2002年11月10日(日)「しんぶん赤旗」
八日、国連安保理が全会一致で採択したイラク問題にかんする決議一四四一の全文は以下の通りです。
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安全保障理事会は、
すべての関連する安保理決議、とくに一九九〇年八月六日の六六一決議、同十一月二十九日の六七八決議、一九九一年三月二日の六八六決議、同四月三日の六八七決議、同八月十五日の七〇七決議、同十月十一日の七一五決議、一九九五年四月十四日の九八六決議、一九九九年十二月十七日の一二八四決議およびすべての安保理議長の声明を想起し、
二〇〇一年十一月二十九日の一三八二決議や同決議を完全実施しようとする意思をも想起し、
イラクの安保理決議の不履行、および、大量破壊兵器や長距離ミサイルの拡散は国際の平和と安全に対する脅威であると認め、
六七八決議は、一九九〇年八月二日の六六〇決議やそれ以降のすべての関連する決議を支持、実行し、その地域に国際の平和と安全を回復するため、国連加盟国にあらゆる手段を行使する権限を与えたことを想起し、
さらに、六八七決議がその地域の国際的な平和と安全を回復させるため決議に規定されていることを成し遂げる上で必要な措置の義務をイラクに課したことを想起し、
イラクが、大量破壊兵器、百五十キロを超える射程距離の弾道ミサイルの開発や計画のあらゆる側面について、またそのような兵器の所持や、さらに、それらの製造施設や場所、同様にすべての核兵器計画について、加えて核兵器に利用しうる部品でイラクが関連を否定したものを含め六八七決議が要求したように正確で、全面的、最終的で完全な情報開示をしてこなかったことを遺憾とし、
イラクが国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)や国際原子力機関(IAEA)による無条件、無制限の立ち入りに繰り返し支障をきたせたこと、六八七決議が要求したUNSCOMとIAEAの査察官に完全かつ無条件に協力することをしなかったこと、一九九八年以降UNSCOMとIAEAへのすべての協力を全面停止してしまったことはさらに遺憾であり、
一九九八年十二月以来、関連する決議が求めた、大量破壊兵器や弾道ミサイルのイラクにおける国際的な監視、査察、検証が行われていないことを遺憾とし、安保理は、UNSCOMの後継として一二八四決議によって設立された国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)とIAEAの即時、無条件、無制限の立ち入りを何度も求めてきたにもかかわらず、地域の危機とイラク国民の苦しみが長引いていることを残念に思い、
イラク政府が、六八七決議のテロに関する規定と、六八八決議にもとづく民間人への弾圧の停止や国際人道団体にイラク国内の援助を必要とする人々と接触させること、六八六、六八七、一二八四決議に従ってイラクが不当に拘束したクウェートや第三国の国民の帰還または調査協力を行うことを怠り、イラクによって不当に押収されたクウェートの財産の返還をしなかったことを遺憾とし、
六八七決議で、安保理は決議に含まれたイラクの義務を含めたイラクによる同決議の規定の受け入れが停戦の基盤であったことを宣言したことを想起し、
六八七決議と関連決議の定めるイラクの義務について無条件、無制限にイラクが全面的かつ即時に順守することを確保することを決意し、安保理諸決議がイラクの順守状況を判断する基準を定めていることを想起し、
決議六八七号(一九九一年)と関連諸決議の履行には、UNSCOMの後継のUNMOVICとIAEAの効果的な活動が欠かせないことを想起し、
イラク外相の国連事務総長あての二〇〇二年九月十六日付の書簡は、国連安保理の関連諸決議の不順守を続けてきたイラクの姿勢を修正する必要な第一歩であることに留意し、
