2002年11月8日(金)「しんぶん赤旗」
五日投票の米中間選挙は「中間選挙は与党が負ける」とのジンクスを破り、共和党が上下両院で多数を制し「歴史的勝利」を叫ぶ結果となりました。これを機にブッシュ政権は、いっそう強気の内外政策を展開すると予想されますが、「圧勝」の基盤は見かけほど強固ではありません。
今回の選挙での共和党「圧勝」は野党・民主党の「選挙運動の失敗によるところが大きい」(CBSテレビ)との見方が出ています。
八月上旬までの米国では、相次ぐ大企業スキャンダルが大問題となり、対テロ戦争を前面に押し出してきた共和党の選挙戦術が通用しなくなる局面が生まれていました。露骨な大企業奉仕の姿勢をとる同党には危機的な状況でした。
しかし同党は八月下旬以降、対イラク先制攻撃の必要性を真正面に掲げました。ブッシュ大統領が先頭に立ち、改めて戦争熱をあおりました。公務と選挙運動を一体化し、多数の報道陣を引き連れ、なりふり構わぬ選挙戦を展開しました。
ところが民主党指導部は、大企業スキャンダルも対イラク戦争も争点にしないとの驚くべき姿勢で臨みました。戦争問題では政府を支持して「非愛国者」攻撃をかわし、個々の経済問題を争点にすることで自党に有利な選挙にするとの、へっぴり腰路線でした。「売り物」とする経済政策でも、与党への明確な対案は提示しませんでした。
対イラク戦争に反対する多くの国民は、地元選出議員らに反戦の立場に立つよう働きかけました。この結果、十月上旬の対イラク戦争に関する議会決議では、民主党下院議員の61%が指導部に反旗を翻して反対票を投じ、戦争問題で党は分裂してしまいました。
選挙前の世論調査でも、国政の最優先課題が経済・雇用問題だとする声は、戦争が最優先だとする声と互角になりました。しかし民主党は、この国民の声に応えた攻勢的な選挙を展開できませんでした。
二〇〇〇年の大統領選での敗北以降、同党は指導者を欠き、二年後の大統領選の有力候補者も確定しない状況です。今回の敗北を受け、党内の混乱の拡大は必至です。
このもとで、得票総数は知事選の場合で共和党53%に対し民主党47%となり、両党ほぼ同数だった二年前の大統領選と比べ若干の差が出ました。とはいえ総体としては、「国がほぼ完全に二分され、どちらの党も強力な与党を構成できない」(ワシントン・ポスト紙)拮抗(きっこう)状態に基本的変化はありません。
とはいえ、ブッシュ政権が選挙「圧勝」を大宣伝し、内外政策でさらに強気に出ることは疑いありません。内政面では、金持ち減税の恒久化などを目指すと予想されています。対外政策では、対イラク攻撃実施への国民の信任を得たとの主張を強めるでしょう。
しかし、今回の選挙も投票率は低迷し、わずか37%との推測も出ています。二年前の大統領選を三割も下回る数字です。
今回の選挙結果がブッシュ政権を軍事冒険に駆り立てる危険性を警戒する声が中東や欧州などで広がっています。(坂口 明記者)