人公」の希望ある流れが、広がっています。日本共産党の値打ちは、世界でも、日本でも、地方でも、進歩的政治の担い手として輝いています。全党が、この値打ちをおおいに学び、自らのものとしておおいに語り、情勢のはらむ客観的条件を攻勢的にくみつくすたたかいをやりきれば、わが党の新たな上げ潮をつくることは必ずできるということに、深い確信をもって奮闘しようではありませんか。

 ここで強調したいのは、議席確保、議席増とともに、得票増に正面から挑むということであります。どんな選挙でも、必ず得票を増やすことに執念をもってとりくむことを、全党の確固たる「構え」として確立することを、あらためてよびかけたいと思います。「当面する選挙にともかく当選すればよし」とする低い志に安住しているとしたら、国民の多数者を結集して民主連合政府をつくることは、いつまでたってもできません。また、そういう姿勢では、当選そのものもおぼつかなくなります。

 きたるべきいっせい地方選挙では、積極的な得票目標を必ずやりぬく姿勢を、党機関から支部にいたるまでしっかり確立し、それにふさわしい政治宣伝、支持拡大目標をやりきり、必ず得票を増やそうではありませんか。そして、この選挙を、総選挙での躍進の土台を一気にきずきあげる選挙にしていこうではありませんか。

(2)公明党・創価学会による反共攻撃の撃破――ウソでかためた攻撃は必ず打ち破れる

 第二は、公明党・創価学会による反共攻撃を撃破する課題であります。反共攻撃というのは、致命的な弱点をもっています。それは、そこには真実がない、ウソだということであります。事実と道理さえ握れば、この攻撃は必ず打ち破ることができます。

 たとえば、この間、公明党は、拉致問題を利用して、反共デマ攻撃をおこなってきました。彼らは、北朝鮮がかかわる問題なら反共の道具になるだろうという、浅はかな党略的打算から、この攻撃をはじめてみたものの、それは自らの足場、自らの歴史さえみない、狭い視野からの愚かなデマ攻撃でした。多くの国民が拉致問題で心を痛めているときに、それを党略に利用して、デマ攻撃の材料にするというのは、およそまともな政党たる資格が問われる行動であります。

 わが党は、この攻撃にたいして、事実にたった反撃をおこなってきました。その反撃のなかで、わが党は、拉致問題の解決のためにわが党がはたしてきた役割を、明らかにしました。また、逆に公明党こそが、北朝鮮が国際的に異常な行動、無法な行動をおこなうようになったまさにその時期から、北朝鮮の個人崇拝の体制に迎合をつづけてきた党であることを、ぬきさしならない詳細な事実の裏付けをもって証明しました。

 しかし、どんなに論戦でデマの底がわれても、無反省でデマをまきちらすのも、この党ならではの特徴であります。この毒素を一掃する対話を広くおこなう必要があります。わが党の反撃は、パンフレット『北朝鮮問題 「反省」すべきは公明党ではないのか』におさめられています。この内容をよく読み、思い切って広く普及しようではありませんか。公明党がいかにウソつきの党であり、外国迎合の党であり、党利党略の党であるか、政党の資格にかかわるその本質を、広く明らかにし、この問題でわが党がはたしてきた先駆的役割を、多くの国民に知ってもらう活動に、とりくもうではありませんか。

 わが党は、今後とも不当な攻撃にたいしては、相手の本性が逆にうきぼりになるところまで、徹底した反撃をおこないます。これは日本の民主主義を守るうえでの、わが党の責任でもあるということを、ここで確認したいと思います。

(3)党員と読者をふやし、“読者とともにたたかう選挙”に

 第三に強調したいのは、広い有権者への働きかけとむすびつけて、党員と「しんぶん赤旗」読者を増やし、ともにたたかう選挙戦としていくことです。

 四中総後の党勢拡大は、党員拡大では、全国的に、六カ月連続して着実な前進をしつづけていることは重要であり、「五十万の党」をめざし、ひきつづき「党建設の根幹」として継続的に前進をはかる努力が必要であります。

 「しんぶん赤旗」読者の拡大では、貴重な前進をつづけている地方党組織も生まれていますが、全国的にはこの分野の持続的拡大を定着させることには、成功しているとはいえないのが現状です。

 「いっせい地方選挙までに、読者で、前回比を回復・突破」するという目標を堅持し、党勢拡大の上げ潮をつくりだし、新しい活力をえながら選挙をたたかうために、全力をあげたいと思います。