UNMOVIC委員長とIAEA事務局長が、イラク政府のアルサーディ将軍とのウィーンでの会談を受け、同将軍あてに二〇〇二年十月八日付で送った書簡は、UNMOVICとIAEAが査察再開の前提条件となる実際的な手はずを示した。イラク政府がこの書簡で提示された段取りを引き続き確認していないことに重大な懸念を表明し、
国連全加盟国がイラク、クウェート、隣国諸国の主権と領土保全に関与することを再確認し、
この点に関して、国連事務総長、アラブ連盟加盟国、アラブ連盟事務局長の努力を称賛し、
この決定の順守を保障することを決意し、
国連憲章第七章にのっとって行動し、
1、イラクは、決議六八七(一九九一年)を含む関連決議に基づく義務の重大な違反をしてきたし、していると判定する。それはとりわけ、イラクが国連査察官と国際原子力機関(IAEA)と協力せず、決議六八七(一九九一年)の八項から一三項によって求められている行動を完遂してこなかったことによるものである。
2、第一項で示した点を認めながらも、この決議によって、イラクに関連安保理決議の下での軍備解体義務を実行させる最後の機会とすることを決定する。従って、決議六八七(一九九一年)とこれに続く安保理決議によって規定された軍備解体プロセスを完全かつ検証された形で完了させることを目的とする強化された査察体制を創設することを決定する。
3、軍備解体義務の履行を開始するために、年二回求められる申告の提出に加えて、イラク政府が国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)、国際原子力機関(IAEA)と安全保障理事会に対し、本決議の日付から三十日以内に、化学・生物・核兵器、弾道ミサイル、および、無人航空機や機上で使用するための散布システムなどその他の運搬システムの開発計画のすべての面について、こうした兵器、構成部品、付属品の保有および正確な位置、化学薬品および関連物資と装置の在庫、その研究、開発、製造施設の場所と活動内容、ならびに、イラクが兵器生産ないし兵器用物資に関連した目的は持っていないと主張する化学・生物・核計画を含めて、現時点で正確かつ全面的で、完全な申告を提出することを決定する。
4、本決議の実施に伴ってイラクが提出した申告における虚偽や脱落、および、イラクによるいかなる時点での本決議の順守不履行や、本決議の全面実施への非協力は、イラクの義務に対するさらなる重大な違反を構成するものであり、以下の第一一項および一二項に沿った評価のため、安保理に報告するものと決定する。
5、イラクが、UNMOVICとIAEAに対し、両機関が査察を希望するあらゆる地下、地域、施設、建物、装備、記録、輸送手段への即時・無妨害・無条件・無制限の立ち入り・入手を認めること、ならびに、UNMOVICまたはIAEAが、その任務の諸側面に従って選択するやり方もしくは場所で面接を希望するすべての公務員その他の人物への即時・無妨害・無制限の、かつ個人的な接触を認めることを決定する。さらにUNMOVICおよびIAEAはイラク国内および国外で自己裁量で面接をおこない、イラクの国外で面接した人およびその家族の旅行を円滑にすることができ、UNMOVICとIAEAの単独の裁量の下で、こうした面接がイラク政府の立ち会いなしで行うことができると決定する。さらに、本決議の採択から四十五日以内に査察を再開し、その六十日後に安全保障理事会に最新情報を伝えることを、UNMOVICに対し指示し、IAEAに対して要請する。
6、添付のUNMOVIC委員長およびIAEA事務局長からイラク政府のアルサーディ将軍にあてた二〇〇二年十月八日の書簡を承認するとともに、同書簡がイラクに対し拘束力を持つことを決定する。
7、さらに、UNMOVICおよびIAEAの現地入りがイラクによって長く妨害されたことを踏まえ、また、この両機関が本決議およびこれまでの関連諸決議のすべてで定められた職務を完遂するために、以前の了解事項にかかわらず、安全保障理事会はここに、以下の改定もしくは追加の権限を確定し、イラクでの両機関の活動を促進するためにイラクに対し拘束力を持つことを決定する。
