2002年11月3日(日)「しんぶん赤旗」
|
赤旗まつり中央舞台の最初の政治プログラムは、日本共産党の緒方靖夫・党国際局長・参院議員と森原公敏・党国際局次長による「イラク・中東諸国 日本共産党訪問団帰国緊急報告」。十月二十八日に帰国したばかりの両氏が、米国によるイラク侵略の危険が高まるなかで、イラク問題の平和的解決をめざす日本共産党の野党外交の成果と、直接目にした現地の情勢などを縦横に語りました。司会は訪問団に同行した小泉大介「しんぶん赤旗」外信部記者がつとめました。
|
訪問団派遣のきっかけは、十月十五日のイラク大統領信任投票の機会に、同国政府が日本の全政党に招待状を送ってきたことでした。他党がこれに応じなかった半面、日本共産党はイラク政府にはっきりものを言い現地の実情をつかみ問題の平和解決をめざすために、訪問団を派遣しました。訪問先は、イラク、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦の六カ国とアラブ連盟(本部=カイロ)とイスラム諸国会議機構(OIC、本部=ジッダ)。五日に出発し、二十四日間に及ぶ歴訪でした。
緒方氏は、イラク政権で序列四番目とされるハマディ国民議会(国会)議長に対し、「問題の発端は、一九九〇年にイラクがクウェートを侵略・併合したことである」と指摘し、「大量破壊兵器の廃棄とこれを確認する査察の受け入れを求める国連決議を、イラクがすべて全面的に履行することが大事だ」と指摘。「これまでイラクは真実を隠し、国際世論をあざむく行為を重ねてきた。これが国際社会が不信を持つ原因だ」と正面から指摘し、「アメリカに戦争の口実を与えることを一切すべきでない」と述べ、これに対しハマディ議長が「そのようにする。イラク政府は国連決議をすべて受け入れ、全面的に誠実に国連に協力する」と明言したことを紹介。会場は大きな拍手に包まれました。
また、周辺国政府との会談では、(1)絶対に戦争をしてはならない、クウェート侵略当時のようなイラクの脅威は、現在は存在しないというのが周辺国の思いである(2)外部から軍事力で主権国家の元首を打倒することは絶対に認められない(3)イラクはすべての国連決議を履行しなければならない(4)イラクに対する戦争をすれば、米国さえもどうなるか予想がつかない、米国と同盟関係国が多い中東はたいへんなことになる、米国はこれを理解できないで戦争を準備している―という声で一致したと強調。「こうした声に共感し、感動した」と振りかえりました。
|
森原氏は、訪問した国の多くが米国との関係が国の存亡にかかわるという共通点を持ち、サウジアラビアやカタールには米軍基地が存在するのに、一致して戦争に反対していることは、戦争が周辺国に与える打撃が計り知れないからだと指摘。アラブ連盟のバドル事務局長首席補佐官が、「イラクに対する戦争は地獄の門を開けることになる」と表現したことを例にあげました。
森原氏は、相手が政府や議会でも、率直に見解をぶつけ意見を交換する日本共産党の野党外交を通じて、「訪問した六カ国と二機関と思いが一致し、本当に新しい経験をした」と語りました。
今回の中東歴訪を通じた野党外交の意義について、緒方氏は、「イラク問題で平和解決一本にしぼり、その点で太い一致を見た」と強調。特に、「サウジアラビアのようにイスラムの戒律が厳しく、一般旅券では入国できない国の政府とも友好関係を深めたことは画期的だ」と述べました。
森原氏は、各国が日本に大きな期待を持ち、中東の平和のために日本政府が努力することを望んでいると感じたと指摘し、「その日本の共産党が平和のために努力していることが高く評価された」と語りました。
両氏は、最初の訪問国であるヨルダンのアンマン空港に預けた荷物が到着せず、あわててスーツを買い求め、だぶだぶの背広姿で政府高官との会談にのぞんだことなど、こぼれ話も紹介。会場は笑いが絶えませんでした。
対談を聞いた埼玉県の大学生、赤石悟さん(22)は、「野党にできることは、たかが知れていると思っていましたが、こんなに現地の政府に歓迎されたとは驚きました。日本政府の努力が全然足りない証拠ですね。日本共産党はこれからも外交努力を続けてほしい」、と期待を語りました。