日本共産党

2002年11月25日(月)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?

サービス残業是正


 労働者にとって腹立たしいことこの上ないサービス残業。ちゃんと割増賃金が払われたらどんなに生活が楽になるか。そんな労働者の願いにこたえ、いま、サービス残業を根絶する大きな流れができつつあります。

根絶に向け流れ

 サービス残業の是正が各地で広がっています。電機や自動車など大企業を中心に、監督行政が本格的な是正に動き出しています

 沖電気、日立、三菱電機、東芝、トヨタといった日本を代表する電機や自動車、建設、銀行など全産業にわたって、割増賃金を支払う企業が続出しています。

 厚生労働省によると、この一年間で全国一万六千五十九の事業所に改善勧告が出されました。東京では一年半で十五億円、大阪では九カ月分で四億一千万円の未払い賃金を支払わせました。

 このような大規模で本格的な是正が始まったきっかけは、昨年四月に厚生労働省が出した通達です。

 通達は、「労働時間の適正な把握のために講ずべき措置に関する基準について」というもので、「使用者に労働時間を管理する責務がある」と明記し、“残業は労働者の自主的なもの”という企業の責任逃れを封じています。そして(1)労働者の始業・終業時間を日々確認し記録する(2)タイムカードやICカードを使って記録する(3)実際の残業時間を申告しても「不利益な取り扱い」がないことを説明する(4)残業時間の「上限」を設定したり、残業手当の「定額制」が申告を阻害している場合は改善する―としています。

背景には何が

 厚労省がサービス残業根絶の「通達」を出し、労基署が企業の監督指導に本格的に動き出した背景に、日本共産党の国会でのねばり強い追及と、職場の党支部の活動がありました

 これまで政府は、サービス残業は違法だと認めながら、原因や手口を追及し、き然と対処することを避けてきました。

 党国会議員団は一九九二年以降、百十八回に及ぶ質問をくり返し行い、政府にき然とした態度をとるよう文字通り総力をあげた追及をしました。九九年七月、当時の小渕首相が「サービス残業はなくしたい」と答弁せざるをえませんでした。

 一昨年四月の衆院予算委員会では、志位和夫書記局長(現委員長)が連合の調査をもとに「一千万人、二千万人という規模でサービス残業がまん延している社会的大問題だ」と追及。森首相(当時)は「一律にサービス残業はすべて悪ではない」と答えて問題となり、「労基法違反」と訂正しました。

 国会での追及とあわせて、全国の大企業職場で日本共産党支部が労働者と協力して、労基署に申告する運動にとりくみました。兵庫県尼崎・伊丹市にある三菱電機では、党委員会が労基署に申告し、労基署が会社に抜き打ちの立ち入り調査を実施しました。七百人に七千万円(最高で九十万円)の未払い残業代が支払われました。

大企業の対応は

 長時間の残業をさせて、労働者にその分の賃金を払わないやり方として、企業の悪質な手口が目立っています

 その実例をみると―。まず大手電機メーカーの場合です。

 その一つに、“ニセ裁量労働制”があります。この間労働基準監督署による是正指導が行われてきました。その多くは、月二十時間程度の手当を支払うかわりに残業代の請求はできないとし、際限のない残業をさせるものです。

 労働時間でなく仕事の成果で評価される企画型裁量労働制は、労基法で対象業務や導入手続きを詳細に定めています。「企画、立案、調査および分析」業務であっても、社長に直轄する部門などの業務に限られ、一般業務に広げることはできません。

 もう一つは、名目上の管理職をいっぱいつくり「管理・監督者」だから残業代はでないといって払わないやり方です。

 ある大企業では、今年に入って“ニセ管理・監督者”を倍増させ、月十数時間分の手当でサービス残業を強要しています。東京のある上場企業では、「管理・監督者」が六割もいましたが、労基署の指導を受けて、「管理・監督者」を二割台に変更し過去の残業代を支払いました。

 残業させてその分の賃金を払わないのは犯罪行為であり、企業のモラルが問われる問題です。

声あげ行動を

 サービス残業は違法です。泣き寝入りせずに積極的に声をあげ、行動すれば改善の道が開かれます

 どうしたらいいのでしょうか。

※サービス残業を記録することです。

 沖電気の設計技術者、菅野基視さんは九月、二年前にさかのぼって九百七十八時間分、約二百五十万円の未払い残業代を払わせました。パソコンに出退勤時間を日々記録していたのが決め手になり、労基署が受理しました。日本共産党三菱伊丹委員会は、労働時間を自分で記録する「残業日誌」運動をよびかけ、改善の力にしています。

※家族の訴えも有効です。

 三菱重工では、夫の帰宅時間を記録していた妻の訴えを労基署がとりあげました。日本共産党の国会での質問に、厚労省は家族の情報提供でも「監督指導を実施する」と答弁し、新日本婦人の会の申し入れにも、労働基準局長は「家族の訴えについては基本的に同じように扱う」と回答しました。

※だれが申告したのかは、秘密が守られます。

 「そうはいっても内部告発したら、会社にもれてしまうのでは」という心配はご無用。労基署は、労働者本人が特定されないようさまざまな情報を入手し、情報源がわからないようにしています。匿名でなく、はっきり名乗って相談することが大切です。労基署が消極的な態度をとる場合があればくり返し要請しましょう。

サービス残業は違法

 働いた時間分の賃金を支払わないのは、労働基準法37条違反です。

 「時間外、休日及び深夜の割増賃金」を規定した37条では、経営者は2割5分以上の割増賃金を支払わなければならないとしています。違反した者は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

サービス残業なくせば90万人の雇用拡大

 サービス残業をなくすことは、失業者を減らすことにもつながります。「サービス残業ゼロの雇用機会効果は90万人」。社会経済生産性本部はこんな試算を発表し(99年)、製造業で27万6千人、非製造業64万7千人で合わせて92万3千人の雇用増になるとしています。

管理職の基準は

 管理職になったから一律に残業代を払わないのは不当で、実態に即した判断が必要です。

 労働基準法の「管理・監督者」(41条2)とは、「一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるもの」(『労働法コンメンタール3』)のこと。経営上重要な事柄について権限を与えられていることが必要です。

 判例には次のようなものがあります。

 銀行本店の調査役補のケース―。欠勤・遅刻・早退は上司に届け出が必要でみずからの労働時間を自由にできず、部下の人事および人事考課には関与せず、経営者と一体となって銀行経営を左右する仕事はしていないので、管理監督者にあたらない(1978年3月28日、静岡地裁)。

 決定権をもつ工場長代理を補佐している者のケース―。みずからが重要事項を決定することはなく、役職手当は支給されても従来の時間外手当より少なく、タイムカードを打刻し、時間外勤務には工場長代理の許可がいるので、管理監督者にあたらない(1983年7月12日、大阪地裁)。

 


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