――UNMOVICおよびIAEAはその査察チームの構成を決定し、これらのチームが最も有能で経験に富んだ専門家で構成されることを確実にする。
――すべてのUNMOVICおよびIAEAの要員は、その専門家要員の使命に応じて、「国際連合の特権および免除に関する条約」、および「IAEAの特権および免除に関する協定」に規定された特権および免除を享受する。
――UNMOVICおよびIAEAは、イラクに出入国する無制限の権利、査察場所への、および査察場所からの自由・無制限・即時の移動の権利、あらゆる場所と建物を査察する権利を持つ。これには、決議一一五四(一九九八年)の規定にかかわらず、他の場所と同等に大統領施設に即時・無妨害・無条件・無制限に立ち入ることが含まれる。
――UNMOVICおよびIAEAは、イラクの化学、生物、核および弾道ミサイル計画と、それに関連する研究・開発・製造施設と現在および以前に関係のあるすべての要員の氏名をイラクから提供される権利を持つ。
――UNMOVICおよびIAEAの施設の安全は、十分な国連保安要員によって確保される。
――UNMOVICおよびIAEAは、査察場所を凍結する目的で、周辺地域や通行回廊を含めて立ち入り禁止区域を宣言する権利を持つ。査察場所を保全し、そこから一切のものを持ち出させないようにするため、立ち入り禁止区域において、イラクは地上および空中の移動を中止する。
――UNMOVICおよびIAEAは、有人・無人偵察機を含め、固定翼および回転翼の飛行機の自由で無制限の使用ならびに着陸の権利を持つ。
――UNMOVICおよびIAEAは、自己の裁量で、すべての禁止された兵器、その構成部分、部品、記録、物資、その他の関連品目を、立証できる形で除去、破壊、無害化する権利、ならびに、これらの生産のための施設または装備を押収ないし閉鎖する権利を持つ。
――UNMOVICおよびIAEAは、UNMOVICやIAEAの要員、あるいはその公的または私的な荷物の検査を受けることなく、査察のための装備・物資の自由な持ちこみと使用の権利を持ち、査察の間に得られたいかなる装備・物資・文書も押収し国外に持ち出す権利を持つ。
8、さらに、イラクが、国連またはIAEAのいかなる代表もしくは要員、あるいは、いずれかの安保理決議を支持して行動しているいずれかの加盟国のいかなる代表もしくは要員に対しても、敵対行為を行ったり、行うと脅したりしてはならないと決定する。
9、事務総長に対して、イラクにとって義務的である本決議を直ちにイラクに通知することを要請する。また、その通知後七日以内に、イラクが本決議を完全に順守する意思を確認するよう要求する。さらに、イラクが即時・無条件・積極的にUNMOVICおよびIAEAと協力するよう要求する。
10、すべての加盟国に対し、UNMOVICおよびIAEAの任務遂行に全面的な支持を与えるよう要請する。それには、禁止品目を獲得しようとする一九九八年以降のイラクの試みを含め、禁じられた計画あるいは他の側面の両機関の任務に関連した情報を提供することや、査察すべき場所や面会すべき人物、そうした面会の条件や収集すべきデータが含まれる。その結果はUNMOVICおよびIAEAによって安全保障理事会に報告される。
11、UNMOVIC委員長およびIAEA事務局長に対し、査察活動に対するイラクのあらゆる妨害、ならびに、本決議の下での査察についての義務を含め、軍備解除義務の順守に対するイラクのいかなる不履行についても、直ちに安全保障理事会に報告するよう指示する。
12、国際の平和と安全を確保するため、状況ならびにすべての関連安保理決議の全面順守の必要性について検討するため、上記第四項あるいは第一一項に基づく報告の受領に際しては、直ちに会合を開くことを決定する。
13、これに関連し、安全保障理事会がイラクに対し、義務違反が続けば同国は重大な結果に直面するであろうと、再三警告してきたことを想起する。
14、問題に引き続き関わることを決定する。