2002年11月8日(金)「しんぶん赤旗」
コンピューターメーカーの日本IBMの労働者でつくるJMIU(全日本金属情報機器労働組合)アイビーエム支部が会社を相手どり、「十分な協議をつくすまで、労働契約の承継(移籍)をしない」よう申し立てていた問題で、神奈川県地方労働委員会は七日、会社に対し「具体的な資料を提示するなど誠意をもって話し合いを行う」よう勧告を出しました。
親会社の米IBM社と日立製作所は四月、ハードディスク部門の合弁事業に合意し日立70%、IBM30%出資の合弁会社を年内に設立、その後、日立の100%子会社に移すとしています。
合意を受けて、日本IBMは藤沢事業所(神奈川県)のハードディスク部門を分割して新会社を設立し、約八百人全員を労働契約承継法で移籍させ、翌日には日立とIBMの合弁会社に株式を譲渡するというものです。
JMIU支部は、日立系列への合流によって労働条件の維持が確約されないとして、(1)新会社の事業計画や労働条件について誠意をもって団体交渉に応じる(2)労働組合と協議をつくすまで「承継法」に基づく労働契約の承継をしないよう勧告する―を求めていました。
JMIU支部の比嘉恒雄委員長は「日本IBMが賃下げや労働条件が引き下げられるのではという労働者の不安にまったく答えないなか、勧告が『会社分割後の労働条件やその見通しについて話し合う』よう求めていることは画期的です。勧告を力に、会社を追及していく」と話しています。
日本IBM(本社・東京都港区、大歳卓麻社長)が神奈川県藤沢、滋賀県野洲の両事業所のハードディスク部門を分割して労働者を日立系列会社に移籍させようとしていることについて、JMIU日本アイビーエム支部は七日、労働契約上の地位確認を求めて、横浜地裁に仮処分を申し立てました。「会社分割法と労働契約承継法にからむおそらく初めての争い」(組合側)といいます。
申し立ての理由は、IBMと日立のハードディスク事業の世界的な統合に伴い、会社は(1)十一月中に会社分割制度に基づき新会社に移籍する(2)来年の早い時期に日立のハードディスク事業部門が吸収される(3)日本IBMの労働者は労働契約承継法に基づき現在と同等の労働条件で新会社に移籍する―という経営計画を組合と十分な事前協議もなく一方的に発表したというもの。その後も、日本IBM側は移籍に関するスケジュールを一方的に発表し、誠意をもって団体交渉に応じず、日立側もJMIUや支部の交渉申し入れ自体を拒否した、とのべています。
今回のやり方は、会社分割に伴う労働契約承継の効力を生じえないことや、労働条件の不利益変更を禁止した法に違反する詐欺的な方法で実施しようとしていると批判。近い将来労働条件が大幅に切り下げられ、重大な不利益をこうむることは明白で、新会社への労働契約承継の効力を事前に停止しておく必要があるとしています。