2002年11月15日(金)「しんぶん赤旗」
米国の企業買収ファンドが買収した新生銀行が国内向け融資を大幅に減らしています。この事実を指摘した日本共産党の佐々木憲昭衆院議員(十三日の衆院財務金融委員会)に、竹中平蔵金融・経済財政担当相が「(新生銀行は)新しいビジネスモデルを模索し移行している途上である」と同行の融資減を弁護しました。その新生銀行の戦略から浮かび上がる銀行像は…。
図を見てください。
二〇〇〇年三月期に約七兆五千億円近くあった新生銀行の国内向け融資残高は、二年間で約四兆八千億円にまで激減。中小企業向け融資も減っています。同行の計画では二〇〇三年三月までにさらに減らす予定です。
融資が減る一方で、増えているのが非金利収益(融資以外のもうけ)です。〇一年三月期から一年間に倍増しています。
新生銀行は、二〇〇〇年に発表した「ビジネスモデル」で「先進的な金融サービス・商品を提供する投資銀行」業務の強化を打ち出しました。三年間で銀行の中心業務である貸し出しによるもうけ(金利収益)と、投資銀行業務などの非金利収益の割合を、二対一にする計画でした。実際には「二年目で達成」(八城政基社長)してしまいました。
新生銀行が重視する「先進的な金融サービス・商品」というのは、企業の合併・買収(M&A)などを仲介して手数料をとったり、証券や金融派生商品(デリバティブ)など元本割れの危険がある金融商品を客に売ることです。
これにたいして、貸出方針は、「リスクとリターンのバランスのとれた収益性の高い貸出業務」です。これは、金利の見直し=引き上げをおこない、それができなければ融資しない、回収することです。この方針では、国内融資が減り続けるわけです。
竹中金融担当相が弁護する「新しいビジネスモデル」の基本戦略は、もうからない融資は減らして、危険な金融商品を国民に売りつけるのが基本です。
金融庁がこの方向をめざすかぎり、不良債権を処理すれば融資が増えるというのはまったくの空論です。(石井光次郎記者)
新生銀行 国が乱脈経営で破たんした旧日本長期信用銀行を七兆円を超す公的資金の投入で不良債権をきれいにし、二〇〇〇年に米国の企業買収ファンド・リップルウッド社などにわずか十億円で売り渡した銀行。
投入した公的資金のうち三兆七千億円は回収できない税金です。
自主的に決めた中小企業への融資目標を達成できず(二〇〇一年三月期)、同年十月に金融庁から業務改善命令を受けました。