「いついかなるときにも握って離さず」を名実ともにつらぬく

 読者拡大で前進をつづけている党組織に共通する教訓は、「いついかなるときにもこの課題を握って離さず」これを言葉だけでなく名実ともにつらぬいているところにあります。

 四中総後、毎月前進をつづけている宮城県の県委員長は、「いま党建設に思い切って力を入れるべき歴史的時期」という三中総決定の指摘を、みずからの「不動の決意」にしてとりくんできたと語っています。

 前進をかちとっている、福島県の県委員長は、「何が力になったか」と考えると、四中総決定の「『大運動』でかちとった最大の成果は、党建設と党勢拡大を、いついかなるときにも意識的に追求する姿勢が、全党的に強まったことにあります」、「前進の流れを、全党に定着させ、本格的前進の軌道にしっかりのせることができるかどうかは歴史的大事業」という指摘を、「機関としても正面から受け止め、口でいうだけでなく、節目、節目で、たえず実践の手だてをとってきたところに、前進をかちとってきた根本がある」とのべています。

 党勢拡大の重要な意義を否定する人はだれもいません。しかし党勢拡大は、その意義の自覚とともに、「いついかなるときにも意識的に追求する」目的意識性と、それを「支部を主役」に具体化・実践する手だてがともないませんと前進できません。わが党の弱点は、「月間」とか「大運動」といわれると力が入るが、そうでないときや、とくに選挙などが迫ってきて、やらなければならない課題が多くなると、一般的強調はするが、この課題が実践的には横におかれてしまうというところにあります。

 この弱点を、選挙戦にむかう活動のなかでこそ克服するとりくみに、正面から挑戦しようではありませんか。「党勢拡大を言葉だけでなく、いついかなるときにも握って離さず、を名実ともに貫く」という前進のための鉄則を、選挙戦のなかでこそつらぬこうではありませんか。

 党勢拡大は選挙勝利にとって不可欠であるとともに、選挙戦のときこそ党勢拡大のチャンスであります。選挙戦というのは、わが党の総合的な力がもっとも発揮されるとりくみであり、国民の政治的関心も高まります。宣伝、対話、要求運動、演説会など、あらゆる活動とむすびつけて、この課題に意識的にとりくむなら、大きな前進の道が開かれます。ここでも「攻めの構え」をつらぬいて、奮闘しようではありませんか。

「対話アンケート」の活動を全支部、全党員の運動に

 いま一つ、この問題で強調したいのは、「しんぶん赤旗」の読者の力をかり、ともに選挙をたたかうとりくみを重視することであります。

 四中総決定では、“「しんぶん赤旗」中心の党活動”を軌道にのせるためにも、「一人ひとりの党員が読者と、日常的に、またさまざまな折にふれて、党と『しんぶん赤旗』についての対話をおこない、相手の声や要望に耳を傾け、人間的な信頼をきずく」ことをよびかけました。

 この間とりくみがはじめられた読者との「対話アンケート」の活動は、この方針を具体化したものであり、はじめたところではどこでも大きな力を発揮し、どこでも確信を広げています。「義理でとってくれていると思っていたが、読んでくれていてうれしかった」という声もありますし、「読者の状況や要望がまるごとわかり、心のかようむすびつきが強まった」という声もありますし、「『しんぶん赤旗』の値打ちが読者との対話をつうじて再認識でき、拡大の意欲がわいた」などの声もあります。やってよかったという声が、共通して寄せられています。

 これを選挙戦にむけた活動として、継続的に発展させ、全支部、全党員の運動にし、“読者とともにたたかう選挙”にしていくことを、強くよびかけるものです。

(4)“住民とともにたたかう選挙”――後援会活動を思い切って重視して

 第四は、“広く住民とともにたたかう選挙”にしていこうということです。そのうえで、日本共産党後援会の活動を、思い切って重視することをよびかけたいと思います。

 すでにみてきたように、自民党政治の矛盾が深刻になるもとで、従来の政治を変えたいと願う保守層もふくむ無党派の人々が、さらに一歩すすんで党とさまざまな形で共同し、党を支援してくれる可能性が広がっています。その可能性をくみつくすうえで、後援会員を増やし、可能な形で支援をお願いしていくことは、いまきわめて重要であります。

高知県党組織の経験――「ニュース」を軸に広範な人々を後援会に

 この点で、高知県党組織の活動には、学ぶべき重要な教訓があります。高知県では、九九年のいっせい地方選挙いらい、二十四市町村でおこなわれた中間地方選挙で、五十五人の全員当選をかちとり、六議席を増やしています。この前進の一つの要因として、ここでとりくまれている後援会活動には、注目すべきものがあると考えます。

