日本共産党

2002年11月30日(土)「しんぶん赤旗」

市町村合併の押しつけノー

まちの未来は市民が決める

岡山・玉野市


 小泉内閣・与党が強めている押しつけ市町村合併。全国町村長大会(二十七日)が緊急決議をあげるなど猛反発、「まちの将来は住民自身の手で」と、押しつけ合併反対、住民投票を求める運動も広がっています。


岡山・玉野市

“政令市構想”に待った

「住民投票で」が96%

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 岡山県では、岡山、玉野両市と灘崎町を合併する「県南政令市構想」をめぐり、衝撃が走っています。

 玉野市議会の全議員で構成する合併問題研究懇談会の小委員会(全会派代表が参加)が二十六日、「(市町村合併特例法による)二〇〇五年三月という期限を定めた合併推進は時期尚早」「拙速にすべきでない」との報告を発表したからです。

 「県南政令市構想研究会」の会長を務めるのは山根敬則・玉野市長。この十二日、来年六月にも法定合併協議会の設置をめざすとしていました。よって立つべき市議会から「待った!」をかけられた形です。協議会設置には議会の議決が必要で、「設置は困難が予想される」(山陽新聞二十七日付)との見方が広がっています。

 市民にとっては、ふってわいた合併論議でした。山根市長が「岡山市との合併も視野に」と、突然いい出したのは昨年の十月、市長選直後でした。

 日本共産党市議団(松田達雄団長)は、「市長選では一言もふれないで、いきなり玉野市をなくすというのは、公約違反」と訴えました。保守の市議からも、「市民に説明できない」と声が上がりました。

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市民の激励にこたえ、宣伝する「考える」会の人たち。右から2人目は松田市議=29日、岡山県玉野市

 政府主導の市町村合併 政府は、現在三千二百ある市町村を千程度にすることを目標に自治体に合併を押しつけてきました。合併特例法で財政面などで「支援」し、片山虎之助総務相は、全市町村長に「合併」催促の手紙まで出しました。

 特例法は二〇〇五年三月末が期限。合併実施まで二年ほどかかるため、片山総務相は「ことしが正念場」とはっぱをかけています。政府・自民党からは、「人口一万人未満の自治体は事務の一部を都道府県などに実施させる」などの案まで出ています。

 市民たちも、黙ってはいませんでした。「玉野市の未来は、市民が決める」とこの七月、玉野市職員労働組合や玉野民主商工会、日本共産党など六団体が「市町村合併を考える会」を結成しました。

 「合併で市民のくらしはどうなるのか」、「考える会」が松田市議ら議員団と共同して調べてみると――。市民税(個人均等割)では玉野の二千五百円にくらべ、岡山が三千円と高いのに、乳幼児医療費無料化(玉野市は五歳未満で岡山市は三歳未満)や下水道普及率(同じく72%と42%)、救急車の現場到着時間(同じく四・四分と六・八分)など、住民サービスでは玉野が進んでいることが分かりました。玉野には、市民が無料で葬式ができる、まれな助成事業もあり、格差は明らか。市の借金も市民一人あたり、岡山は百二万円、玉野は六十五万円です。

 「考える会」は、この実態を市民に知らせるビラをつくり、全戸に配布しました。住民アンケートが連日返ってきて、八百人をこえています。

 「岡山市との合併に反対」が七百十九人(賛成三十三人)で93%にのぼり、「住民投票で決めるべき」に、96%が賛成と答えています。

 一言欄には、「合併したら、市民の負担が増える一方」「いまでも市役所が遠いのに、もっと遠くなる」「山根市長の独断専行で市民を無視した合併は反対」などと、四百人が不安や怒りの声を寄せています。

 市議会小委員会が「合併は時期尚早」との報告を出した背景には、こうした市民の世論があります。同委員会でも「福祉や住民サービスの低下の恐れがある」「岡山市の財政は危機的状況にあり、合併後、玉野市への財政支援策は期待できない」など意見が相次ぎました。「私たちの思いと市民の願いがぴったり一致していることが分かった」というのは、「考える会」の中川章一会長(玉野市職労委員長)。「寄せられた声をまとめて、住民無視の合併推進はやめるよう、市長に申し入れたい」と話しています。

 (岡山県 宮木義治記者)


金のためではなく町民の幸せ考えて

 静岡県の賀茂郡七市町村の合併協議がすすむ中、東伊豆町の片野武町長が合併について町民の意思を問う住民投票条例案を示し、二月に実施する意向を表明しています。片野町長に国、県がおしつける市町村合併についての考えを聞きました。(静岡県・森大介記者)

住民投票実施を表明した

静岡・東伊豆 片野町長に聞く

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 合併というのは、市町村の命運を大きく左右するものですから、やはり住民投票をおこなって民意を問い、その意向を十分に尊重することが基本だと思います。“住民が主人公”ですよ。

 条例案で住民投票の資格者の年齢を十八歳以上としたのは、町づくりの主役になる若い人たちも参画して自治の意識をもってほしいからです。

 私は合併についてはあくまで「白紙」の立場です。国はいま、合併特例法をつくり、全国で三千二百余ある市町村を千にまとめようと奨励しています。なぜか。要するに国にお金がないからですよ。交付税制度がゆきづまり、それに今度は合併特例債というアメをぶら下げているわけです。これは現行の交付税制度の存続が前提となっていますが、私は存続するとは思っていません。国と県をあわせて七百兆円近い国債、地方債があるからこそ国は市町村を十把ひとからげにしようとする。その本質を見ぬかないといけないと思います。

 先日、この町で賀茂郡下の議員研修会があり、賀茂郡の町村会長が“一市六町村の合併ありきだ”とさかんに言い、合併特例債などお金のことばかり話しました。あまりに腹が立ち、開催地の町長である私があいさつする際、予定の原稿はありましたが“金のために合併をやるんじゃない。住民がどうしたら幸せになれるかという観点で議論しないといけない。だからうちは住民投票をやるんだ”とせいせいと言ってやりましたよ。

 「合併しない」という選択肢もある、これは住民が決めることです。うちの町の財政状況は賀茂郡下でずばぬけて良いので、合併すれば町民が他の市町村の負債をかぶることになります。日本共産党の山田直志町議が議会でとりあげましたが、うちの町の交付税は合併してもしなくても四億円くらい減るので、いまのアメに食いついて合併してもばら色になるとは思えません。

 東伊豆町は観光の町です。観光業を主体に農業や漁業などを有機的に結びつければいろんな産業が互いに伸びると思っているんです。その意味では自立できる町だと思っています。住民に夢を掲げてリードするのが政治ではないですか。


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