2002年11月20日(水)「しんぶん赤旗」
たばこの喫煙や受動喫煙による被害を減らすことを目的とした「たばこ規制枠組み条約」(FCTC)。WHO(世界保健機関)が二〇〇三年五月制定を目指しているもので、政府間交渉が大詰めを迎えています。条約の中身や制定に向けた課題を、超党派の国会議員で構成する禁煙推進議員連盟(禁煙議連)副会長の岩佐恵美・参議院議員に聞きました。
禁煙議連(超党派の衆参八十八人が参加)は、この三月に発足したばかりです。世界禁煙デーイベントへの協力や国会の委員会全室での禁煙を申し入れたり、公共の場での禁煙・分煙の推進や未成年の喫煙防止対策強化などを目指しています。国会内では、参議院の一部委員会でまだ会議中に喫煙が許されているのが現状です。
世界の人々をたばこの害から守るうえで大きな課題となっているのが、たばこ規制枠組み条約制定です。
二百種を超える有害化学物質を含むたばこは、がんや心臓・脳血管の病気、早・流産などを引き起こす危険があります。しかも依存性が強いのが特徴です。WHOは「たばこ依存」が国際的に認められた疾病だとして、たばこによる年間死亡数を世界中で三百五十万人、二〇三〇年には一千万人に増えると推計しています。日本では九万人以上、交通事故死の十倍です。
「枠組み条約」は、こうした深刻な健康被害を食い止めるために、世界規模で「たばこ消費と受動喫煙の除去または低減」の戦略的対策をたてるという大きな意義のあるものです。
具体策として「受動喫煙からの保護」「警告表示、広告の規制」「未成年への販売禁止」「たばこ増税・値上げ」などを提案しています。(別項)
条約の制定は、特に先進国の中で突出して高い喫煙率が続く日本にとって不可欠です。
日本には、たばこをイメージアップし喫煙を促す広告があふれています。街角にも鉄道の駅や車内、雑誌などにも、たばこの看板、ポスター、広告だらけです。市民運動によって、テレビでのたばこCMは中止されていますが、「マナー広告」という形で残っています。「未成年には売らない、宣伝しない」とされていても、自動販売機ではだれでも購入できます。駅や街角の広告は、子どもたちには見えないとでもいうのでしょうか。
一方で「有害性」についての情報発信はまったくといっていいほどされていません。世界の多くの国が、たばこの広告や自動販売機を禁止し、たばこパッケージには「ニコチンは薬物の一種で依存性を持つ」「喫煙は人を殺す」「妊娠中の喫煙は胎児に有害」などと警告表示をしているのとは大違いです。
日本政府はこの間、「たばこはおとなのし好品」「消費削減を目標にしない」などという立場から、自動販売機規制や広告規制、「マイルド」など被害が少ないと誤解されるパッケージの禁止などについて「規制緩和」を要求。“先進国でたばこ対策に最も消極的な国”と批判を受けています。
根本には、JTの利益のために国民の命や子どもの未来を犠牲にすることをかえりみない、「売らんかな」の営業姿勢があります。国内では広告を禁止されながら、日本では平然と大宣伝するアメリカのたばこ会社も同じです。
喫煙を減らすには、「条約」にある総合的な対策が必要です。日本の政府・与党内にある「増税・値上げ」だけのつまみぐいでは、問題の解決にはなりません。
条約制定にむけた最後の政府間交渉が来年二月に開催されます。日本が積極的に国際的役割を果たすために、みなさんと力を合わせて私もがんばります。
▼高価格政策の実施、免税売りの廃止
▼公共の場などで国の責任で受動喫煙から保護
▼「マイルド」「ライト」「低タール」など害が少ないという印象を与える用語の使用禁止。健康被害の結果を文章・図画などで表示。含有物・有害物の明記
▼教育プログラムの開発と実施など
▼広告、販売促進、スポンサーシップの廃止など
▼依存症への適切な治療
▼未成年者への販売禁止、自動販売機の廃止など
▼たばこ農家・製造業への補助金の段階的廃止、転業支援