 ――まず、後援会員は、「支持を広げてくれる人」に限定しないで、「支持してくれる人はだれでも後援会員に」「政治を変えたいと願っている人はだれでも後援会員に」、これを合言葉にして、もっとも幅広い人々を後援会に迎え入れているということです。

 ――そして、「後援会ニュース」を軸に、後援会をつくりあげています。「共産党の後援会ニュースを読んでいただけますか」と働きかけて、「いいですよ」と承諾してくれた人は後援会員として、継続的にニュースを配り、継続的に対話にとりくみ、要求を聞き、信頼関係を強めています。こうした積み重ねの結果、選挙戦の本番に近づきますと、「何票広げた」と相手の側からいってきてくれるなど、だんだん盛り上がってきて、さまざまな協力がえられているのも特徴です。

 ――このとりくみは、早くからの選挙準備になります。また日常的に無理のない選挙活動となります。そして働きかければ働きかけるだけ後援会員はふえますから、毎日前進できる活動として、選挙が楽しくなるということも聞きました。

 ――こうして全県で四万九千人という、「しんぶん赤旗」読者の三倍以上、ほぼ参院比例票に匹敵する後援会員がつくられ、この人々と協力して、さまざまな選挙をたたかう体制がつくられています。

 「後援会ニュース」を軸に、広く後援会員をつくり、住民とともに選挙をたたかうことが、選挙勝利の大きな力になる。これは高知県の経験だけではなく、全国各地のすすんだとりくみでも、共通した教訓といえると思います。

 このとりくみに学び、党機関、支部、議員が、協力して、後援会の網の目を地域、職場、学園に、くまなくつくりあげることを、よびかけたいと思います。また、各分野ごとの後援会活動も、同じ見地で、広く発展させることをよびかけたいと思います。

党と国民の結びつきの探求の課題としても大きく位置づける

 この活動は、党と国民との組織的むすびつきの探求の課題としても、位置づける必要があります。第二十二回党大会決定は、この問題をつぎのように指摘しました。

 「九〇年代の十年間は、日本共産党が、政治的影響力を全体として前進させた十年間だったが、組織の実力はそれに追いつかず、立ち遅れと逆行の傾向が克服できていない。わが党は、国政選挙で七百万人から八百万人という人々の支持をえているが、日常の活動によって組織的にむすびついている人々はその一部分である。その矛盾は、総選挙での後退にも大きくあらわれた」

 わが党が、政治戦で、党を支持してくれた数百万の人々と、いかに日常的に組織的にむすびつくか。これは、ほんとうに大きな探求の課題であるわけですが、そのための根本の力となるのは、党員と「しんぶん赤旗」読者をふやすことにあることはいうまでもありません。同時に、日本共産党後援会員という立場で、さまざまな形で党と日常的にむすびつき、可能な形で党を支援してくださる人々の輪をどう広げるかも、きわめて重要であります。

 こういう見地で、この問題に新たな意気込みでとりくむことを提案するものです。

いっせい地方選挙と総選挙のとりくみを一体のものとして

 総選挙については、経済危機の深まりなどのなかで、政局は予断を許さない流動的な局面に入っており、総選挙勝利をめざすとりくみを、いっせい地方選挙勝利をめざすとりくみと一体ですすめることが必要です。すみやかな予定候補の決定をはじめ、いつ解散となっても対応できる備えをとっておく必要があります。

 同志のみなさん。「支部が主役」ですべての党員が参加するとりくみをつくりながら、“読者とともにたたかう選挙戦”、“住民とともにたたかう選挙戦”を、いまの激動の情勢にふさわしくダイナミックに展開し、いま輝く党の値打ちを広く国民のなかに明らかにし、きたるべきいっせい地方選挙、総選挙で、必ず勝利者になるために、力をつくそうではありませんか。


志位委員長の結語

 討論の結語をおこないます。この総会は、一日間の会議となりましたが、中央役員のみなさんのたいへん積極的な討論によって、前進への新しい決意がみなぎった総会となりました。

“政党らしい政党”――党の値打ちへの確信と誇りを全党のものとして

 全国から、現在、数百の感想が寄せられておりますが、それを見ますと、わが党が、いまの情勢のもとで“政党らしい政党”としての活動を堂々とおこなっている唯一の党であることにたいする確信、誇りが、共通してのべられているのが特徴です。これは、幹部会報告の提起の要の問題でありますが、その要の問題を全国の同志のみなさんがしっかり受け止めてくださっているのはたいへん心強いことだと、感想を読みました。

 報告でものべたように、外交、経済、地方政治、どの分野でも、党の値打ちがこんなに光っているときはありません。そしてそれは今日の政党状況――他党の「混迷」や「衰退」といわれる状況との対比のなかで、とりわけきわだっています。

