2002年12月1日(日)「しんぶん赤旗」
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「フィアットは経営失敗の責任を労働者に押し付けるな」―業績不振が続くイタリアの自動車最大手フィアットが十月上旬に発表した大量解雇計画に対し、労働者による反対運動が連日のように続いています。今では各地で、地域経済への影響を懸念する自治体関係者や住民、学生らも加わる地域あげての運動に発展しています。(ローマで島田峰隆 写真も)
「子どもはまだ十二歳と十四歳。月三百六十五ユーロ(約四万四千円)の家賃に加え、水光熱費も必要だ。解雇されるとどうやって生きていけばいいんだ? 会社は労働者に責任をかぶせるやり方を改めるべきだ」
二十六日にローマで行われた解雇撤回を求める全国デモ行進。シチリア州のテルミニ・イメレゼ工場で二十三年間働くボルディノさん(41)は、デモの先頭を歩きながらこう語ります。
フィアットが発表した計画は、国内従業員の20%にあたる約八千人を解雇し、イメレゼ工場は完全閉鎖する内容です。フィアットはイタリア産業の柱ともいえる大企業です。イタリア労働総同盟の試算によると、今回のリストラにより下請け企業も含めて計五万人が職を失うと見込まれ、その影響は計り知れません。
労働者は機敏に反応しました。発表直後からストライキやデモ行進を行い、全国レベルのストもすでに数回実施。今では各地で住民が反対委員会をつくったり、自治体関係者や学生も運動に加わっています。
フィアット本社のあるトリノ県は二十六日のデモに代表団を派遣しました。ガンバ副知事はいいます。
「トリノ県でフィアット関連企業に勤める労働者はフィアット労働者の二・二倍程度。解雇が強行されると地元経済への打撃は避けられない。地域の将来を守るためにも解雇計画の見直しは不可欠だ」
政労使による交渉も断続的に続いています。労組側は解雇は「受け入れられない」と繰り返し表明。全体あるいは一部の労働時間を短縮して解雇を避ける「連帯契約制度」の活用などを提案して、解雇回避を最後まで要求しています。
会社側は十二月二日にも解雇計画の第一弾として、一時帰休を実施(給与の80%を一定期間保障する「給与補償金庫」を適用)する予定でした。しかし労働者のたたかいも反映し二十五日に行われた交渉では、当面十日間交渉をさらに継続することで合意、今交渉はヤマ場を迎えています。
会社側は解雇強行の姿勢を崩しておらず、情勢は予断を許しません。経営陣の一人は二十五日、イメレゼ工場はいったん閉鎖しても「来年六月に再開する」などと述べましたが、公式な立場とはされていません。
労組はとりあえずの交渉終了期限とされる十二月五日までに、再びストをうつことを決定。ボルディノさんは「本当のたたかいはこれからだ。解雇しないという約束を得るまで、今後も運動を続けなければならない」と決意を語っています。