2002年12月3日(火)「しんぶん赤旗」
検査情報が業者側に事前に通知され、検査作業にも業者が深くかかわっていた――。BSE(牛海綿状脳症)対策の国産牛肉買い取り事業で大阪府同和食肉事業協同組合連合会(府同食)、大阪府食肉事業協同組合連合会(府肉連)を通じて買い取られた牛肉を保管していた大阪食品流通センター(大阪府堺市)での検品作業で、冷凍倉庫のどの牛肉を検査するかが事前に検査を受ける側に知らされていたことが本紙の調べで明らかになりました。
この検査を実施した農水省の外郭団体・農畜産業振興事業団は、業者側に事前通知をしていたことを本紙に認めました。
府同食、府肉連が持ちこんだ検査対象牛肉のなかでもっとも多かったのは大阪の大手食肉業者、ハンナングループのもの。同グループを率いる浅田満氏は、府同食の会長、府肉連の副会長で、検品作業がおこなわれた大阪食品流通センターも浅田氏が取締役をつとめるグループ系企業でした。
買い取り牛肉に不正がないかなどを調べる検品は、当初、一部の牛肉の箱を抜き取る抽出検査で実施され、大阪食品流通センターに保管された分は、ことし一月十一日の午前中におこなわれました。
同事業団によると、検品する牛肉のロット番号(倉庫の保管区分単位)を検査実施の二、三日前に府同食と府肉連の上部組織である全国食肉事業協同組合連合会(全肉連)に知らせたといいます。
当日の作業では、センター職員がフォークリフトで、事前に指定されたロット番号の中から三十箱程度を冷凍倉庫の外の荷さばき場所に搬出。その際、事業団職員は冷凍倉庫内にも入らず、運ばれてきた牛肉箱から選んで検査したといいます。
どの範囲から「抽出」されるかを検査される側が知っており、しかも倉庫からの搬出も業者側の会社がおこなっていたわけで、「抽出検査」とはよべない実態が浮かび上がってきます。
二月中旬から実施された全ロット検品(すべててのロットから箱を抜き取る検査)でも、「基本的には同様の手順でおこなった」と、同事業団は認めています。同センターに保管されていた千七百十八トンの牛肉は、この不十分な検査だけで、焼却処分が可能となり、全量が燃やされてしまいました。
同事業団企画課の担当者は「急にいわれても対応できないという要望があり、検査する日時とロット番号は、どの倉庫の検査でも事業主体(業界団体)に事前通知していた」と認めています。
検査に立ち会った農水省食肉鶏卵課の技官も、「他にやり方があったのではないかという意見も聞くが、当時は、あの方法で問題はなかった」としています。
大阪食品流通センターは「答える必要はない」などと話しています。