 さきほど寄せられた声ですが、ある宣伝・世論調査に携わる制作会社の社長さんが、最近の政党状況と日本共産党にふれて、こういう分析と意見を寄せています。

 「共産党に対して有権者の意識の中に『ブレない政党』という、共産党への見方が出てきているように思う。他の政党が、付和雷同、右往左往、軽佻(けいちょう)浮薄、しっかり腰を落として取り組んでいるように見えないなかで、こつこつ地域活動を積み上げ、有権者に今の政治を告発する姿勢を崩さない、小泉内閣に対しては成立から今日まで、基本的な立場を変えていない、政党不信のなかで『ブレない政党』、共産党は有権者の受け皿になりうるし、そのチャンスがあるように思える。このチャンスを共産党がうまく生かさない手はない」

 第三者からみても、日本共産党にたいするこういう見方がでてきているのです。ほんとうにいま、わが党の値打ちが輝いている、これを全党が学び、誇りとし、おおいに語る、そして、選挙に勝ち抜いていく。全党がそういう姿勢にたち、元気よく、意気高くたたかえるようにするところに、いまの指導と活動の要があるということを強調したいと思います。

地方政治における希望ある新しい流れが生き生きと交流

 それから、この総会は、地方政治における希望ある新しい流れが生き生きと交流された総会となりました。徳島県、長野県、高知県、兵庫県の尼崎市、熊本市、福島地区などでおこっている新しい変化について、たいへんリアルに、それぞれの県の同志から語られました。それを聞いて、共通した特徴だと感じたことが二つあります。

 一つは、自民党の支持基盤の深刻な崩れが、すすんでいるということです。福島の県委員長は、保守の人々もふくめて、どこでも「いまの政治を変えてくれ」という声が、あふれ出てくる、そのときに共同できる政党は共産党しかないというなかで、新しい変化が広がる状況があるということを報告しました。

 これまで自民党というのは、公共事業などを中心として、税金を流し込んで利権の構造をつくり、支持基盤を固めてきたわけですけれど、経済危機・財政破綻のなかで、もはやそれがままならなくなるなかで、草の根からの支持基盤の崩壊がはじまっている。そういう劇的な変化が、全国どこでも生まれていることが、討論でも反映されました。

 いま一つは、そういう変化がおこったときに、日本共産党が柔軟に対応し、政治を変えたいと願う住民の大同団結をはかるという大きな見地、大きな立場で活動しているというのも、新しい変化をつくっているところの共通した特徴でした。

無党派の人々と党との共同――要求にもとづく共同を基本において

 無党派の人々とわが党の共同という課題が、新しい情勢のもとでの新しい探求の課題になっているわけです。ただこれは、むずかしいことではないと思います。この共同の根本となるのは、一言でいえば要求にもとづく共同です。それは討論のなかでもしめされました。

 徳島県の県委員長は、民主県政を支え前進させている力、日本共産党への信頼を広げている力は、県民要求にもとづく共同なのだということをずばり発言しました。徳島では、吉野川可動堰(ぜき)反対の運動、同和行政の民主的転換をもとめるたたかいなど、市民の切実な要求での共同が大きく広がるなかで変化がおこっています。

 京都府の副委員長は、一連の中間選挙で勝利をかちとっている教訓を発言しました。大山崎町や舞鶴市などの教訓であります。京都の同志の発言でも、どこでも要求にもとづく草の根の共同が、幅広く展開されているとのべていたことは、たいへんに大事な点だと思います。水道料金の問題、介護の問題、国保の問題、そういうさまざまな切実な住民の要求で、何千という署名が集まり、さまざまな運動がおこり、運動のなかで広い人々と党がむすびつく、そういう流れをつくるなかで勝利をかちとったという経験でした。これは大事な法則的な活動方向をしめしていると思います。

 無党派の人々との共同という点では、経済問題での共同もひじょうに大事です。幹部会報告では、経済問題についての日本共産党の立場を、「四つの緊急要求」を掲げて国民の暮らしを守るという大きな柱とともに、「不良債権処理の加速」という方針を許さないという立場にたって、日本の経済主権を守るということを、もう一つの大きな柱として提起をしました。

 国民の暮らしを守り、日本の経済主権を守る、という二つの大きな立場をしめして、それぞれの地域の経済団体、労働団体、自治体関係者などとの、幅広い対話が必要です。そしてそれぞれの地域経済をどう立て直していくのかの探求と共同にも力を入れたいと思います。

