2002年11月29日(金)「しんぶん赤旗」
いわゆる残業しても賃金を払わないサービス残業の解消や長時間労働の改善をめざして、トヨタ自動車など企業と行政、労働組合が参加した「ゆとり創造大会」が二十八日、愛知県豊田市で開かれました。明確な犯罪行為であるサービス残業への社会的批判に、日本を代表する企業・トヨタが対応せざるをえなくなったことを示すものです。
主催は豊田労働基準監督署とトヨタなど管内の企業で構成する豊田労働基準協会。後援に、連合愛知豊田地域協議会などが名を連ねています。
主催者あいさつで、豊田労基署の古田和憲署長は開催に至る経過を説明し、家族から「お願いです。主人を助けてください」とサービス残業・長時間労働の実態告発が相次いだと紹介。愛知労働局の君嶋護男局長は、相談でもっとも多いのは解雇、賃金不払いだが、豊田管内では労働時間問題だと指摘し、労基法が労働時間を刑罰をもって規制したのは労働者の健康管理が基本にあり、サービス残業は歯止めがきかなくなるとのべました。
豊田労働基準協会会長(池渕浩介トヨタ自動車副会長)の代理としてあいさつした杉浦文夫副会長は、「心身ともに健康で安心して働くことのできる職場づくりに努めること」が、創造力豊かな人材育成や会社発展に寄与することを十分認識しなければならないと強調。
連合愛知豊田地域協議会の岡田剛代表は、「働いた分はしっかりつけ報われたとならないと明るい職場はつくれない」と発言しました。
今後、毎年大会を開催すると確認しています。
同労基署の高木勝己第一課長は地域レベルとりくみとしたと語り、「社会的責任をもつ企業として改善は最優先事項。よい事例になるかどうはこれからにかかっている」と話しています。
「大会」が開催された背景には、異常な長時間労働やサービス残業の横行があります。
トヨタはサービス残業があったとして、名古屋北労基署から労基法三七条違反の是正勧告を受けていたことが昨年、新聞報道で発覚しました。以後、トヨタや関連企業で働く労働者や家族から豊田労基署に相談が急増。「夫の帰りはいつも真夜中。いつ倒れてもおかしくない。助けてほしい」「裁量労働者で残業手当もついていない。夫は過労で死んでしまうのではないかと心配」など、深刻なものが多かったといいます。
こうした事態をうけ、豊田労基署では管内の主要事業場に自主点検をもとめた「労働時間実態調査」を昨年実施。結果は、監督官が「間違いではないか」と目を疑うほどでした。
過労死認定基準である月四十五時間を超える時間外労働をしている労働者がいる事業所は、80・5%(フレックス勤務)に達し、九十時間を超えたのは26・8%に及びます。最多は二百六十六時間、平日も休日も毎日約九時間の残業を一カ月間続けて達する時間です。
年間実労働時間がもっとも多い労働者は、三千六百五十時間。政府の国際公約である千八百時間の二倍以上でした。
例外的に時間外労働を認める労使協定の内容(特別条項含む)は、平均で月八十時間、年六百三十八時間もあり、最大では月百二十時間、年九百六十時間にも。厚労省の限度基準である月四十五時間、年三百六十時間を大幅に超えています。