日本共産党

2002年11月8日(金)「しんぶん赤旗」

主張

雇用保険料

政府が安全網切り裂くのか


 十月に引き上げたばかりの雇用保険料(労使折半)を、また来年六月から0・2%引き上げ、月収の1・6%にしようとしています。

 保険料の引き上げは三年連続で、二年間に二倍もアップするとは、なんと冷たい政治でしょうか。

見通しを誤った責任

 厚生労働省が、失業者の増加で保険財政が危機にあるからというのは、二重、三重に無責任な主張です。

 完全失業者が、九七年の二百三十万人から今年九月に三百六十五万人に激増したのは、「構造改革」を推進してきた自民党政権の責任です。

 失業者が増加している時、見通しを誤り国庫負担を引き下げた失政も重大です。失業給付総額の四分の一は国庫負担ですが、九二年度から負担率を引き下げ、失業率が4%台にはね上がった九八年度には本来の負担の56%まで減らしました。これがピーク時は四兆七千五百億円もあった積立金を食いつぶした原因です。

 しかも、「失業者増加が財政危機を招いた」という主張にはごまかしがあります。失業給付を削減して、失業者が激増しても、受給者は抑制され、給付総額は九八年度の二兆三千二百五十七億円から年々低下し、今年度予算では九九年より六千億円も削減されているからです。

 一般紙が「『失政のツケ』国民に痛み」(「読売」六日付)、「財政危機を招いた厚労省の甘い予測」(「毎日」同)と指摘しているのも当然です。

 許しがたいのは、再び失業給付の削減を打ち出していることです。

 自己都合退職などの場合、昨年四月から最大三百日の給付が百八十日に削減されたばかりです。それをさらに三十日間短縮するといいます。

 給付率の下限は離職前賃金の六割(六十歳未満)から五割に下げ、手当日額の上限も下げられます。

 いまでも失業手当の受給者は、失業者の二割にすぎないのに、さらに痛みを強いることになります。

 高失業で「セーフティーネット(安全網)」の拡充が必要な時、これではまったくの逆立ち政治です。

 雇用保険の改悪で、国民は年間約三千億円の負担増になり、失業給付は〇四年度で約五千五百億円の削減になります。

 失業悪化、賃下げでこんなに労働者が苦しめられている時に、合計八千五百億円もの負担増と給付削減を強いることは到底認められません。

 重視すべきは、負担増が経済悪化に拍車をかけることです。国民負担は、雇用保険をはじめ、医療保険の改悪、介護保険料の引き上げ、物価下落に連動した年金引き下げなどで、三兆円以上にのぼります。

 だからこそ「景気の影響を吟味しないまま負担増に踏み切ると『負担増↓消費悪化↓失業増↓雇用保険財政悪化』という縮小均衡を助長する恐れがある」(「日経」六日付)との警鐘が鳴らされているのです。

 国民の所得が低下している時、負担増の及ぼす悪影響を検討もせずに押し付けるのは無責任の極みです。

失業者の生活安定を

 失業者の生活と雇用の安定を図ることは政府の責任です。雇用保険法は、財政悪化の際は国庫負担を三分の一にできると定めており、いま国庫負担を引き上げるべきです。

 リストラで大量の失業者をつくった大企業からは、特別保険料を徴収することも検討することです。

 雇用保険財政の立て直しの上でも、失業者を増やす不良債権処理の加速やリストラ支援をやめ、雇用の拡大に本腰をいれるべきです。

 


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