 無党派の人々との共同を前進させる流れをつくることとむすびつけて、幹部会報告でも提起した、“読者とともに選挙をたたかう”、“住民とともに選挙をたたかう”――そのために日本共産党後援会をしっかりつくる、この提起もぜひ本格的な具体化をきょうの会議をきっかけにして、大きくすすめたいと思います。

「攻めの構え」ということに関して――得票増にも正面から挑戦する選挙に

 選挙にのぞむ「構え」について、幹部会報告では「二つの意味で攻めの構えを」という提起をいたしました。東京の都委員長が「今度の選挙では、議席増はもとより、現有議席を確保すること自体が、『攻めの構え』が必要だということが、腹におちたところで変化がおこっている」という発言をしました。

 前回の議席や得票を、「既得の陣地」とみなしたら大失敗をすることになる。われわれが大きな躍進をかちとるなかで、危機感をもった反動勢力の反攻によって、ある程度われわれが押された。その押された状態を押し返すというたたかいをやってこそ、勝利がかちとれるということを幹部会報告でも強調したわけですが、そこをつかんだところでほんとうの意味での底力がでているということは、討論でも明らかにされました。

 これは、それぞれの県、地区、市町村、選挙区、それぞれのところで、勝利のためにどういう「構え」が必要なのかということを、自分たちの足もとをしっかりみながら具体的に明らかにしていくことがひじょうに大切になります。

 幹部会報告では「党の躍進・前進の客観的な条件をくみつくす。そして必ず得票増をはたそう」という提起をいたしました。得票増に正面から挑戦しようという提起です。はっきり言いまして、わが党はここが弱くなっているわけです。「当選しさえすればよい」というところに安住する傾向が、少なくないところで存在しているわけです。これをふっきろう。これを正面から突破しようではないかということが、幹部会報告でのひじょうに大きな強調点であります。「攻めの構え」にたって必ず得票増を――この見地を、選挙戦の実際のとりくみのなかで、つらぬこうではありませんか。

 なお、候補者決定の到達は76%です。攻めようと思っても先頭に立つ人がいないという状態も残されています。これは一刻も放置できません。どんなに遅くとも年内には、必ず候補者を決めきって、意気高く選挙戦に全党が立ち上がれる状況を、党機関の責任でつくることが必要です。

公明党・創価学会の反共攻撃への反撃――草の根のたたかいで国民的決着がつくまで

 最後に、公明党・創価学会の反共攻撃にたいする反撃の問題です。この問題での指導と活動の要は、この攻撃は必ず打破できるという確信を、全党のものにすることにあります。相手の攻撃というのは、党略で事実をゆがめるというものであって、致命的な弱点がある。報告でものべたように真実でない、ウソだというのが弱点です。この弱点をしっかりつかんで、意気高く、堂々と打ち破る。

 そして、このたたかいは、草の根でのたたかいで国民的な決着がつくまで、徹底した反撃をやることが必要であります。京都の大山崎町の選挙で、相手が激しい攻撃を仕掛けてきた。それにたいする果敢な反撃をおこなうなかで、逆に、公明党が孤立するという場面もつくられたという発言がされました。「公明党は悪口ばかりいっている」というような批判の声が住民のなかから出てくる。幹部会報告でものべたように、反共だけが「存在意義」だ、何のためにこんな党があるのかという批判が、住民のなかから出てくる。そういうところまで反撃をやっています。論戦で問い詰めたら、相手は結局なにも答えられない。真実は何も知らない。自分たちの歴史さえ知らない。こういう状況がはっきりしたという報告もありました。

 じっさいに、いまの拉致問題を利用した攻撃でも、その反論として、パンフレットに収録した論文でものべている、たとえば一九七二年に金日成の個人崇拝に迎合した「共同声明」を出していることや、あるいは一九九七年に藤井代表が金正日総書記就任の祝電で「金正日閣下の指導体制の下でのご繁栄」といっていることなど、事実を突きつけたら相手は何も答えられない。これが相手の実態です。

 この問題で、わが党は、日本の民主主義を守る、国民の暮らしや平和を守る、こういう大きな大義にたっています。それにたいする最も邪悪な逆流にたいして、徹底した反撃をくわえるというのがわれわれの立場です。ここに確信をもって、相手が見境なく攻撃にのりだしたら逆に孤立し、わが党の姿が反撃をつうじておおいに輝くというところまで、このたたかいはやりきりたいと思います。

 幹部会報告と討論をふまえ、以上のような点も、今後の選挙戦のなかで全党がしっかり握って奮闘しましょう。いっせい地方選挙、総選挙での躍進のために、中央役員が全党の先頭になってがんばりぬくということをお互いに誓いあいまして、討論の結語といたします。ともにがんばりましょう。


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