2002年11月20日(水)「しんぶん赤旗」
政府税制調査会が十九日に二〇〇三年度の税制「改正」についての答申をまとめました。小泉流「税制改革」論議がいよいよ本格化します。小泉内閣のねらいは国民と中小企業に大増税を押しつけ、大企業を優遇する大改悪です。この暴走を許さない運動がますます大切になっています。(石井光次郎記者)
政府税調の答申は、個人所得税について、配偶者特別控除の原則廃止を打ち出しました。この控除は専業主婦控除ともよばれ、配偶者が専業主婦の勤労者やパートタイムで働く主婦に配慮した控除です。通常の配偶者控除に三十八万円が加算されます。全廃されれば、税率10%とすれば、三万八千円の増税です。
政府税調は政府の経済失政による所得減や大金持ち減税による税収減を棚に上げ、所得税の「空洞化」は働く人の四人に一人が税金を払っていないためなどと低所得層を攻撃。最低生活費には課税しないという原則を破ってでも徴税を強める構えです。
今回の原則廃止方針は、政府がねらう各種控除の「簡素化」「集約化」の第一歩で、納税者には大増税、税金を払わなくても良かった低所得層からも新たに徴税しようというものです。
政府税調は、きびしい不況の中で必死に営業を続け、地域経済と雇用を守っている中小企業にも大増税の矛先を向けています。都道府県税の法人事業税への外形標準課税の導入です。
給料や建物賃貸料、資本金などを基準に、所得(もうけ)があろうがなかろうが税金をかけるのが外形標準課税です。税金を払う能力に応じて課税する応能課税の原則を踏みにじる悪税です。
これが実施されれば、赤字で所得がないために、税金を払わなくてもよい中小企業にも容赦なく税金がかかります。不況と銀行の貸しはがしなどで経営が苦しい中小企業には大打撃です。日本商工会議所、全国商工会連合会など四団体が断固反対しています。
答申は、庶民の間に定着した発泡酒の税率をビールと同じ水準に引き上げるなど、酒類の税率「格差」の是正とたばこ税の引き上げ検討を主張しています。石会長は、「同種・同等のものには同様の負担がいい」とのべ、格差「是正」は税率の高いビールにあわせるのが当然という立場です。それぞれに反対運動があることについて、「愛飲者にたずねれば当然みんな反対」と耳を貸しません。
消費税の税率を将来引き上げるのは、税調の基本方針です。税率引き上げに理解を得るために、税の「信頼性」を高めるとして、中小、零細事業者の特例措置を廃止、縮小する方向です。
特例措置は、中小事業者の納税事務負担に配慮して導入されたもので、消費税の免税点(現行三千万円)と事務を簡素化する事業者簡易課税制度です。「信頼性」をいうなら、所得の低い人ほど負担の重い消費税そのものが問題です。
消費税の税率引き上げについて、石会長は、早ければ〇四年度の年金制度改定に関連して議論が出るとしてきました。内閣改造で再任された坂口力厚生労働相が「消費税の引き上げをお願いする」と発言したのは、まさに予定通り。日本経団連は最高28%までの税率引き上げが必要と主張しています。
小泉内閣は景気対策として「先行減税」を打ち出しています。これは、先行して大企業と大金持ちに減税し、あとで国民には大増税して、帳尻をあわせようということです。
答申が「先行減税」として打ち出したのは、企業の研究開発減税とIT(情報技術)などの先端分野に絞った設備投資減税です。
現行の研究開発減税は、研究開発費が過去に比べて増額した場合に限って法人税額からの控除を認めています。これを研究開発費総額の一定割合を法人税額から控除できるようにします。
投資減税は、投資額の一定割合の税額控除か、減価償却額を割り増す特別償却を選択することになります。
これらは財界が要求していた米国並みの水準に近づける「第一歩」。法人税率引き下げのほか、不良債権処理を「加速」するための、金融機関にたいする欠損金(赤字)の繰り戻し還付など露骨な銀行優遇税制も控えています。
大企業をいくら優遇しても、国民や中小企業に大増税を押しつけるのでは、景気はよくなりません。こういう逆立ちした改悪はきっぱりやめさせるしかありません。